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第1話「今私上手く笑えてる?」


「ふんふんふーん♪今日も一日一善!いい事した〜」


私は浮かれてスキップしながらみんなと合流したさ、うん。


「朱灯、おっせーぞー!腹でも下した?」


「それならお姉ちゃん、暖かい飲み物買ってこようか?」


「違うしー!いいことしてきたんだし〜?てかうちの妹優しすぎ!神」


「お姉ちゃん…?何言ってるの?」


クスリと笑うその笑顔100点満点です。


「ほら百合樺ちゃんも引いてるぞ〜!」


「百合樺はこんな事で引かないし!私の全てを受け入れてくれるわきっと!」


___そんなたわいない会話していた最中だった。


ドカァーーーンッ


一斉に上がる悲鳴、煙の匂い、そして音を立てて壊れていく観覧車。


そう、たった今。第3区の「安心安全!夢の幸せな世界ハピネスワールド」は壊されたのだ。安心安全なこの遊園地で問題が起きた。それは警備やセキュリティに問題があるということ、すなわち今ここは…無法地帯な危険な場所ということ。


「くそっ、なんなんだよ急に!」


「ひっ……お姉ちゃんっ!」


百合樺の手が震える、顔色も悪い。私は少しでも落ち着けるように、そっと手を握った。


「大丈夫!落ち着いて避難すれば大丈夫だから。ね、指示に従おう」


不安な顔など見せてたまるか、私は精一杯の笑顔を百合樺に向けた。


「ありがとうお姉ちゃん……」


混乱の渦の中、必死に逃げようとする人々の波に私達は巻き込まれた。


「百合樺!!」


「お姉ちゃん!!」


静かに私達を繋いでいた手が人々の荒々しい並によって離れる。


「行かないでお姉ちゃん!!」


「っ…わたしは大丈ー夫!先に避難してて、私もすぐ行くから!」

_______________________


「そんな!お姉ちゃん!!!」


私は必死にお姉ちゃんの姿を目に焼き付け、追いかけた。


「百合樺ちゃん!」


グイッと腕を捕まれ振り向かせられた。


「落ち着いて!!」


我に返ると、周りの人達の困惑、不安、そして子供の泣き声が聞こえてきた。


「おがぁさぁんん“、うぇぇぇん」


私は気づいたら子供の目の前にいた。


「大丈夫だよ。お母さんお外で待ってるからね。一緒に行こう?」


今、この子には私が必要だ。だから、私は今できることをする。


「すみませーーん!皆さん!落ち着いて焦らず、列になって出入口ゲートの方へ向かっていってください!今、できることをみなさんしましょう!」


_______________________


私は人の波に連れていかれた。必死の思いで波から這い出ると、


___そこは人がいない店裏だった。


「えぇ、出入口ゲートまでめっちゃ遠いじゃん…百合樺きっと心配するだろうなぁ。」


ため息を零すと近くの茂みから人の声がする。なんだか聞いちゃいけない気がして息を潜める…でもここで静かに立ち去ればよかったのに、そうすれば大丈夫だったのに……


____私は茂みの隙間からそっと覗いた。


そこには3人、そして横たわった……爆発に巻き込まれた人がいた。きっと息はしていなかったとおもう。


私は声が漏れそうになったのを堪え、話している3人に注意を向けた。


私は気づいてしまった。3人のうち1人が、あの時のチャイナ服を着た美人さんだったことに。


まさか、あの部品……大事なものだったんじゃ?もし、もしだよ?あの時部品を渡していなかったら……この人は無事に生きてた?


そんな考えが脳裏によぎった。よぎった時点でもう自責の念は止められなくなった。


ふと、怒りを込めた声が聞こえた。声を荒らげたのは強面のメガネをかけたスーツ姿の男性だった。


「お前なぁ…もっと慎重に動け!お前のその行動ひとつで任務が失敗するところだったんだ。」


「エー、別にいいジャーンネ。結果オーライアルヨ!」


「なんて楽観的な……お前のそういう考えほんと胃がキリキリする」


そんな怒涛な会話が繰り広げられてる中、もう一人の異常さに気がついた。クマの着ぐるみを着ており、会話をせずメモ帳でやり取りしている。クマの着ぐるみは確か、不人気のあまり存在が消されかけてるハピネスワールドのマスコット……。そう、私が一緒にさっき撮ったマスコットだ。まさかあの着ぐるみも爆発に関わってたの?


『でも、ターゲットいがい被害者が出なくて良かった。安心したよ』


手馴れた手つきでスラスラと文字を書いている。


___にしても異常だ。ハット我に返った私は今更ながら逃げようとそっと後ずさりをした。その瞬間


パキッ


木の枝を踏みつけてしまった。


一斉に3人の顔が振り向く、なんて鋭い眼光……軽くチビりかけた。


私は一目散に走った。どんなに疲れても、息が上がっても振り返らず…走り続けた。


__はぁっはぁ


気がつけば人が集まっているとこまで来た。ってことはここは外だ。出入口ゲートを少し出た所だろうか…?


「お姉ちゃんっ!!」


百合樺が勢いよく抱きついてきた。


「グフォッ」


「お姉ちゃん!大丈夫だった?」


「あ、うん…もちろ、」


あの時見た死体、3人。会話、全てがフラッシュバックした。


「お姉ちゃん……?」


「あ、うん。大丈夫…はは」


今私は、上手く笑えてるだろうか?


「お姉ちゃん……お家、帰ろっか。」


「うん…」


私はその日の出来事によるショックで学校を3日連続で休んだ。ドア越しに学校から電話してくれてる妹の声がする。

______________________


「はい、はい。すみません、お姉ちゃん気分が優れないらしくて……はい、今日もお休みします。」


お姉ちゃんは今日も休んだ。あの時一体何があったのかすら教えてくれない。


あの時の爆発については警察が家まで来てわざわざ口止め料を渡された。そして多分…言えばもう保護安全区域には立ち入れなくなるだろう。


この場所は底の底まで暗くて黒黒しい。

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