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11事件

その11日後、雪が降る中、男は来た。


「遅くなった」


「事情は知ってます。ほら、温かい飲み物を用意しますのでどうぞ」


前回からは考えられない出迎えに男は固まる。


「なにかの罠が……?」


この人は、ナチュラルに失礼な人である。


「善意と少しの好奇心です」


ノイスは中に入る。


「好奇心とはなんだ」


温かい飲み物を男に渡しながら、困ったように笑う。


「あなたにしか聞ける方が居ないので、聞きたいことがあったのですよ」


「おれに?」


「ええ、聞くだけ聞いていただきたいのです」


別にいやならいいのだ。


ノイスは聞こうと、顔をシュッとさせる。


「実は」


サーカスのあった日について説明。


その後、男は小難しい話しを溶かすように目を閉じる。


ホロホロと溶けた態度の末、彼から教えられたのは一つ。


「お前の言うとおり、他国の密偵だろうな。しかも執行する形の暗部だろう」


「やはりですね」


感が当たっていて、かなり嬉しい。


ノイスは、ヒノメールに国に報告しないのかと聞く。


「するわけありません。私は一国民。既に貴族の義務を終えたのです」


「そんなにいやか」


「どうせ言ったら、私にすべて押し付けるつもりなのは分かりきっております」


「怒りでお嬢様になってるぞ」


「……こほん」


冷静になれ。


「そういうことですから、あなたに差し上げますよ」


「国に恩を売るには、いいネタにはなるか」


「お好きに」


こくん、と喉を潤す。


マイペースに述べると、彼は口の端をクッと上げて悪巧みフェイスをする。


こうしてみると悪い顔をしていても、整っているというのは強い。


世の中、ちょいわるがモテるらしいではないか。


「お前も気をつけろ。やつら、なにかをしてくる」


「既に手を考えてます」


「へぇ」


勿論、夜逃げだ。


だれが防波堤になるものか。




ノイスはヒノメールから受けた報告を調査し、他の街や村でも魔力のゆらぎがあったことを調べ上げ、どの国かを絞り、どこにこの情報を売ろうかと思案する。


どうせなら、軍妃の国の苛つく王族を右往左往させられるように組み立てたい。


今の王子等がぬくぬくとしているのを見ると、壊したくなる。


それは奇跡的に、二人の共通したもの。


ノイスはサーカスを広告として、使うことにした。


わざと事件を起こさせてから、それを見過ごし猟兵団に事件を解決させる。


恩も、上手くいけば太い客も手に入る。


傭兵団だと下に見るかもしれないが、国を助けたと知られれば小さなこと。




2ヶ月後、催眠にかかった領民が村を破壊するという行為に、暴徒と転じた。


ヒノメールは、既に備えていたので自分の家が襲われていても、返り討ちにあわせた。


素人が相手なら、運動にしかならない。


街人をキュッと縄で縛る。


こんなことが各地で起きているかも。


それは当たっていた。


各地でなぜか、街の人間が村を襲ったりしていたと後程新聞で知る。


なにかをしようとして、陽動を目的としているとヒノメールでも分かる。


魔動物たちに無力化だけを頼み、いつものように過ごす。


街はもぬけの殻なので勝手に食べ物を拝借。


お金を置いても必ず他のやつが取っていくのだから、相手が復帰したら払えばいいと思う。


リンゴや野菜をみつくろって帰ると家を襲撃してきた者たちが、魔動物たちに倒されていた。


おやおや、まだ残っていたのか。


意識を失っているのを確認する。


ただの親子だ。


念のためにギュウギュウに縛って小屋にホイッとしておく。


敵襲の相手に慈悲はない。


いちいちベッドを明け渡していたら切りがない。


あと、また襲われたら困るし。


そこまで催眠状態は強くないらしく、一度意識を失わせたりしたらその状態が解けるのは実験済みだ。


その間、警備の人間はどうしていたかというと、一部の人間が操られた。


どうやら非番の警備とサボって見に行った人たちと夜間の部で催眠をかけられた人たちが殆どで、警備の人たちが多勢で奇襲され怪我をして、動ける状態ではない。


残りの催眠をかけられてない、サーカスに行っていない極僅かな人たちは一つの建物に篭っている様子。


助けはしないよ?


だって、面倒なんて見られない。


私も自分の家を守るのが精一杯だし。


日夜、人の数も限りがあるので捕まえた分は減っているから、少しずつ状況はよくなるはずだが、いくら田舎でもそこそこ人はいる。


時間も我慢も試される。


ノイスに渡した情報は今どうなっているのか気になった。

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