第11話
第十三ゲーム、かくれんぼ。結月は洋館のリビングで目を覚ました。
「起きたか、結月」
「おはよ、零さん」
「おはよーございます、結月さん」
「朱莉も、おはよう」
「知り合いか?」
零に問いかけられ結月は起き上がりながら頷く。
「うん。最近ここに来た子」
「朱莉です。ゲーム参加はこれで三回目。よろしくお願いします」
物怖じせず朱莉は零に握手を求めた。零もその手を取る。
「ハンドルネーム、零。ゲーム参加はこれが六十六回目だ」
「うわ、すご! ベテランさんですねー」
ゲーム参加時にプレイヤーが集められている場合、簡単な自己紹介で始まることが多い。二人の後に続き、結月も他プレイヤーと向き合った。
「ハンドルネーム、結月。ゲームはこれが十三回目。よろしく」
「雷です。参加は今回で二回目。お願いします」
結月が視線を向けるとダウナーな雰囲気の少年がヘッドホンを首にかけソファで膝を抱えている。フードを被っているせいで顔まではよく見えないが恐らく結月より年下だ。
「桔梗です。初めてなので色々教えてください」
「海月、です。私も、初めてで……」
続いて二人の少女がそれぞれ名乗る。今回のゲーム参加者は全部で六名。自己紹介が終わったタイミングで零がテーブルに置かれていた黒い封筒を手に取った。
「それ、何?」
「今回のゲームルールがまとめられているな」
零は結月に一枚の紙を手渡す。結月は零に代わってそれを読み上げた。
「一つ……これはかくれんぼです。一時間後に一部屋一名ずつ隠れてください。一部屋に二名以上が隠れることはできません」
「となると、固まって動くことはできんな」
結月が周囲を見渡すと六個の扉に一から六まで数字が割り振られている。どの部屋に隠れるかを一時間で決めなくてはならないようだ。
「二つ……全員が部屋に入った三分後に『亡霊』が皆様を探しに行きます。『亡霊』に見つかると五感を味覚、嗅覚、視覚、触覚、聴覚の順に奪われすべてを奪われるとゲームオーバーです」
「五感を徐々に奪われるゲームですか……見つかったら即死、というわけではないんですね」
「三つ……『亡霊』は合計二十四回、一時間ごとに現れます」
「つまりゲーム終了まで残り二十五時間か」
「四つ……ご自身の五感を犠牲にすることで他プレイヤーの五感を取り戻すことができます」
簡単に言えば聴覚以外のすべての五感を奪われ、後がないプレイヤーに五感がそろっている安全圏のプレイヤーが自分の感覚を譲れるということ。とはいえ生き馬の目を抜くこの業界でそんな親切な人間がいるとは限らないが。
「五つ……『亡霊』が奪える感覚は一ゲーム一つだけです。これだけだね」
いろいろと気になることはあるがとりあえずゲームを進めなくてはならない。結月は零に目配せした。
「一ゲーム目は捨てて様子を見る。この状態で戦略を練っても無意味だろう。ルール通りなら五ゲーム目まで死人は出ない。ひとまず誰がどの部屋に入るか決めるぞ」
「……」
零に異論を唱える者はいない。事実、わからないことだらけなのだ。今はまだ、長考の局面ではない。
「俺はどこの部屋でもいい。希望がある奴はいるか?」
「……」
やはり誰も何も言わない。零は紙とペンで簡単なくじを作り番号を隠して差し出した。
「一斉に引く。一枚選べ」
全員がくじに手をかける。最後に余った一枚を零が取り、皆が番号を確認した。
「あ、私一番です」
「私三番」
結果は朱莉、桔梗、結月、海月、雷、零の順となりそれぞれの部屋の前に立つ。
「結月さん、ご武運を」
「朱莉もね」
ベテランの零に言葉は必要ないだろう。六人は一斉に扉を開け室内へ足を踏み入れた。




