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街のここに、例の者たちが置かれていると聞いているから。


すぐにモモンガはターンしてきて伝えてきた。


絶対に傭兵たちは慌てている。


屋内に入ればやはり騒ぎになっていた。


騒ぎの真ん中にいたのはノイス。


「来たか。こいつらなんなんだ?」


「密猟者っぽい冒険者」


槍を持ったままなのに気付く面々。


「妖精を捕まえようとして阻止したらこちらに攻撃を仕掛けてきたのよ。処罰なさい。ここが軍なら今頃これよ」


ヒノメールは相手を見ながら、にっこり笑う。


「おい、だれかあいつのモード切り替えてやれ」


「えーっ、妻なんだから夫の役目ですよ」


「そうでーす」


「おれか?嫌だが」


「ぶん殴ればぶん殴るわよ」


「こんなこと言ってやがる」


ノイスは嫌そうにこちらへくる。


「ほら、ノイスさん」


と急かされる男。


「はぁ。このモードどうやって解くんだ?」


「別に世話されなくてもいい。自室に行って着替えてくるから、そいつらの尋問を始めて。任せるわよ」


共にいた男に声をかけて部屋へ戻る。




着替えて戻ると、全員こちらを確認するようにジリっとしたものを向けてくる。


「戻りましたから、そんなに見なくてもいいですよ?」


そう告げればふう、というため息があちこちから聞こえる。


「よ、よかった」


時間経過で戻るとか、そういうことも考えていたのであると説明されて笑う。


「いえ、なにかの理由があってのことではないので」


「あっちはあっちでいいな」


「はぁ?お前ふざけんな!お前少し前にヒノメールちゃんアレをあれで、ありだって言ってただろ」


「ば、ばきゃ!お、おまえっ!時効だろ時効!酒の席だし!ち、違うからなヒノメール」


「慌てるよなぁ」


みんなが目を伏せていたりしたが、からりと言う。


「わかってますよ。私もみなさんのことを血も情も涙もない──たちだって思ってましたし」


「爽やかな笑顔から放たれる、衝撃の事実うううう!」


お互い様であろうと言うと、ノイスが尋問しておいたぞと言われて早いなと驚く。


「妖精狩りだ」


「それはわかってますが、急に出てきて」


「やつらはお前の祖国の王族に捧げるためと、密猟を依頼されたと言っている」


「はぁ、なんかもう、座りますね」


放たれたセリフは、ぐったりとなるには十分なもの。


この国の法では、被害を出してない人外についてのことも記載されている。


「たしか、この国では危害や密猟を禁じてますよね」


「あぁ。人外は大なり小なり環境の一部。いなくなれば不調が起こる可能性が高いと、専門家の見解がある。無関係の国のやつが人外に攻撃した場合、人外が国の血筋を判断して個別に報復をしてくれるかどうかもわからない」


「そうなのですね。ということは彼らは他国人でしょうか」


「いや、こっちの国で雇われたやつらだ。森を知るやつを選んだんだろう」


などと、説明を受ける。


「えっと、では、刑を執行しますか」


さらりと告げられるものに、みんなはきょとんとさせる。


「お前はもう軍人じゃないから、やらなくていい。あとは公的機関の仕事だ」


「そうですか?雇い主の貴族をこの国の人って裁けるのですか?」


「ああ。ちゃんとできる」


「……そうですか」


少し残念そうにしたからか、彼が肩をぽんと叩く。


「おれたちのことを考えて……祖国の責任だと、やらなくていい」


「へっ、ち、違います」


考えていたことの一部分を言われて、びっくりした。


他国で犯罪が行われた場合、裁く裁かれないの難しさを知っていたヒノメール。


「え?ヒノメール本当か?」


「ありがとな!」


「やべー女って思ってごめんな」


「悪いと思うんなら、心のうちを全て言う必要なんてありませんけど」


やべー女と思ってたと言う理由が今あったか?と槍を出したくなった。


また、戦闘のモードになってあげようかと笑みを浮かべる。


「えー、とにかく!そちらで引き受けてもらえるのなら、何よりです」


仕切り直して話を終わらせる。


妖精探しがトラブルに当たるという不運に見舞われたが、魔動物たちもいたので安心はできた。


彼らには今日たくさんご飯をあげねば。


あげなくても、勝手に食べるからヒノメールが勝手にあげたくてあげているだけなんだけれど。


それでも、みんなは喜んで手ずからもらってくれる。


気のいい家族。


ヒノメールは部屋を出ると、ベットに寝転がり息を吐いた。


指にハマる指輪を天井にかかげる。


「書類上であれ、結婚してしまったんだなぁ……一人で恥ずかしがるのも変な話しだけど」


貰って以来、自室でこうやって眺めてしまうのだ。


寝転ぶと見ることが、くせになりかけている。


ころんとした可愛い装飾を見ながら、ノイスのことも考えて、ゆったりとまどろんだ。









ノイスが部屋に来たので、招いて客人用の椅子を出す。


「悪いな。固い話しなようでこっちもよくわからない感じだから、呼ぶのも難しいと思ってな」


「いえ、来てください。いつでも」


「ああ」


朝に声をかけられて、部屋に話しに行くと言われたのでなにか自分に関することか、この間の妖精泥棒についてだろうかと思い頷いたのだ。


「ショーユー地方で夫婦でやる大会がある」


「……え?あの、妖精の密猟についてなのでは?それとも祖国での動きに何かとか、そういう類の話しではないのですか」


「ん?……ないが?」


しっかり違うと言われてる。


「へ、あ、そう……なのですね。あ、すみません。夫婦の祭り、大会?の話しの続きですよね」


びっくりというか、予想外の肩透かしに先を足す。


詳しく聞くと、この街に住む中流階級の夫婦。


サミュエル夫妻の妻の妊娠が最近発覚。


サミュエル妻は夫とショーユー地方の大会にエントリーしていたが、赤ん坊をその身に宿しているので参加は無理。


というわけで、代わりの夫婦を探していたところ歳若き新婚の二人がいる。


それがノイスとヒノメール。


「断れないのですか?わざわざ私たちにしなくとも」


「街のやつらがみんな、おれたちに出てほしいってアンケート結果が出てる」


「アンケートってなんですか?無茶ですよ。キスしろと言われたりしたらどうするのですか?」


「いや……するしかないだろうな」


回避する方法が思いつかないのか、最後は諦めた言葉が。


「無理、無理です」


「悪いな……偽装と知ってるやつはいない方が安全だ。だれかに言えない」


傭兵団ならともかくなと言われてしまえば、周りに吹聴してくれとは言えない。


「断ってくださいよ。私無理だっていいので!なんなら妊娠したっていいます」


「それは軽率だ」


「いえ、軽率なのは引き受ける前提のあなたですよねっ。大会で夫婦のふりをするにも付け焼き刃が酷すぎるんです」


涙さえも浮かびそうな提案がされる。


「実はその大会に行きたい」


「はい?」


彼曰く、自分の情報網が確かならば祖国の王女と隣国の王女であるエカチェリーナと祖国の王子バラトがお忍びで大会に出る可能性が極めて高いと聞かされる。


目が点になる。


「なんですかそれ?なぜ一国の王子と一国の王女が地方の大会に?」


そもそもあの二人は、結婚したのか?


「婚姻したはいいがイマイチ盛り上がらないからと、宣伝用に大会に参加して自分たちをちやほやされたがっているらしい」


「な、な、な」


「まあ、結婚の話の盛り上がりが欠けたのは、最近の国の情勢がかなりぐらついているからだな。ぐらついたきっかけを産んだと思われているから、貴族にも最近はそっぽを向かれることもあるらしい」


「事実、ですから」


「元々参加しようとしていた夫婦の、参加券を分捕って参戦するとのことだ」


「極悪じゃないですかぁ」


「大会で優勝して、結婚記念と優勝記念パーティーを開いて起死回生ってところだな」


くつくつ笑うノイスが語る。


ヒノメールは楽しくないし、また勝手をしていると頭が痛い。


「国の人はあの二人を野放しにしているのですか?止めないんでしょうか」


ノイスはヒノメールの潤んだ瞳を見て、困ったように締めくくる。


「戦いを起こしたのにのうのうと、恋愛脳で走り抜けたあの二人に止まるってコマンドが、あると思うのか」


ない。


どこにもない。


肩を失意に下げた。

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