18話 筆頭選抜決着
『エロゲ世界でハーレム無双』が詰まったので、こちらの方を書いていきます。ずいぶん間が開いてしまって申し訳ありません。
「『雷峰のいただきに巻く積乱雲。われは呼ぶ。大気震わす咆哮。瞬きに焼く刹那の光。黒雲裂いて大地に降り注げ、千丈の稲光』」
彼女はふたたび詠唱にはいった。しかし今度は邪魔をせず、脱力したまま見ている。
彼女の頭上には積乱雲のような巨大な魔力が目視できるほどに渦巻いていった。
それにしても一対一の戦いだというのに、隙の大きい大規模魔法なんてものを使うとは。おそらくは詠唱なしでは魔力の制御が出来ないのだろう。ゆえにこういった戦いで有効な小魔法が使えないわけだ。魔力が大きすぎるのも考えものだな。
「『ゆけ、天の怒り』…………? どうした。詠唱は終わったぞ。お前は構えなくてよいのか?」
「ああ。さすがに魔力はスッカラカンでね。遠慮せず仕掛けてくれ」
「さすがのお前も、もはやどうしようもなしか。では、終わりにしょう。次は最初から対一でやりたいな」
素直すぎる言葉に苦笑する。やはり実戦経験のない子供だな。多少なりとも修羅場をくぐって来たヤツなら、敵がいきなりしおらしくなったら警戒する。
ま、人生の先輩として訓戒をあたえてやるとするか。
上半身は完全な脱力。足元はネコ足でバネをためる。瞬間的にもっとも素早く動けるスタイルをとる。
「【千丈の轟雷】!!!」
その言葉と魔法杖の振り下ろしとともに、積乱雲は稲妻の嵐となってほとばしる。
すさまじい轟音と眩しいほどの雷光がオレを襲った。
そのタイミングを逃さず、オレは――
「――信じられん。負けたのか、私は。いったい何をした? どうしてお前が私を見下ろしている?」
オレは仰向けに倒れているベルナベット嬢を見下ろし、枝のような魔法杖を顔を突きつけている。
「さてな。教える気はねぇよ。何が起こったのか、せいぜい頭を振り絞って考えな」
考えるのも修行。簡単に答えを教えては子供は成長しないって言うしな。
雷撃が当たる瞬間、オレは体をまるめて前方に飛び退った。その衝撃で吹き飛ばされ、ベルナベット嬢との距離を詰める。あとは彼女の額に魔法杖を当てて【麻痺の衝撃】で終了だ。さすがの彼女の魔法障壁もゼロ距離には無力だった。
「さぁて。あれを見た教師陣、どう思ったか。どう見ても子供が使える手管じゃねぇしなぁ」
空にキラキラ輝く魔法鏡を見上げて眉をひそめる。
相手の魔法を利用しての返しや移動は熟練の技術。観測している教師陣には、オレに興味を持つヤツが出るかもしれない。が、まぁしょうがない。どうにも正体を隠すために負ける気は起きなかったんだよなぁ。コイツの無邪気な顔を見たら。
「…………起きれない。そうか、私は本当に負けたのだな。残念だ」
「嘆くな。実戦も含めた魔法を学ぶのが学院だろう。この負けを糧として精進しな」
「残念だが、な。筆頭になれなければ私は………」
そのまま眠ってしまった。なにを言いかけたんだか。
「うッ……」
気を抜いた途端にめまいがした。魔力欠乏だ。やっぱりあの膨大な魔力と真っ向勝負なんて正気じゃねぇな。大人として子供に教育を施すのも大変だ。
「ふうっ。さて、と。これで依頼は果たしたかな。これでいったい、どうなるってんだ」
誰ともなしに空に向かってたずねてみる。
『この学院の筆頭になれ』という聖杯の淑女からの依頼は終わった。この後はなにをさせられるんだか。
「――よくやった。魔法戦で、これだけの魔力差を覆せる者は他にいないだろう。お前に依頼して良かった」
「おわっ!?」
いつの間にやらそこに居た、ここの学院マントを羽織った小娘。されど学生じゃない。そいつこそは、この仕事の依頼人。
【聖杯の淑女】とか呼ばれている小娘だ。いや、見た目通りの年齢じゃないだろうな。オレをこんなガキに変える術を持っているんだからな。
「こんな所でなにやってんだ? ここら一帯は上の魔法鏡で見られているんだぞ!」
「いいや、見られていない。あの公爵公子が負けたあたりか。いきなり魔法鏡が不調を起こしてな。先生方が観測できんようになってしまったのだ」
「すべての鏡がか? なにかやったのか?」
「わたしではない。もしかしたら急変かもしれん。それを知らせに来た」
これを偶然だと考えるヤツはただのバカ。あの坊っちゃんが負けたあたりから異変があったというなら、答えは簡単だ。この娘に一服盛ろうとしてた教師がいたな。そいつの仕業か。
「そういや終了のアナウンスがねぇな。とにかく緊急避難場所に行ってみるか? 非常時だしな……いや」
このフィールドの四方には、何らかのトラブルがあった場合の避難場所が設置されている。そこには教師も待機しているので、そこで事情を話せばいいだろう――
――と、考えるのが普通。これを仕掛けたヤツは、そのくらいは想定している。ならば、その先には罠があると考えた方がいいな。
ならばミチルと淑女といっしょにフィールドのどこかに隠れて、教師らが探しに来るのを待つのが安全か。
オレはミチルを背負い、淑女に方針を伝えようとした。が、彼女は向こうの空を見上げたまま固まっている。そちらに妙な気配を感じて向こうの光景を見たとき、オレも同じように固まった。
「――ちぃッ! 正気か? これを仕掛けたヤツ、そこまでやるかよ!!」
「こんな子供たちにまで貴族様の暗闘とはな。支配者階級とは腐るものだな」
東の向こうの空が黒い靄のようなものに覆われている。よく見るとそれは靄ではなく、巨大なコウモリの群れだった。キィキィ鳴く声と羽ばたきがここまで聞こえてくる。それほど大量の群れだ。
そしてそれらは、オレたちを目指して真っすぐ襲来に来ている!
マズイ。オレは魔力を使い果たしてスッカラカンだ。あれをどうしたらいいんだ。




