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44私の帰る場所

列車から降りて、ノイスたちの街へ辿り着く。


傭兵団の施設に行くと、建物が見えて、体から力が抜けた。


(あ)


体がホッとしている?


疑問が確信に変わる。


「ノイスさん」


「なんだ」


彼はこちらに顔を向けて、聞く姿勢をしてくれる。


ノイスは穏やかな様子を纏って、待ってくれる。


「どうやら、故郷になっていたみたいです」


そう投げかけると、男は目を丸くし耐えられないという態度でいつもよりも楽しげに笑う。


笑うところなんて、あっただろうかと問いかける。


「な、なんですか?」


「いや……?」


ノイスがこちらを見やり、わかっていたけどなと自慢げに建物を見上げる。


中に入っていく男に、自分の足も動く。


この場所が、もう帰る場所なのか。


建物を見ていると、家から出てきた子供が笑顔を見せる。


「おかえり、ヒノメールちゃん」


この子はこの近くに住んでいるので、よく話す。


ただいまと返す。


「ヒノメールちゃんたち、夫婦の大会ってやつに出たんでしょ?」


「はい。出ましたよ」


「優勝した?」


頷くと嬉しそうにして「弾幕を作らないと!」と言い始める。


本当はすぐに作ってかけておく予定だったらしいが、まずは聞いてからにしようということになったらしい。


街に入るたびに、ヒノメールとノイス夫婦が夫婦の大会優勝と書かれた幕が目に入るような街の真ん中に、掲げられるということか。


「それはもう決定事項なんですね」


「うん、みんな言ってるよ。やろうねって」


その最後を聴きながら、押されるように建物へ入る。


偽物なのに掲げられるらしい。


余計に、もう誰にもバレるわけにはいかなくなったなと。


なにかに、囲まれている気持ちになる。


「の、ノイスさん聞いてください」


弾幕の事を言いにいくと、中から魔法で出来た光が室内に広がる。


何事かと構えるが、すぐに何が起こったか把握して目を緩ませた。


「「ヒノメール、おかえり!」」


タカノツメ傭兵団の面々が全員集まっている。


どうしたのかと聞くと、歓迎会だよと言われた。


「歓迎会ですか」


「あぁ。やろうと思っていたけど、お前はずっとここにいるからなぁ。用意ができない」


ノイスが、団員たちに同意するように頷く。


「企画が上がっていたが、いつやるかが問題だった」


心が嬉しさで跳ねる。


「そうなんですね。歓迎会ありがとうございます」


戦いの場にいた時だって、ただの女と思われないように宴にも酒の場にも行かなかったから。


このようなことをされるのは、初めてだ。


「酒の席とかやらなかったのか?」


「はい。酒の席なんて、一番危ないじゃないですか。女は私一人だったんですよ。お酒なんて飲んだら全て水の泡ですからね」


なんのために、仮面をつけたのかとなる。


ここではその必要がないともう本能で理解して、油断もできる。


ヒノメールは胸に手を当てて、みんなの顔を見回すと一人一人がこちらを同じように見ていることに気がついた。


いつの間にか、仲間と思ってくれていたのだ。


(そのままの気持ちで受け入れられる日が来るなんて)


目から涙がふくりと溢れてきた。


戦場に行くまでは素直に全てを受け取れていたのに、戦場を体験してからはなにかにつけて企みや意味を、深く考えて感受できなくなってしまった。


「本当に、ありがとうございます」


されてすぐは嬉しさだったけれど、今は安心と仲間たちにこうやって祝われることや、それを嬉しく思う余裕の気持ちが湧いたことに俯く。


まだ自分は、あの戦場に心を置いていっていたのだと今気付く。


「どうしたんだ」


「ヒノメール?」


「嬉しくて、泣いているのか」


「当たり前だろう」


「準備大変だったしな」


団員たちが次々ヒノメールに言葉をかけていく。


全員腕利きの傭兵なのに、気さくすぎる。


「すみません。嬉しくて」


居候なのに、こうやって良くしてくれる。


「ははは、ヒノメールってやっぱり変わってるな」


「私は普通の女性ですけど」


流石に変人扱いには抗議ものだ。


だが、全員から「それはない」と総意で叫ばれる。


「ノイスさん!ほら、用意していたプレゼント」


団員たちが催促して出てきたノイスがゆっくりこちらにくる。


彼もこの計画を知っていたので、ずっとこちらの気を引いていた理由がわかった。


漸く、旅行中に口説きに似たことをされていた秘密が、わかった。


彼は箱をこっちへ渡しながら、無表情で「受け取れ」と箱を渡される。


「わ。ありがとうございます。なんだかもらってばかりなのに……」


恐縮しがちになりそうなこちらに、彼は気にするなと付け加える。


「部屋に帰ったら開けろ」


団員たちは見たいと言うが、ノイスは絶対に譲らなかったので、ヒノメールも開けることはない。


「次はおれな」


次々みんなから、プレゼントを渡される。


「あ、ミスズィ・ヒノメール」


名前入りのケーキも出てきて、苗字が変化したことをまた忘れていた。


「まだ、違和感はありますが……」


ケーキも渡されて食べると美味しくて、ヒノメールも購入したお土産を渡す。


みんなはありがとうと返してくれて、うちの団長は買わないから妻がいるとお土産を貰えるんだなと嬉しそうにしていた。


「お前らも結婚しろ。棚に上げて言うな」


彼は笑って、みんなからの言葉を返す。


こういう空気はやはりこの団特有だなと、見ているだけでも楽しい。


嬉し涙が頬を伝った。

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