第10話
「第十二ゲームクリア、おめでとうございます」
「うん」
このやり取りも慣れたものだ。結月はベッドから上体を起こすと携帯端末を手に取る。結月の獲得賞金は既に千五百万を超えていた。浪費癖もないため生活費以外の出費はほとんどなく、順調に貯まり続けている。とはいえ結月の目的は金銭ではない。いまだ誰も成しえていない百回のゲームクリア。それが結月の目標だ。結月が携帯端末を開くと朱莉からフレンド申請が届いている。
『先ほどのゲームではお世話になりました。よろしければ承認お願いします。朱莉』
「真面目な子だなぁ」
結月は苦笑して承認ボタンを押した。するとすぐに次のメッセージが送られてくる。
『承認ありがとうございます。よければ次のゲームも一緒にどうですか?』
「……」
結月の手が止まった。それはかつて、共にゲームに挑んだプレイヤーを死なせてしまった過去があるから。ハンドルネーム、莉乃。わずか三回目のゲームで、彼女は命を落とした。朱莉も恐らく、次が三回目。どうしても、重ねて見てしまう。だから。
『私は次はこのゲームにエントリーする。参加するかどうかは朱莉の自己責任で』
エントリー画面のリンクを張り、最終的な判断は朱莉にゆだねた。
『もちろん参加します。次も会えたら仲良くしてくださいね!』
まさかの即決。もともとタフな子だと思ってはいたが楽観的というかポジティブというのか。
「まぁ、その方が私としても気楽ではあるけど」
結月は携帯端末を閉じるとベッドから降りる。買い出しついでに会いに行きたい人もいた。
「結月様、お出かけですか?」
「うん。今日は帰らないかもしれない」
「かしこまりました。お気をつけて行ってらっしゃいませ」
かれこれ一年の付き合いになる案内役の少女とは、以前に比べれば会話をするようになった。お互い口数は少ないが一言も話さなかった時期もあることを考えれば大きな進歩だろう。結月は部屋を出ると居住区エリアを通り過ぎ、レストラン街を突っ切って未開発エリアへ向かった。未開発エリア唯一のレストランに目的の人物はいる。
「零さーん……?」
「結月か、どうした」
落ち着いた茶髪に十字架のピアス、そして琥珀色の瞳。結月の知る中では一番のベテランプレイヤー、零。今日は彼に会いに来た。
「ちょっと情報共有したくて」
「情報?」
「うん。最近新規プレイヤーが異常に多いんだけど何か知ってる?」
零の隣に腰かけて問いかけてみるが、零は首を横に振る。
「さぁな。半分隠居の俺にまで情報は届いていない。が、わざわざお前から訪ねてくるということは、そういうことだろう?」
流石はクリア回数六十回越えのトップランカー。理解が早くて助かる。
「お願いできる?」
「あぁ、次のゲームには久々に俺も参加する。リンクを送っておけ」




