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07ヒノメール、戦う

 それを避けて尻尾に切りつけていく。


「ギャオオオオ!」


 怒りを含む声が耳に強く残る。次いでドラゴンの顎が真上から降ってきてバックステップで避けた。やはり強い。これは退けられないかも。


「はぁあああ!」


 前に槍を突き出し足を狙う。


 ──ガン


「くっ」


 はね返されて後退る。別に討伐までは考えていなかったのに、まけそう。


「困った」


 ここまできてなにもできないのは後々響いてきそう。


「みんな、待っているのに」


 魔動物たちに顔向けできない。


「もう始まってる!」


「団長!」


 後ろが騒がしい。もうきてしまったのか。


(早く終わらせないと!)


 彼らがこちらの動きを阻止してしまう前に。


「……槍、だと」


(来る)


 ドラゴンも多数の気配に興奮したのか口から炎をためる仕草になる。


「来るぞ!全員避けろ」


 ノイスの命に全員下がる。しかし、ヒノメールは違った。ドラゴンの真下に向かって走る。そして、体に向かって振動を加える技を使う。


 ──ゴオオオ


 ──ズズズ


「帰って、お願いっ」


 振動に宛てられたドラゴンは驚いて羽を使い空へ飛ぶ。


「ギュオオオ」


 気持ち悪いのか体を震わせている。飛ぶのを待っていた。スキを見せている間にドラゴンへ躍して槍を振り下ろす。足に当たって、邪魔だという空気に蹴られる。


 ──ドコッ


 地面に激突して体に激痛が走る。しかし、こうでもしないと撤退もしてくれないと思っていたので行動に移したのだ。


「おい!」


 ノイスが焦った声音でなにかを伝えてくるが意識が薄れていて上手く聞き取れない。ドラゴンが怒った態度で上から体をぶつけようとするが、ギシギシする体を必死に動かし最後の仕上げをする。


 ──バサッ


 袋から粉をばら撒く。


「キュ!?」


 まるで犬のように鳴いてバサバサと向こうへ行く。


「な、なんだ!?くっせー!」


 だれかが叫ぶ。兎に角臭いものをと作成したものだが、うまくいってよかった。ドラゴンは匂いなんて気にしないとなったら失敗だったろう。


「それよりドラゴン逃げたぜ」


「どーする!?」


 どうするもなにも解散するに決まっていてよ。


「うん」


 頷いて槍を持ち直して荷物を抱えて下りる。


 ──ガシ


 だれかに腕を取られ歩けなくなった。あら、と見ると眉間にシワを寄せた顔が。怖い。


「なに、かしら」


「お前、まさかこのまま去るつもりだったのか……!」


 信じられないと声音に怒りを滲ませられるが、怒られる覚えはない。


「離してほしいのですが」


「離したら行くだろ」


「帰るだけです」


「帰るってあのアバラ屋か」


「一軒家ですよ」


 ノイスはそれでも手を離さない。困った困った。


「山の中で強引に尋問されるのなら、それ相応の対処をしなきゃいけませんね」


 目を伏せて低く声を出すと、ノイスは仕方ないと腕を外す。


「歩きながら聞かせろ」


「聞かせろってなにを?」


 本当になにか分からない。


「本当にわかってない、だと」


 ノイスはひと呼吸し、質問してくる。


「お前は紅の軍妃ヒノメールなのか」


「勝手につけられたそちらを私は好きではないのです。ですが、私がヒノメールですね」


 名乗ると周りがザワザワする。


「いや、別人だよな?」


「でもさ、都合よく槍使いがそこら辺にいるのか?」


「本物なのか?偽物なのか?」


 全員がこの場で混乱している。


「お前はまず、ヒノメールなんだな」


「はい、私の名前ですね」


 うなずきと共に肯定すると団員たちが代わる代わる変な格好になったり、呻いたりする。


「どういうことかまだ分からん」


「どうなってんだぁ!」


 ノイスは後ろのハチャメチャ具合を無視してこちらへ何度も問いかけてくる。どこに住んでいたとか、戦場に出たことはあるかなど。


「ありますね」


「随分性格が違うな」


「戦場では自衛をするしかなかったので。性格などその一つでしたわ」


 出てくる台詞は納得できるが、なかなかのみこめない。男は混乱した内情を整理する。


「つまり、お前の性格は作り物だったということか」


「さぁ……化粧みたいなものですから」


 おっとりと応える女に絶句。


「スカウトしに来たのに無駄足か」


「なんて失礼なの!」


 勝手に来たくせに期待をして失望する男に憤慨。


「失礼させてもらいますから」


 こんな自己陶酔の男と一緒にいたくないので足早に去る。引き止める声が聞こえたが知らないことだ。急ぎ足で家に戻ると無事な我が家に安堵する。


 強盗が居ても居なくてもうちの魔動物たちが警備員のように吹き飛ばしてくれるから、不安な面は皆無だけど。


 それでもこんなに離れてしまったのは久々だからちょっと気になった。それに、私のことを知ったノイスたちが今後お仕掛けてくるとも知れないし。

 急いで計画を練って撃退したい。もう二度と勧誘されたくない。


「ただいま」


 みんなに帰った報告をして、香りを吸う。家の匂いはホッとする。不思議だ。槍を丁寧に隠し、お腹が空いたので食ことの準備をする。


 今日はジャガイモが採れたのでグラタンにしようかしら。ジャガイモを細かく切り、ブロッコリーも刻む。チーズと牛乳も。混ぜてオーブンへ投入。


 カリカリに焼くのがヒノメールの好み。カリカリなチーズは最高。実家でもよく焼いてもらった。そのできことが遠い昔のようだ。

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