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08魔動物

 あのたたかいが己をすべて変えた。もうこれ以上変わりたくない。


「うーん、いい香りー」


 数分待ち、オーブンから香ばしい香りが漂ってきてすんすんと嗅ぐ。


「成功ね」


 オーブンの扉を開けるとジュウジュウという音を立てる。グラタンをテーブルに置いてスプーンで食べる。うん、美味しくできた。もぐもぐと食べ、町の方が今どうなっているのかを考えた。


 ドラゴンも居なくなったし、傭兵たちも居なくなり、治安もよくなる。引っ越しせずに済みそうだ。良かった、すべてが解決しそうだ。


 食べ終わり食後の紅茶を飲んでいると、トントンとドアが叩かれて眉間を深くする。どうやら呼んでない何者かがいるみたい。今は気分ではないので、出ない。居留守。


「いるんだろ」


 声からしてあの男か。不躾でとてもではないが仲よくする気も起きない。スカウトをしにきたのにスカウトできないと知って目の前でがっかりされ、どの面を下げて来たのかと気分を下げられる。

 折角紅茶で機嫌も直ったのに。余計なタイミング。取り付ける必要もない。


「話を聞け。山で言ったのは本音だが、お前の武器の使い方は評価している」


 なにをしにきたんだ。


「……帰って下さい」


「今日は帰る。また来る」


 歩く音が聞こえてやっと静かになった。本当になにをしに来たのか疑問。首をかしげこの日は終わった。


 次の日、新聞を読むとドラゴンの動向が書かれていた。タカノツメの傭兵団がドラゴンを追い払ったと書かれていた。まぁ、そうなるよね。


 だれだって近くにいる人がなにかをしたと思う。彼らが言わなくてもそう解釈するわけ。他にも色々あったがそこは軽く流して読む。町に出るよりも家でのんびり過ごすことにしよう。

 まだ向こうは混乱しているだろう。紅茶もミルクを足して楽しんだ後、魔動物たちを世話するためにブラシを手に外へ。


「……?」


 気配を感じて立ち止まると横から影か来る。


「あら、あなたでしたか」


 郵便配たちの人間かと思ったがノイスだった。


「今、時間あるか」


「ないですね」


 そうきっぱり言い、魔動物たちの元へ。


「……おい」


 止めようとするが避ける。その動作にノイスは感心した。まさか、今のをと再び前に出る。


「なんですか?邪魔ですよ?」


「話を聞いてほしいだけだ」


「今忙しいと言いましたが……あっちに行って下さい」


 追い払うように進む。それでも付いてくる。もう、帰ってって言ってるのに。なにを求めていてもあげられるものはない。


「魔動物か。珍しいな」


 彼が知っているのに言うのは、魔動物は基本懐かないので飼うには難しいという意味。確かに難しいが彼らは賢いので飼いやすいとも思う。

 それでも、飼う人はいないけれど。それに絆も確かに感じている。ノイスに来てほしくないが、どうしても追払えなさそうだ。


 諦めて存在を無視することにした。魔動物たちにハグと言葉を交わす。それを無感情の瞳で眺める男。シュールな光景だ。でも、邪魔しない分、分別はあるのか。図々しい男だが。


「おい、そろそろ話を聞け」


「いやですが」


「……どうしたら聞く?」


「逆に敵だった相手のお話を聞くのですか、あなたは?」


 そう述べると黙り込む御仁。ほら、と目を横に向ける。話を聞くのも時間の無駄。違う作業をはじめるとそれを見るためか近くにあった木箱に座る男。


 え、ずっといるつもりなのかしら。呆れた顔で他の作業をしながら、男について少し回想する。あのときは男だらけの仕事で気が抜けなかったから、敵のことなんて殆ど覚えてない。


 顔を覚えてないのは多分、遠かったのもある。遠いので声くらいは聞こえていたが、声なんて覚えているわけもなく。

 やはり、ボヤケている。相当、ストレスも精神的にも辟易していた。うん、私は悪くない。悪いのは無駄に権威を振るった王族。よし、と納得して作業で手を動かし続ける。


「なにを作ってるんだ」


 作業を気にしているらしい。


「……はぁ」


 無視するにしても煩い男だ。


「ちょっと、煩いです」


「……初めて言われた」


「え」


 それは、言われてもおかしくないでしょ。どんな激甘教育だったんだろう。震えそうになるが、我慢した。やはり、気にしないように努めよう。

 なにをしているのかといえば、刺繍なのだが、魔動物たちに私の物だという所有物ということが直ぐに分かる小物を作っている。

 万が一、変な攻撃をされても私のものだと所有権を主張できるように。


「おい、こんなところに家があるぜ」


 小物をこさえていると、知らない者の声が聞こえ。傍に置いていた攻撃用の武器を持つ。

 ノイスもこちらの行動と、今までの傭兵たちの張り付けを見たのもあり、なにかを察したのだろう。


「敵か」


「現時点ではまだ、です」


「成程な」


 ノイスは理解してくれた。まだ奇襲されてない。


「ここを拠点にしますか」


 ナチュラルに奪う前提、さすがは犯罪者ども。目を釣り上げる。どいつもこいつもと闘志を燃やしはじめた。


「ドアを潜り、ましたね」


 とくに頑丈な鍵をつけているわけではないので、呆気なく壊された。それに伴いヒノメールは駆けだした。武器を構えて斬りつけた。


「なん──ぐっ!」


 なにか言おうとしていたが構うことなく斬りつけて倒す。

 ザシュ、という勢いで次々相手を沈めていけば、残るはこちらに気付いて体制を整えた運のいい者たちだけ。

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