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17くどいてない

かけてこなくていい。


今ではなく、さらわれる前に助け出してほしかった。


ちょっと恨めしい。


「はあ、戦闘をする時の性格が緊張で出てきてしまったのです」


「ああ。あの」


彼は理解し終えた顔をし、にやりと企む悪戯な目を光らせる。


「ぜひ、見たかったな」


「見なくていいですっ」


「だがな?お前は命令口調で靴を作れって言ったわけだろ。おれのことも戦場にいた時みたいに、罵ったかもしれないんだろ。惜しいな」


惜しくない惜しくない。


同じく外にいた魔動物たちが、早く仕事に行こうと話しかけてくる。


「ヒンッ」


魔馬がパカリと蹄を鳴らす。


落ち込んでいる時間はなさそう。


立ち上がる。


ノイスはこっちだと案内してくる。


どうも、と心にもないことを言う。


もう少し後になれば本気でありがたいと思うかもしれないが、今は無理。


レンガ調の街並みを行く面々。


花が植えられた鉢が窓の近くに飾られている。


さらに上を見ると洗濯物が吊られて、風にはためいていた。


その下にもう一度目をやると、ノイスがいる。


彼は目が琥珀色、髪は黒寄りの翠。


首の横に特徴的なホクロ。


近くで見ないと分からない。


鎖骨の近くなので、服によっては見えなくなるだろう。


「ノイスさん、目の色が珍しいですね。飴みたい」


「くどくには、色々足りないな」


「いえ、くどいてません。雑談ですよ。会話の内容を聞いてました?」


目の色を言っただけなのに。


しかも、今は昼間だ。


くどくわけがないでしょ。


目を呆れにふんわりさせた。


「その発想から離れてください。すぐに。とくに私との会話は」


キツく言うが、彼はカラカラと笑う。


「それはなかなか難しいな。おれはこういう性格だから」


「性格ではないです。あなたは真面目だし、切実ですよ。傭兵としてはとつきますが」


「くく。褒められているのか?」


「それはノイスさんの感性によるのでは。私は褒めてますし」


笑うヒノメールに微かに、ノイスの瞳が今まで見たことのない感情を見せた気がしたが、いつもの男を知らないので気づくことはない。


「この街に連れてきてくださって、ありがとうございました」


「突然どうした。出ていく予兆じゃないよな?」


「あ、出ていかないです。ノイスさんは話せる時と話せない時の差が開き過ぎて、話せない時は全く話せないので。今のうちに言っておかないと、と思いまして」


「そうか。いや、それだけなら別に気にするな。黙って出て行かれるよりは、言われた方がいい。出ていきたくなったら言えよ」


それは、自分に構いすぎなのではないかと穿った見方をしてしまいそうになる。


なにか別の思惑があるんじゃ?と。


合っても、おかしくない肩書きを持つけれどね。


「この街で安定的に暮らせるようになれば、永住するつもりです」


決めていたことをはっきり伝えておく。


この国に来るように誘ってくれた恩人には伝えておかないといけなかったのだと、気づく。


とは言っても、今の今まで言語化できる程の永住理由がはっきりと決まっていたわけではないので、キッパリ決めるのはさすがに無理だった。


魔動物たちと街の相性もまだ分かっていない。


いくらヒノメールの相性がよくても、家族の相性が合わなくては、街を決められない。


なにもなければ、の話だ。


なので今の所、のことを言っておいた


「それならいいがな」


彼は少し思案している顔で、歩みを進める。


「ここだ」


二人と魔動物たちが辿り着いたのは民家。


他の民家と変わりない、民家だった。


「あの、民家なのですか?てっきり民間施設や、どこかの大きな庭などを想像してました」


「最初はこんなもんだろ」


「そうなんですね。分かりました」


依頼や、その他のことを知らないまま着いてきた。


彼がそうだというのなら、そうなのだろう。


依頼をこなすという感覚をまだ知らない自分にどうこう決めつけるのは、時期尚早だった。


改めて服装を確認して、変なところがないかを手で触る。


髪は、変ではない。


一般的だ。


ヒノメールの髪は赤色がかった茶色の色彩で、両親の血を感じさせる。


この髪色も祖国からすればよくある色。


手櫛で整えてその家へさらに近付く。


前にノイスが止めた。


「待て待て、そういや店しか行ってないから呼び鈴のこと知らないか。これを指で軽く押すんだ。ベルの模様が描いてある、ここな」


説明されて、その該当場所をみやると、確かに広場の建物に付いているベルとよばれる芸術作品に似ている。


あのベルを見た時、あれはなんだろうと見上げていると、近くにいた人が親切にあればお昼休みを教えてくれるものだよ、という。


そのベルに似た模様が描いてある四角いところを軽く押す。


後ろに小さな鳴り物があったらしく、ちりんと聞こえた。


「わ、可愛い……私もこのベル、買おう」


独り言で、思わず呟く。


小さなベルを付けるなんて、この街の家はオシャレだ。


「はーい」


パタパタという足音と、若い子の声が聞こえる。


玄関扉を開けて出てきたのは、おさげ頭のえくぼが特徴的な女の子。


「あ、ノイスさんだー」


まだ年齢的に10歳もないかも。

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