25傭兵に資格
はしたないとかではなく、単に味わって食べたくなったからだ。
歩いて食べるのも美味しいだろうけど。
「じゃあ、飲み物を買ってくる。どの味がいい」
「ルッブルがあればそれで。なければバイナハで」
ルッブルはさっぱり系、バイナハは柑橘系の味がする。
お肉に合うものにしておいた。
彼も頷く。
傭兵団のリーダーに頼むなどできないと普段ならばいうが、誘ってくれた人との問答も無粋かと思ったのだ。
次に聞かれたら、遠慮してしまいそうではあるので。
「ああ。待ってろ。知らないやつには付いていくなよ。祭りは不特定多数が来るからな」
「あはは、そんな年齢ではありませんよ。冗談でもちょっとびと、え?あの、嘘ですよね?あ、あの」
笑い飛ばそうとしたらスタスタ買いに行ってしまったので、本気で注意を受けたのかもしれない。
ノイスが戻ってくる。
お肉は半分残っていたので、受け取り喉を潤す。
「ありがとうございます。口の中がさっぱりしました。このジュースとっても美味しいですね」
「毎年果物屋と飲み物屋が、手を組んで共同開発してるらしい。毎年ちゃんと改良してるから年々ウマくなってる」
「すごい熱意です」
「ああ。この国のトップがそういう考えを推奨してるから、国民も習ってやってる」
初耳なことを知る。
この国で生まれる民は学校に通うことが義務付けられているらしい。
九歳から十四歳まで。
もっと長く、専門職を学べる制度もあるらしい。
「ノイスさんは傭兵なんですか?」
「傭兵っていっても国兵でもあるしな。資格を得てやってることだ」
「傭兵に資格……?」
一部地方でも、学校に通えない土地があれば出張扱いで学業を教えに行くらしい。
傭兵はそういうことをすることも、あるらしい。
「私……特に資格とか貰ってないですね」
「一応、お飾りの褒賞は貰ってるだろ。爵位を上げるのは断ったらしいな」
「それは。だれでも断りますあんなの」
思い出すだけで胸がムカムカしてくる。
(あんなの!)
位を上げると言っていたが一代限りで男爵にすると言っていた。
が、よく聞けばそれは、またヒノメールを使いたい人達の為のもの。
爵位を盾に男爵なので断れない爵位を持つ、ごうつくらがこちらを体良く雑用にするためだけのお飾り。
それに、位をあげてもあげなくてもどうせ彼らは、ヒノメールを使おうと企んだりする。
それがすぐにわかったから辞退したのだ。
せめての抵抗というより、ただ休みたかった。
もう縛られず、あんなところに行かなくてもいい身分になったのだ。
ノイスが声をかけてきたことにより、ハッとなる。
いけないいけない。
過去へ飛んでしまっていた。
「すみません……当時の怒りが思い出されてしまい、回想があれこれ、ぐるぐると走ってました」
「走ってたのか。お前には不本意だったろう。怒っていいんだぞ。次にやつらに会うときは、敵だ。ゴホゴホの再起不能にしてやれ」
「……それもそうですねっ!」
喜ぶヒノメールに頷く男はやはり傭兵なので、特に違和感なく彼らをボコボコにする計画を話し合った。
ヒノメールとしても、会ったら絶対に正義の名の下に鉄槌を下してやりたい。
次の出店はどこにしようと話し、ならばおれのおすすめを教えると彼が教えてくれる。
連れてこられたのは品が置かれたブース。
そこには、顔に付けるお面というものが売ってあり、色んなものがあった。
どれもこれも、知らない顔ばかりだが。
「すごく独特な空気があるものですね」
「こういうものに付属した曰くつきの怖い話も、あるにはあるな」
「また今度でお願いします」
「夜中に主催するコアな集まりがあるから、そっちの方がいいか?」
「うーん、お願いします」
「怖がらないのか。さすがと言っていいものか」
彼が悩むようにこちらを見る。
「とても現実的な恐怖を毎日感じていたのに、もうそんなことに恐怖を感じる感覚が、薄くなったんですかねぇ」
「いや、悲観するな。また戻ってくるかもしれねぇだろ?まだまだあのときならそんなに時間も経ってないんだしな」
「慰めさせたようですみません。そんなつりはなかったのですが」
「いや、そういうことはドンドン吐き出していけ。うちのカウンセラーもそう言うに決まってる」
「傭兵にカウンセラーとは、設備が整ってますね!」
「考え抜いて設立したからな」
自慢している声で、すごく嬉しそうだった。
「私の身の振り方も、そろそろ考えねばなりませんね」
「……それについて、提案があるんだが、今いいか?」
深刻な顔で問いかけてくるので頷く。




