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04買い物

 町に行ってもだれも自分のことを知らないから楽だ。ぐっすり眠った次の日、女は町に向かって歩き出した。

 通常よりも早い速度で息切れすることがないのはスキルの恩恵だが、それに気づくことはない。先ず変化を指摘する者がだれもいないのだ。


 早い速度に町並みが見えてきて顔が嬉しさに綻ぶ。

 戦いばかりで忙しなかったので町に行く時間もなく、纏まりのない兵士たちを亀裂なくいさせるのはそれはもう大変だった。


「これからはいつでも買い物に行ける」


 グッと手に拳を作った。町に入るとたくさんの人々の声が行き交う。これよ、これ。煙の臭いも血の匂いもしない。

 これこそ望んでいた生活だ。町で買うものを吟味していると見慣れぬ装いをした人たちが通りすぎた。


 八百屋の男がありゃ傭兵さと笑う。こんな町にも傭兵は至るところにいる。

 傭兵とは戦争をメインに活動したり、雑用をしたりとその団によって活動が違う。最近新聞を賑わせるのはうちの国に敵対していた国のタカノツメの傭兵団。


 ということは、戦場で敵対していた傭兵とはその人たちなのだろうか。

 相手から名乗ってくれないと分からない。それくらい人手不足だった。なんとか補えたのは魔鳥たちのお陰だ。


 彼らが活躍してくれなかったらやってられない。孤立無援だったのに和平を結んだとたん思い出したように呼び出されてもう二度とこの国のためにはならないと誓った。


「傭兵ということは仕事が溢れているのか」


 復興のために人手がほしいから集まっているみたいだ。

 小競り合いだったので被害があったのは戦場の近くの町くらいだが、国としても次どこかの国が攻めてきたときのために向こうの国を見習って、傭兵を運用しようとしているのかもしれない。


 今更なのだが。もっと早くだれか提案してほしかった。仕事が遅いと内心文句も言いたくなる。そうしてくれれば代理戦争で終わってこの国も痛い目を見られたのに。


「あ、りんごが」


 ころころと手から落ちたりんご。自分はこんな風にりんごさえも上手く持てないくらいノロッとしている。

 よく軍を動かせたものだと奇跡を感じてしまう。張りぼては長いこと持たないので早めに終わって良かった。


 ──ギャオオオオ


「っ」


 耳を塞ぎたい程の音が町を襲う。空を見上げると黄色いドラゴンが山に降りていくのが見えて町はパニックになった。町の向こう、つまり己の家が一番距離が近い。


「はぁ、買い物、急がないと」


 買い物ができなくなってしまう。みんなこぞって買いだめするだろう。まだ混乱している間にさっさと済ませて家に急ぐ。




 ***




「死になさい」


 ──ズバッ


「ぐあああ!」


 四人目を切り伏せた。血に汚れた槍を振る。もう家を盗ろうとする盗人は居ないようだ。

 イエロードラゴンが近くの山に降り立ち、早5日。イエロードラゴンの素材と懸賞金ほしさにねぐらを作る傭兵たちが近くに集まってきた。


 他所に作るのはイイが治安も悪くなった。この家と女という理由で不法侵入してくる男たちをもう何人切ったのか。


 この傭兵たちは個人が集まっただけみたいなので張り付けよう。どうも、槍を持ったり戦う時になると血が騒ぐみたいで、戦場での日々のような口調になる。


 そうでもしないと、人を切るという行為ができない。治安悪化は町の方もあるみたいで、5日目になっても、こちらの救援をしてもらえる見込みがない。

 まだ対応できる傭兵なのでいいけど、多過ぎて対処できなくなったら町に移るのも考えなくては。


「イエロードラゴンはいつになれば去るの」


 いつものおっとりに戻ると溜め息をはく。魔動物たちものんびりできないしで、不法者たちにその足や角を突き刺している。


「終わってほしい」


 ──トントントン


「はぁい」


 用心のためにロープと包丁を持っていく。貼り付けにされている男が目に入らなかったのかしら。


 扉を開けると男が少数の男たちを伴っていた。あら、持ってくる武器を間違えたかしら。眉を下げて思案していると男はこちらを見たまま「あんたか」と言う。


 こちらのことを知っているみたい。首をかしげてどちら様?と聞く。男は少し顔をムッとさせて「この前この家に来たんだが」と。

 最近来た人でもやもやと浮かびそうになるが、浮かばず飛散する。


「どちら様?」


 二度目の応酬にノイスは、目を細めてノイスだと名乗る。軍妃は帰ってきてるかと聞かれて、傭兵らしき後ろの人たちがとても気になる。


「ノイス?えっと、ノイスさん?でしょうか」


「軍妃から聞いたか?」


「ん?」


 はて、自分の中でノイスを検索するがヒットせず。首を横に振る。


「あのぉ、あなたたち、ですよね?」


「後ろのやつらはおれの部下だ」


「あまりにも押し掛け過ぎでは」


「付近に泊まるから気にするな」


 いや、気にするかなぁ。攻め込もうとされているのかな?挨拶にしては緩い。


「そうですか。最近傭兵といって家を狙う不届きものも多いので気をつけて下さい」


 ぽわぽわした対応に、ノイスはやはりこの家の人間にしては抜けているなと感想を持つ。いつになれば、あの女に会えるのかと聞くが、帰ってこないという。

 ではあの磔にされたやつらはいつだと聞くと、数分前と言い、ノイスたちの気配を感じて離れたのだろうと適当にのべた。


 ここで正体が露見してもいいことは無さそうだと機転を活かしてみる。騒がしいのに煩わしいことをさせられたくない。

 もし戦う、となっても無意味なことなのでやる気もない。もう争いは終わった。


 自分の家を守ることはあっても、土地を守る義理は最早ないのだ。あのはた迷惑な姫と王子に得になるようなことをしたくない。

 絶対にもう働かないと決めているので、できるのならなにもない方が助かる。ノイスたちはあっさり納得して帰っていく。


 誤魔化せて良かった。ヒノメールは落ち着いたところで、紅茶タイムにした。ミルクをたっぷりかけて飲む。至福の時間。


 その夜、ノイスたちは襲いに来なかった。


(別の不埒な人たちは来たけれど)


 勿論返り討ちにして地面に転がしている。

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