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36お姫様だっこ

そう考えていると、魔コマドリが服のポケットの中に入る。


他の魔動物たちから毛繕いをされて、目をのほほんと閉じていた。


「探してもらえるのは嬉しくはありますが、ノイスさんはその、どのような扱いになっているのですか?」


「どのような?国にたまに雇われる便利屋だ」


「便利屋をそんなに重用するんですね」


「まぁな。それに、ツテもある」


「ツテ。それですね。色々借しなどを作っているとかですねっ」


「そうかもしれないが。あいつのことだ。おれの結婚祝いってやつかもな」


「ラピトさんは役員なのですか」


疑問が湧く。


ラピトは何者なのかという説が、急に浮上した。


「少し違うような、そんなようなものだ」


「曖昧ですね。説明する気がない説明なので深く聞きません。ということで良いでしょうか?」


「物わかりが良い奥さんでおれは幸せだ」


デザイン的には普通の人に見えた。


あれは、所謂『カモフラージュ』なのだとしたら。


かなり立場がいい人の可能性もなきにしもあらず。


だが、それを知る理由を持たないヒノメールにとっては、聞く意味もないので聞かなかったことにするのがいいこと。


ヒノメールはノイスと楽しむために来た。


それ以外の問題は今知ることではない。


大会に集中しなければならない。


でないと何のため来たのかわからなくなるし、ラピトが何者でもあまり影響はないと思う。


「ノイスさん。妻姫の大会をどのように攻略しますか?抱っこはあなたがするのですよね?私でなくてもよろしいですか」


「なんで嫁の方が旦那を?」


「私にも筋肉があります!何とかノイスさんを一人抱き上げる位は、やってみたくはあります」


「いや、望んでねえし、そんな夫婦は自分たちだけだろうから、目立つしな。そんな目立ち方はしたくない。優勝を目指したい。何かを失いたいわけじゃない」


そういうことらしい。


よくわからないけど、とにかく嫌らしい。


男女平等でいたいのだけど、だめなのだろうか?


なにが具体的にダメなのか教えて欲しいと頼む。


ノイスは困った顔をしてこちらを見る。


軍妃に対して、いうべきか今のヒノメールへいうべきか。


いや、二人が一つの体にいるわけではないので一人言えば事足りるのは知っているのだが。


と、一人呟くノイスを眺めて「わかりました。今回は諦めます」と肩を落とす。


「そんなにやりたいのなら、あいつらが付き合ってくれるやつがいる。そいつらに頼めばいい」


それは、傭兵団の面々だろう。


彼らが手伝ってくれるのならば、頼んでみたい。


みんなはヒノメールに抱っこさせてくれるのか、菓子でも持っていけば可能性は高まるかも。


今から楽しみだ。


空気が上機嫌になった彼女にノイスは笑って、ああと返事を返す。


「取り敢えず確認がてら姫様抱っこってやつを練習しておくか。じゃあ、乗れ」


と、手を広げて待機している姿勢になる男にきょとんとなる。


そうか、抱っこされる体勢になるには今までで一番、近い距離になるということか。


どきりと心臓が鳴る。


好き嫌いを抜きにしてもその近さは緊張するので、深呼吸を挟み彼に近寄り体を寄せた。


お腹の少し上、膝の下に彼の手が差し込まれてぐっと弱めに引き上げられていく。


このようなことをされたことはないが、大会でもこのような体勢で進められるのだ。


それを人目のあるルートで走る。


妻は何もしなくていいが、その分色々見られるので恥ずかしくなるかもしれない。


いや、走っている最中は平気かと思うが、終わったらあとでじわじわ恥ずかしい気持ちになるもの。


「あ、あ、あのぉ!お、おろしてもらいたいのですけど!」


唱えるが、降ろしてくれない。


そのまま走られた。


走るために抱き上げたのだから走るのは当たり前の行動であろう。


走っている時はなにかしらの振動を感じるかと思ったが、何も感じなかった。


流石は凄腕(?)の男。


ヒノメールはタカノツメの情報を収集した時の内容を思い出した。


しかし、その内容は強いとかちゃんとしている、とかいうようなあやふやで抽象的な表現ばかり。


おまけに、団内の治安もかなりしっかり統制できているというような、関係ないようなところしか入ってこなかった。


そんなの戦場で得ても、なんの後押しにもならない。


戦っている中で、実際刃を交わしたことはあまりない。


いつも舌戦。

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