ベランダでジュリエットごっこしてたら好きな人に聞かれてた。死にたい。
※『第6回「下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ」大賞』応募作です。テーマは「ベランダ」。
今回はアオハルです( *´艸`)
「おお、米尾、あなたは何故米尾なの……?」
何故私はあんなことをしちゃったのか。
この高校は歴史が古く、昔は女子高だったらしい。その名残が旧校舎には残っていて、レンガ造りのレトロな建物にお洒落なベランダが付いている。そこは裏庭に面していて普段は人気が無い。
今日、色々と疲れ果てた私は誰もいない場所を探してそのベランダに辿り着いた。まだ肌寒い風に吹かれていると、ふと以前見たウィキペディアか何かを思い出す。
ロミオとジュリエットのロミオ。あれって英語読みなんだって。
でもあのお話の舞台はイタリアで、イタリア語読みだとロメオなのだそう。
誰もいない裏庭。二階のベランダ。片想いの彼の苗字が「ロメオ」と母音が同じ「米尾」と言う偶然。
そして今日、結局彼に好意を伝えられなかった私は、頭がおかしくなっていたに違いない。
「おお、米尾……」
気づけば、私はその舞台で台詞を口にしていた。
そして言い終わった直後、ベランダの真下からぬっと背の高い男子が現れて私の血の気がザーッと引くことになる。
「えっと」
困ったようにこちらを見上げるのは米尾。まさかの米尾柊斗本人だった。
終わった。死にたい。
「……これ、吉井が書いたやつ?」
彼が腕を伸ばし見せてきたのは『放課後、裏庭に来て下さい』という、匿名の可愛らしい手紙。今時そんな古風な女の子がいるんだ!
それに比べ、私のやった告白はアクロバティックで斬新すぎて可愛げの欠片もない。死にたい。
「ち、違う!」
「じゃあ今のは」
死にたい。
「違う!!」
叫んでくるりと踵を返す。その勢いで持ってた紙袋からチョコが1つ落ちた気がするけど、拾っている暇はない。
チョコをくれた女子に心の中で謝り、全力で駆け出す。
死にたい。終わった。米尾にこんな形でバレるなんて最悪だ。明日からどんな顔して会えばいい?
「あっ、眞衣先輩、これチョコ」
「ごめん!」
呼び止めてきた後輩に謝って逃げようとした時、背後の階段からダン、ダン! と段飛ばしで駆け上がる音がした。
「吉井! チョコくれ!」
「よ、米尾? 何で!?」
「吉井から貰いたいから! ないの!?」
「……」
死にたい。可愛げの欠片もなくて女子にモテて演劇部でもロミオ役だった私。今日も周りからチョコを貰うばかりで米尾に渡す勇気がなかった私。
そんな私が鞄の奥に隠していたのは、似合わないハートの手作りチョコ。
「嬉しい! 俺も好き!!」
彼の弾けるような笑顔に、私の死にたい気持ちは霧散した。
眞衣ちゃんが素直に告白できなかったのは、自分が女子にモテるかっこいい系なのもあるけど、将来米尾君と結婚したら「米尾眞衣」になって、お米大好きVTuberみたいな名前だから、っていう理由もあります。
だから「何故あなたは米尾なの?」という訳でした( *´艸`)
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