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13イメージが違う

そんな秘密はない。


とくに怖がらなかったら、いいだけなんだから。


それにしても王子と姫から逃げるために遠いところに来たものだ。


自分で自分を褒めるスタイル。


魔動物たちは、それぞれ寛ぎ、ヒノメールはそれを眺めてこれからどうしようかと考える。


「ちょっといいか」


ブラッシングを終わらせたヒノメールのところへ傭兵たちが話しかけてくる。


別に自分はいつでもよかったのだが、存外、気を使ってくれているらしい。


「はい、よろしいですよ。質問ですか?年齢はとくに聞かれても構いません。好きな食べ物はノラクラの果実です」


「ノリノリで答えてる!?」


「すっげえ答えるな?」


「ノリいいぞこの子」


ノイスをトップにしている人たちは傭兵という職でありながら、話ができるタイプの人たちである。


祖国の王子バラトとエカチェとかいう女は、王族でも人格がおかしいので、肩書きなどクズ札である。


「なにか、変でしたか?」


傭兵たちはノイスから紅妃または、軍妃、だと聞いていたので、ギャップに驚きながらも。


小規模であろうとたたかいに女一人しか居ないのだから、仮面姫の虚勢を貼らねばいけなかったと、理解している。


「槍捌きすごかったぞ、お前」


「たたかいは好きではありません」


「ま、そうか。女の子だもんな」


(女子?女の子扱いなんて両親くらい)


いくさに行ってからは周りから無慈悲、冷徹、血の匂いがすると、言われまくった。


己が低位の爵位というのもあるのだろう。


バカにしても構わない女。


押し付けたことを忘れて、言いたい放題。


本来ならば高位、中位の爵位を持つ男がやらなければならないお仕事だったというのに。


まあ、もう関係ない。


恐らくだが、みんなして押し付け合いをしているだろう。


王子が戦えばいいのに。


ヒノメールは眠たくなってきたので質問を切り上げて寝入る。


動物たちが鉄の防衛を築いて、共に眠る。


魔動物たちを退かして起こす愚者は居ない。


タカノツメの傭兵たちは、冷や汗を流しながら同じ質問をせず、解散させた。


3日して、漸くノイスが帰ってきた。


「仲間たちと打ち解けているようで何よりだ」


楽しげに唇をにやりと上げる様は意地悪に見える。


結構世話焼きな人なのだと私にも薄らと分かる。


そう言う人が私にも居てほしかった。


是非、次の戦場では彼のような人に指揮してほしいところだ。


ヒノメールは参加しないが。


どれほど頼まれてもね。


そもそも男爵からあげてもらえなかったのもかなり不満だし。


祝賀会とかを開いたらしいが、それが楽しいのは私と家族以外。


後はだれも何もしてないくせにさらりと結構な貴族たちが参加したらしい。


買ったのではなく、引き分けだ。


祝賀じゃないだろう。


なのに、祝うことだけみんなして楽しんだ。


支援も援護も、アドバイスも矢面にも立つことがなかった人たち。


それがどれ程の不満を生むのか、帝王学を学んでないんだろう、あのアホたちは。


王子バラトと王女エカチェから早く物理的に離れたい。


親にも追加で引越しすることを後で知らせておかねば。


ノイスが合流してからは、トントン拍子に彼の国へと進み、魔動物たちを連れた傭兵の一団はすんなりと前へ進む。


軍妃とよばれていた、戦場の女貴族があまりにも平凡だったことに、みんなは驚いていたのだが、ヒノメールにとってはただのパフォーマンスゆえに、気にすることはなかった。


ついでに貴族籍もなくしてもらった方が更なる利用を防げるかもしれないなと、私はブラッシングに勤しむ。


その合間にリーダーだったノイスがちょこちょこ話しかけてくる。


やはり世話焼き体質なのかもしれない。


団員たちにとても慕われているし。


その様をじっくり、観察していたヒノメールの視線に気づいた相手は、こちらに足音を立てずにやってくる。


「なんでしょう」


「いや、熱心に見てくるからこちらこそ、なにか用があるのかと思ってな」


「とくに何かあるわけじゃないですよ。ただ、あなたがとても慕われていて羨ましいなぁと思った次第です」


「お前も自軍に鼓舞して、かなり纏められていたぞ」


「それは、性格を変えていたからですね。そうしないと身の危険があったものですから」


ため息をはくのは思い出してしまうから。


安定と安息を望むヒノメールは必死に虚勢を張ったわけだ。


苦労苦労の軍人生活だった。


「そうか。おれはこういう仕事だからなんとも思ってないが、お前はただの貴族の女だった。覚悟も責務も段違いだな。褒めるのはおかしいが、褒めてやろう」


と、やんちゃな笑みを浮かべられて苦笑。


今になってまさか己を褒めてくれる人が現れようとは。


両親は当然褒めては、くれた。


褒めたというより、軍や戦場という過酷な場所に行った私にどう言葉をかけていいのか分からないようで、当たり障りのないことばかり。


ノイスはどこか無法の傭兵とはどこか違う。


益々その違和感が強くなる。


やはり、今まで家を襲撃してきた輩とは発するものも違う。


家を襲わないのはそういう団の方針なのかもしれないが、傭兵としてのあり方というか、性格というのだろうか。

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