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12話 城門外の魔法訓練

 「赤色の連矢よ、射貫け。マジックアロー!」


 シュババババッ

 赤いマジックアローは並べた石の的を寸分たがわず射貫いて砕いた。

 呪文を唱えなくても撃てるけど、今は観客がいるてまえ、あまりデキスギなことはしたくない。


 「すごいすごい! あんなに早うちなのに、百発百中!」

 「カスミくんカッコいい! 本当に初等生?」


 ヤンヤヤンヤとアリアとエイミーは褒め称える。

 しかし女の子の声援ってのは妙にこそばゆいね。

 ジジイが同じことやっても応援してくれる女の子なんて皆無だったが。


 ここは城門外の森の手前。

 此度アリアとエイミーの冒険者登録をするついでに、自分の魔法の具合を見ているのだ。

 初等生の模擬戦は、基本魔法のマジックアローの撃ち合いになるらしい。


 もっともオレは前の冒険者時代でも小難しい爆裂術式だのは覚えず、基礎的なものや少し発展させたものだけでやってきた。

 この模擬戦、あまりにオレが有利すぎないか。


 「カスミくん、本当にすごいね。やっぱりどこかで魔法を習ってきたの? それにしちゃ最初にやる魔力増幅訓練はまるでやってなかったみたいだけど」

 「その辺、お互い詮索はよそうぜ。しかし問題はやっぱり己の低魔力体質だな。もう魔力が尽きてきた」

 「初等生でここまで出来たなら十分じゃない? 筆頭にも十分なれると思うけど」

 「まぁ、筆頭はサクッとなるけどな」

 

 しかし、学生さん相手に『すごいすごいと』言われるだけの腕しかないのは情けない。やっぱり、モンスターを倒す実力を身につけないとな。


 「師匠おお!!」


 いきなりちびツインテールがガバッと抱きついてきた。


 「なんだ、どうしたエイミー。いつからオレがお前の師匠になった?」

 「今からです! カスミ師匠のカッコいいマジックアローを見て、師事するのはあなたしかいないと感じました! どうやったら、あんな風にできるのか教えてください!」

 「ああ? 学生が弟子入りとか何考えてんだ。学校の授業を真面目にやれ」

 「そうだけど、やっぱりカスミくんのは特別に見えるよ。あんな早く放っているのにすごく正確だし、威力も私たちとは比べものになんない。どうすれば、あんな風にできるのか教えてくれないかな?」


 うわっ、若い奴のキラキラ目がきやがった。

 まぁ、若いのはオレの術がカッコ良く見えるらしいが。

 

 「術式を組み放つまでを一連の流れでやるだけだ。術を出したあと放つまでに、やけにモタクサする奴が多いがな」

 「ええっ? だって狙いをだめる術式を組まないと当たらないでしょ。カスミくん、どうやって狙いをとってるの?」


 ああ、そうだった。

 この辺、オレが特別だってことを忘れていた。


 小さい頃からロクな戦闘技術も学ばなかったオレがSランクにまで昇ったのには理由がある。

 どうやらオレは天性の【スキル】を持っているらしいのだ。


 【スキル】とは、長く特定の職業なり技術なりを使い続けていると、補正がかかるようにその能力が向上することを指す。

 だが、オレのように生まれつき持っている場合もある。


 オレのスキルの名は【精密】。

 ロクに狙いをつけなくても矢だろうが術だろうが的に当てることが出来るし、集中すれば動く標的の特定の部位を狙うことも出来る。


 これのお陰で、いくつもの強力な魔物を遠距離から射貫き、結果、Sランクまで昇りつめたというわけだ。


 「オレのやり方は教えることはできん。【精密】という天性のスキル持ちだからな。お前らは授業を真面目にやれ。高い授業料は何のためだ」


 やけに頭をグリグリさせてくるエイミーを引き剝がす。


 「ふうん、カスミ君もそのスキルを持っているんだ。お父さんと同じだね。お父さんも同じスキルを生まれつき持っていたんだって」


 ヤベエ!

 生まれつきスキルを持っている奴なんざ、かなりめずらしいってのに。

 それが同一とか、もう正体バラしてるも同然じゃねぇか!


 「そ、そうなのか。そんな偶然もあるんだな。あ、オレのスキルのことはまわりには内緒な」

 「なんで? お父さんと同じスキルなんてすごい偶然、すごく自慢になると思うけど?」

 「いやいや! オレは目立ちたくないんだ。言わないでくれ!」

 「よしっ! 秘密にするから師匠になってくれ! あたし、授業よりカスミに教わりたい!」


 くっ、エイミーにまで知られたのは失敗だったか。


 「ま、たまに術を見てやるくらいはしてやる。術式の効率化なんかはできると思うし」

 「やったあ! よーし、すごい魔法師になって先生の役にたってみせよう!!」

 

 先生ってのは、当然学校の先生じゃなくマルタのことだよな。

 エイミーのやつ、ずいぶん奴に心酔してるみたいだ。

 アイツ、アリアやこんなガキんちょを手なずけて何しようってんだ。


 「なぁ、アリア。お前もあの女のために貴族様の鼻先かすめるつもりか? けっこう危険な道だぞ」

 「うん。でも、あの人はお母さんだから。それに商工会や農村の代表の人達なんかもお母さんを頼りにしているし」

 「あん? そんな連中まで貴族様につっかかろうってのか? 何があった」

 「よくわかんない。新しい税金ができるってことで、もめてるみたい」


 なるほど。新税に不満の商工会や農村の代表相手に、貴族様に物申す役をかって出たのか。

 しかし貴族様に刃向かう先頭なんてヤバイ役回りだし、それにつきあわされるアリアもどうなるか。


 「アリアはどうなんだ? マルタの……あ、いやお母さんのやることにつき合わされる事に思うことはないのか?」

 「危険な役目だってのはわかっている。でも……お母さんがやるなら私もやる。親子だもん」


 くそっ。純真な子供を親の勝手な綱渡りにつき合わせやがって。

 しかたない。こうなったらオレも腹をきめるか。

 

 「アリア。だったら、オレもつき合ってやる」

 「え?」

 「オレも共和主義の話につき合ってやるって言ったんだ。考えてみりゃ、貴族様にはオレも殺されそうになったことがあるしな」

 「本当? カスミくん!」

 「おおっ、カスミ師匠もいっしょに戦ってくれるのか! これは心強い!」

 「よかったね、エイミーちゃん!」


 ああ、やれやれだぜ。まったくとんだことを手伝うハメになっっちまった。

 それでも、エイミーと手をとって喜ぶアリアの姿を見ていると。

 久しぶりに親らしいことをしたような、奇妙な満足感を感じた。

 この作品に少しでも興味を持たれた方、お手数ですがブックマークや下の☆をタップしていただけたら幸いです。

 次回から、いよいよ筆頭選抜開始!

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