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31スタンプラリー

なにかをやらかすだろうという予測は二人とも共通している認識だ。


絶対に彼らは、やったことがないことはしたくないと駄々をこねたりするかもしれない。


見たくないというか、故郷の王子たちだと知られたくない。


国の人たちは同じように思えないのだろか?


外に出してはいけないと、誰か思って止めなかったのかな。


絶対に、国際問題を引っ提げて戻ってくるでしょ。


あの二人がその付近にいるのならば目立つだろうと目で探したけれど、いなかった。


簡単には見つけられないのだろう。


それとも、ホテルで休んだりしているのだろうか。


「おい、おい、聞いてたか?」


「は、はいっ。すみません!聞いてませんでした!」


彼に、問いかけられていることに気付いて返事を返す。


もう一度説明するぞと前置きされる。


「精度をあげるために夫婦の練習をするぞと、言った」


「夫婦の練習ですね……やっぱりするんですね」


気が乗らない。


乗らないのは乗らないのだ。


本当の夫婦ではないし。


「ふう、はぁ、ふぅ。よ、よし、どんとこいです。あ、やっぱりもう少し待ってもらっていいですか?ほんの少し、いえ、できれば……三十分ほど」


どんどん伸びている。


クスクス笑う男は彼女へ伝えて手を出す。


「急に過激なことはしねぇよ。先ずは手を触る。ほら、簡単だろ」


ヒノメールに差し出される手。


手をゆるりと緊張しながら重ねる。


いや、指先を手のひらに当てた。


いつまでも待つノイスの手に爪の先を当てながらちらりと上を見る。


彼は楽しそうに笑っていた。


(うっ。余裕そう)


あまりにも恥ずかしくて引っ込めようかと彼の手から距離を取る。


しかし、怖がらせないように彼は声をかけてきた。


ほら、とまた言われてカァアアと体温が上がる。


父以外の異性に触れる機会なんてなかった。


戦いのときも絶対に近寄らなかったし。


いかに男達を遠ざけられるかに苦心していたのだ。


こうやって手を繋ぐなどありえない。


しかし、と光る指輪を見てグッと口元を引き結ぶ。


彼はこちらのことを助けてくれたし、次はヒノメールが協力するべきだ。


「ん!」


パッと手を開いて叩くように掴む。


スタンプラリー中、掴むのは無理だと思う。


なんせ、とんでもなく恥ずかしい。


タカノツメ傭兵団の皆に見られるのはかなわないので、見られなくてよかった。


ヒノメールは頬を赤くしないように力む。


力むと握力が強くなる。


「少し……力を抜いてもらっていいか」


「は!す、すみません」


ヒノメールはパッと手を抜き、後ろにやる。


しかし、ノイスは彼女の手を握ってきた。


なんだか、自分の手が自分のものでなくなったような。


そのまま、また歩き出す二人。


スタンプラリーの道を辿る。


浮遊する生物が花の蜜を吸う。


「かなり花が多いな、この地域は」


「ええ。ノイスさんは花に着目するのですね」


「いや?いつもはそんなこと気にならない。話を探して、目についたものを話題にするのが話術だ」


「私も人と話すのは苦手なので、そういう技術は勉強になります」


「無理に話さないことも大切だ。アラが出て、それを埋めるのが面倒になる。おれも面倒だといつも同じ言葉を相手に返しがちだしな」


頷く。


聞き入っていると、一つ目のポイントを過ぎる。


もう一つのポイントに行く。


やはりまだ違和感がすごい。


「そろそろ、離しませんか?」


「いや、まだまだ。まだ夫婦度三くらいだ」


「少ないですよ。十は行きましたよね」


「いや、ほら、過ぎるぞ」


ポイントをすぎると、景色が林の近くになる。


「ここは少し、歩きにくいですね。下を見ながらでないと足元が不安定です」


「整備は不完全だな。仕方ない。ショーユー地方は都会と違って、そういうところが好まれている」


と、この地方について語られる。


やはり事前調査ができていたらしい。


色々知っているので、聞いていて助かる。


ノイスは手を離さないまま、ヒノメールをエスコートしていく。


馴染まないまま、道を進む。


初めての戦場の場からずっと、魔動物達以外からの支援以外は一人だった。


それが今はノイスやノイスの部下、タカノツメ傭兵団達がいつも自分の周りにいて、賑やか。


思い出すと、帰りたくなってくる不思議。


もうあそこが帰る場所として、故郷だと思わせてくれているのだと胸があたたかくなる。


「今……実感したのですが、今すぐみなさんのところに帰りたくなりました。それっていいことですかね?」


「ああ。いいことだ。よかったな。くく……おれよりもあいつらの方が祝ってくれるぞ?」


というが、ヒノメールはノイスに伝えたかった。


今のヒノメールがあるのは、ノイス達が協力してくれたからだ。


結婚指輪はまだ慣れないし、仮初だけれど、それでもノイスたちのいる場所を好きになりたい。


もっともっと、今よりも。


「ノイスさんにはいつか故郷のよい草のある原っぱを紹介したかったのですが、今はもう、立ち入る機会はなさそうなので諦めるしかなさそうですね。本当によい草で魔動物達もお気に入りなのですよ?」


ノイスは瞳を揺らして、指を強く絡めてきた。


どうしたのだろうかと、上を見上げる。


「やっぱり故郷が恋しいか?戻りたいのか」


なんていうので、ふふ!と笑う。


首を振って笑うのをやめて否定。


戻りたいというわけではない。


あそこにはもう、ヒノメールの大切なものはないのだから。


「いえ、私の故郷はノイスさんたちのいる場所です。仮にあそこに住まなくなったとしても、少し移動したりするくらいで、国から出ていくことはしませんよ。魔動物たちも気に入ってますし。街の人たちも魔動物たちを怖がらずにいてくれます」


本当によくできた人たちの集まる場所だ。


「おれも自慢の街だからそんなに想ってもらえるなんて、街冥利に尽きるな。あそこがもっと活気に満ちれば帰ってくる時に帰ってきたと感じれる」


「そのような想いがあるのですね……私にはあまりピンときませんでしたが、この大会から帰ったら感じ取れるのかもしれませんねぇ」


彼に合わせて言ってみたが、ヒノメールはどちらかというと人物や対象者がいて、ここに己がいる実感を得られる性格なのだ。


ノイスは顎に手をやり、どうなんだろうなと話を聞いてくれる。

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