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12祖国

「よぉ」


3日後、待ちくたびれた顔をして扉を開く。


「様子でも見に来てくれましたか」


「村や街が寂しいことになってると思ってな」


いつ聞いても会話が嫌味っポイ。


「お陰様で閑古鳥です」


嬉しくないので、お世辞も言えない。


「おれのところに来ればもっと安心して暮らせるが?」


「サラッと宣伝しないで下さい……さすがに今のはグラついてしまいそう」


警備の人間が、最近私に用心棒を頼んでくるから余計に。


ヒノメールを一般人として扱ってくれない世間にがっかりだ。


自分とてゆっくり隠居したいのに、させてくれない国なんて捨てたくなる。


「そりゃ好都合だ」


「ですが、わたしはたたかいたくないんです。それなのに誘うなんて矛盾してないですか」


「団として誘ってはいるが、住人としても誘ってる」


住人、の意味が分からないので聞いてみるとノイスたちの団が主に活動している拠点のある街のことらしい。


住人は団と共存しているという。


「傭兵たちになんのメリットがあるので?」


「流通があると仕事も常に入ってくる。情報も集めやすく、人の信頼度が上がれば国から介入がされにくい」


「な、なるほど」


びっくりするほど特典がある。


その他にも色々オトクなことを教えてもらった。





ヒノメールたちがほのぼの話に花を咲かせている頃、頭の中に花畑を話す者たちの会話が繰り広げられていた。


戦場に借り出した原因を作った者たち。


「エカチェ」


「はい、私のバラト様」


王子と王女。


二人が隠していなければ彼女が仮面を被って指揮を取ることなど一生なかった。


「なにやら我が国で変なことが起きてるようだ」


未だ王は現在故に王子がなにか快挙を立てるのは難しい。


おかしな騒動を収めることができたのならエカチェ、正式名エカチェリーナとさらに正々堂々と婚姻し、この国でも認められる筈。


すべては愛のために。


「まあ、怖いわ」


「なぁに、またどこかの貴族が我先にと勲章がために功をたててくれるさ」


この王子は勘違いしていた。


婚約前のたたかいではだれも手を上げたわけではなく、しかたなく弱小貴族が指揮を取っただけ。


その貴族はもう隠居しているのでだれも解決しない。


数週間後、王子は机を叩く。


王女は呑気に庭で優雅に鑑賞しているからその姿を見て幻滅されることはない。


「どういうことだ!?」


いっこうに解決しない国の問題。


果ては他国が介入してこようとする。


「どうなさったの」


幻滅しない程度に怒りを感じて慰めにくる王女。


「いや、君の大切な国のイザコザがまだ収束しないんだ。困ってしまう」


苦笑を見せていれば王女は一緒に悩ましいという顔をし、ぽんと手を打つ。


「わたくし、閃きました」


「ん?なにをだい?」


かくして、お花の咲いた二人の解決策とは──。




***




──カコッ


家に付属するポストに珍しく郵便物が入っていた。


差出人は父。


見合いしろと言うのでは無かろうなと警戒。


中身を読むと母の出産が終わったので近々国を出てお披露目するという。


お前も旅行しなさいと書いてあり、副題にその理由が記載されており青筋が額に浮かぶ。


「あ、の!おはな、ばたけ、がぁ……!」


到底信じられないことが書いてあり、悪夢が現実となって襲いかかってきたのを知る。


アホアホ王子たち、禁じ手を使うなんて。


「王都に来い、だなんて……だれがいくものですか」


彼らはまた私を馬車馬みたいに働かせたいらしい。


旅行をプレゼントと言いながら紛争が起きそうな地域の旅費を負担するといい子ぶってきた。


野郎、と思わず語尾も荒くなる。


そもそも動物たちを置いていけるもんですか。


そして、ピン、と閃いた。


「バックレましょう」


もっとうんと遠い国に行けばアホなお花畑も王族も追ってはこれまい。


そうと決まれば荷物を纏める。


街の人たち用に手紙をしたためて机に置いていく。


伝えたらだれかがうっかり知られたくない人たちに漏らしてしまうかもしれないものね。


父親も父親だ。


あの人は野望を持っているわけではないが、爵位が低い分そんなにものを考えない人だ。


ぎっくり腰でなかったら死んでいたかもしれないくらいのほほんとしている。


父には手紙で違う国に旅行に行っているので帰ってくるのは5年後だと嘘を書く。


バカ正直にノコノコ行くわけないでしょ。


バカ皇子たちは私が解決すると思っているが、とんだ勘違いだ。


夜逃げはサーカスの時に決めたのだからなにも迷わない。


もう立ち向かわないという決意。


魔動物たちに行きましょうと告げる。


縛った荷物を乗せてくれたので移動も素早く移行できた。


アホどもに感知されぬようにと思いだったがいい考えだったとかなり進んだ後に満足感が胸をいっぱいにした。


魔動物たちも近場の草をもしゃもしゃと食べる。


私も私で作り置いたお弁当を食べる。


貴族兼なんちゃって軍人になっていたので闇夜に動くのが上手くなったのは経験が生きているなと思った。


淡々と進む。


着々と進み、火を焚べる。


その日は野宿。


うとうととする中、魔動物たちがのんびり私を囲む。


この空気と生活、好きだわ。


ずっとこうした生活をしたいな。


動きながら魔動物らと野宿しつつ、日常を送りたい。


「ん」


なにか背中がもぞもぞする。


「なぁなぁ」


「ん、んん、ん?」


遠くから耳に聞こえてくる言葉を受け入れるにはまだ頭が起きられていない。


「おーい、おきろー、おーいおーい」


「な、なに?」


起き上がりながらもぞりと目を起きる。


「だれ、ですか?」


目がぼやけていて、少し目を眇めると輪郭を辛うじて見定めた。


どうやら男性。


魔動物たちが騒がないところを見るに殺意はない。


(ということは私の命を狙っているわけではなさそうね)


顔に手を当てて、首をかしげる。


もやもやとしていた視界がクリアになっていく。


「……やはり、だれですか?知り合いではないのですよね?見覚えがありませんし」


眉間に自然とシワが寄る。


しかめっ面が板につきそうになっているとこちらを見ている相手が慌てて首を振り、手も振る。


怪しいものではない!らしい。


魔動物たちに近寄る時点で変だが。


彼はノイスから頼まれて派遣されたタカノツメの傭兵らしい。


見てみれば確かにノイスが着ていた服を着ている。


それにしても、そうだとしてもなぜここに?


疑問ががっつり見えていた彼はオロオロと説明する。


傭兵の彼は説明し終わると重い荷物を降ろした顔を浮かべた。


そんなに怖いのかしら……?


「ちげって……お前の周りにいるやつらがまじで怖くてもう帰りたいだけだ」


疲れた目でこちらを見る。


確かに魔動物たちは一般から見るとかなり凶悪な部類の生物。


それなら、と立ち上がる。


説得するために待つように伝えて、みんなに笑みを見せた。


すると、ずば抜けて賢い彼らは察してくれた。


「目の前で見ても信じらんねーわ」


魔動物の生態には謎がある。


通常では懐かない。


それをコントロールしているように見えるのはかなり奇っ怪に見えるのだ。


ヒノメールは友達だし、別に怖いとかないけどね。


ノイスたちからすれば恐ろしい魔物だから。


別に万人に好かれたいとかではない。


というわけで、気にせずにお世話しようとブラシを動かず。


せっせとしているとそれを見学するためにみんなが周りに集まってくる。


(確かにこれだけで、一見の価値があるよね)


彼らは最後まで見ていた。


何か好かれる秘密を知ろうとしていたのかもしれない。

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