28魔モモンガ
タイミングが早すぎる。
「おれらと同じか」
彼は、やっぱりそうだよなと同意する。
「妖精の噂はここらへんでは知らない人はいない。捕まえようとするやからが現れても不思議ではない」
どうやって動こうかと思案する。
ヒノメールは、鋭く後ろにある気配に気を配りながら魔キツネを撫でる。
「勝ち合わないようにしないとな。それと。ヒノメール、やっぱかっこいい」
突然褒めるので困る。
「やめてくださる?ぶつわよ」
なので注意する。
「そこは串刺しにするわよ、じゃないんだ?」
串刺しという言葉が出てくるところが傭兵っぽい。
「串刺しにしたことなんてないもの」
「いやいやいや。ヒノメールの前の家にいた荒らしてきた傭兵の怪我に、穴の傷あったぞ」
彼があの時にいたかどうかなんて覚えてない。
とにかく夢中だった。
「なら自業自得の末路。はりつけなんて優しい対応だったわね」
うっそりと笑うヒノメール。
下手したら、こちらが先にやられてしまうような無法地帯になっていた。
「ん、またいる」
彼はもう一組の集団を見つけた。
「それにして、もどうやって森にいるとわかったんだ?」
第六感。
「スキル所持者の、スキルのせいかもしれないわね」
スキルについては、調べたものの、人によるという言葉しか載ってない。
とてもあやふやな記載ばかり。
「スキルな。あるかもなぁ」
調べようと思っても時間がかかる。
すぐにわかるわけではないので。
人間には使えないが、人外になら使えるものがいる。
そういう、限られた使用制限のあるスキルも世の中にある。
「かちあいそう。妖精はどうだ」
「同じ方向よ」
「ん、りょーかい」
団員の彼は顔を引き締めて、ばっちりと相手とぶつかることを前提に歩む。
それについて行くのみ。
「お?お前らもそうか?」
「そう、とは?」
会っただけで会釈すればいいのに、話しかけてくる彼ら三人組。
「よせ、多分違う。行くぞ」
「へいへい」
すれ違う。
すれ違うとき、こちらを見たが顔は向けなかった。
「今の、質悪い」
「私でもわかるくらいにね」
過ぎ去った距離で会話を再び。
やはり、質が悪い。
二組とも。
「妖精っぽい」
「探し回ってるみたいね」
「あー、運悪い」
「見つけてしまったら、さっさと契約すればいいのよ」
その間にエイヤーって襲われないか?などというがその時はこの槍でのすだけ。
「エイヤーとなるのはこっちよ」
さらに進むと妖精が近くにいると、木の幹を示すキツネ。
「キツネさすが、帰ったら、キツネの好きなやつあげるぞ」
「キュン」
「よきにはからえと言ってるわ」
「今のお前の状態で翻訳されたら、全員高飛車になるの!?」
やり取りをしながら、幹を軽く叩く。
「交渉しにきたわ。ここの彼があなたの粉が欲しいのですって。交換するものとしてお菓子を持ってきたから返事をくださるかしら」
「躊躇なくするところは、素直にすげーよ」
人外にぶつかり具合で行く女にはわわ、となるが元々人外に囲まれているからこそ、慣れている。
やってみなければわからないのが、人ならざるもの。
ひょこっ
出てきたのは人を小人にした姿。
ちんまい。
妖精はオドオドしながら、お菓子を見て嬉しそうにしている。
彼は粉を入れる袋をそばに置いていたので、そこへ入れてほしいと頼む。
「!」
妖精はサラサラと光る粉を袋に入れると、お菓子を消して姿を消そうとくるりと回る。
「見つけた!捕まえろ!」
「知ってたのよ!こそこそと!」
妖精に気を取られているやつらの道具を、槍で弾き返す。
ビリビリと、やつらの体へ走るもの。
「ぐ、があああああああ!」
「ぎゃあああ!」
「くそ!」
一人道具の範囲外になった者がヒノメールらに剣を手に向かってくる。
「うっとうしいっ」
ひらり、と避けた瞬間、モモンガが口から高速発射させたものに相手の額がへこむ。
「かっ」
悲鳴を上げる前に、相手の男は意識を落とされた。
「ヒノメールつええ」
工学発明家の彼は、驚きに目をぱちぱちしていた。
「たわいもないことよ」
手には飛び道具と思わしきもので、ビリビリとなって倒れている者たちに向けていた。
起き上がって、再度やられてしまわないようにだ。
ヒノメールは三人組をキツネが出したロープで縛り、モモンガに持たせる。
「え、なになに?」
「街まで飛んで連れてってくれるのよ」
「え!?重量的に無理が」
モモンガはキュッフ、と手を振りふわりと浮くと三人組をあっという間に連れて行く。
「えーっ、なに、えっ」
もっとゆるりとした飛行なのかと思いきや、あれは空を飛ぶというより、吹き飛んでいくといった速度。
「二体体制だったのはこのことを考えてなのね。やっぱり頼りになるわ」
ヒノメールともう一人の彼は見送ってのんびり帰った。
もう一組はすれ違わなかったので、何もしないままだ。
無事、街に着いた二人は傭兵団のある建物に入る。




