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11話 魁!! ラカン魔法学院

 クロノベル公爵家嫡男の廃嫡問題は、その家臣にとっても重大事。

 サリエリ付の家臣たちが黙っているはずもなく、貴族のやり方で問題を解決すべくラカン魔法学院の学長へ工作をはかるのであった。


 「わしがラカン魔法学院学長【ラカン・ラムカン】であーる」


 教育者という職業にあるとは思えぬほどの剣呑な雰囲気をまとった禿頭の巨漢。

 その威容な学長に対するは、サリエリ教育係の公爵家紋章官たち。

 金貨銀貨の詰まった袋を並べて交渉をする。


 「ぜひとも当家サリエリ様を今年の初等生筆頭にしていただきたい。なった暁には、謝礼はこれだけではありませんぞ。公爵家をあげて学院の支援をお約束いたしましょう。まさか公爵家を敵にまわすような愚かな選択など、いたしませんでしょうな?」

 「フフフ、わしは各方面にも話のわかる学長で通っておる。クロノベル家のご要請、うけたまわった」

 「おおっ、さすがは学長殿」


 喜ぶクロノベル家臣団。

 しかし、その喜びは十秒ほどしか続かなかった。


 「ディーノ教官、いるか!」


 学長の呼ぶ声にすぐさまドアが開けられる。


 「はっ。学長、ここに」

 「初等一組サリエリ・クロノベル君を今すぐラカン特講【屍ン嶮(しんけん)ゼミ】へ送れい!」

 「【屍ン嶮(しんけん)ゼミ】……ですと? 本気ですか。あれは高等生後期履修の荒行。初等生にやらせるなど、死んでしまうのでは?」


 ラカン特講【屍ン嶮(しんけん)ゼミ】

 それは異世界の国家で行われたという伝説の修行法『ジュケン』を模した荒行である。

 ジュケンとは、時の政府がこの荒行によって国民未成年者を男女の区別なく鍛え上げた試練であり、見事突破し合格の栄誉をさずかった者を将として召し抱えた。

 合格者には地位、富、名誉がさずけられるため、ほぼすべての国民未成年者はそれに参加したが、突破できた者は千人に一人。

 不合格者は再起不能なほどの精神崩壊を起こしてしまい、かの国は深刻な少子化に悩まされたという。

 「落ちこぼれに拾う屍なし。犬のエサにせよ」

 「合格あらずんば死あるのみ。生をつかみたくば点取りの虫となれ」

 この言葉のもと数多くの少年少女が命を落としたことは記憶にとどめねばならない。

 —―—ラカン魔法学院所蔵図書『異世界の荒行ジュケン』より。


 「グハハハッ、クロノベル家臣団の皆さまは、金銀財貨をさし出しても主君を鍛えてさしあげようとのおぼし召しだ。その心意気にこたえぬのは教育者ではない。サリエリ君の命をかけてシゴキにシゴキ抜いてさしあげろ!」


 あさっての要請うけたまわりに、家臣団は顔面蒼白になる。


 「ふっ、ふざけるな貴様らーーッ! 若に何をするつもりだ!」

 「ですからサリエリ君に筆頭となれる実力をつけてさしあげようというのです。この特講に耐え抜き生還すれば、筆頭の座は確実。さすがは公爵家嫡男、命をかけて筆頭を目指すなど貴族の鑑ですなグハハハ」

 「アタマおかしいのか、このハゲは! いいか、これは公爵家の命令だ。余計なことはせずサリエリ様を……!」


 「喝ァーーッ!!!」


 天をも割れんとする大音声。

 そのただ一声だけで家臣団は何も言えなくなってしまった。


 「顔を洗って出直してこんかい。ここはラカン魔法学院。筆頭の座がほしくば、力でつかみとれい! そしてわしがラカン魔法学院学長ラカン・ラムカンであーる!!!」


 家臣団はどうにかゼミだけはカンベンしてもらい、ほうほうの態で引き下がったのであった。



 ◇ ◇ ◇ ◇


 サリエリは、手紙にて彼付の家臣団の学長懐柔が不首尾に終わったことを知ると落胆した。


 「ヘンドリック達が学長の懐柔に失敗した。クッ、やはり実力で筆頭にならねばならんのか? なにゆえ公爵家次期当主たる僕が、冒険者予備軍などと力を競わねばならんのだ!」


 彼の側の赤毛で大柄、いかにもな貴族の子は彼をなだめる。


 「まぁまぁ。サリエリ様の筆頭就任、この三組代表のマーツィオが協力させていただきやす。公爵家とお近づきになれる素晴らしい機会ッス。存分に働かせてもらいやしょう」

 「頼んだぞマーツィオ。もし首尾よく僕が筆頭になれたら、恩は後々まで忘れない。必ずや報いよう」

 「はっはっは。そりゃ張り切り甲斐があるってものッス。ま、四組の平民も少しはやるようですが、しょせん低魔力が少しばかり器用なだけ。問題はありやせん」

 「あんな平民など問題ではない。問題は二組のあの女だ!」


 そう。魔法技能に長けた彼をしてあせらせているのは、二組代表となったある女子である。

 平民クラスには女子は数多くいるが、貴族クラスにはわずか数人しかいない。

 理由は、平民女子が冒険者のような荒っぽい仕事もするのに対し、貴族女子の役割は子を産み家庭をつくることであるからだ。

 

 「【ミチル・ベルナベット】伯爵令嬢ッスね。まったく、令嬢が戦闘魔法なんぞ習いにくるのも変だってのに、誰もかなわないほどに強ぇから始末におえません」

 「おまけに、お前のように『公爵家との縁』という素晴らしい実利になびかないときている。クッ学長といい、何故たかだか『初等生筆頭』などという一年足らずのポストを、僕に譲ろうとしない?」

 「アタマのおかしい奴はどうしようもないってこってす。ですが、ちゃんと教師にも賢い方はいるッスよ」


 マーツィオはとある教科準備室に彼を連れていった。

 そこには酷薄そうな青白い顔をした魔法教師がいた。


 「紹介いたしやしょう。おれっちの三組担任【ヘインス・ショウキー】先生ッス。先生もサリエリ様の窮状をお救いになる一助になられたいそうッス」

 「ショウスキー教諭、僕に協力してくれるとは本当か? 僕はいかなる手段をもってしても筆頭にならねばならんのだ」

 「おまかせあれ。このヘインス、高貴なお方への配慮は心得ております。模擬戦にサリエリ君の有利になるよう配慮いたしましょう」

 「それだけか? 審判に働きかけることは?」

 「残念ですが、事は学長に気取られぬようすすめねばなりません。アレが見ている限り、不正に気付かれれば『研修』という名の獄界めぐりです」


 (クッ、あのバケモノはどこまでも! 僕が公爵になった暁には、いかな手段をもってしてもクビにしてやる!)

 と、サリエリは固く心に誓うのであった。

 

 「フッフッフ、ですがご安心あれ。私の裏の人脈と、わがショウキー家伝来の暗黒魔法の力をもってすれば、初等生などものの数ではありません。サリエリ君に確実な勝利をお約束いたしましょう」


 ヘインス・ショウキー。

 彼は魔法教師という身でありながら、裏世界にも通じているたいへん危険な男であるのだ。

 その魔手ともいうべきおそるべき手腕は、模擬戦を本物の凄惨な戦場へと変えていく。


 やっぱり学園モノといえば男塾だよね。

 学園モノを書くにあたって学園漫画をいろいろ調べた結果、コレを参考することに決めました。

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― 新着の感想 ―
[一言] >『異世界の荒行ジュケン』 出版社名がアレじゃないかと確かめちゃったじゃないですか。 しかし次々と登場人物が増えていきますね。 >【ミチル・ベルナベッド】伯爵令嬢 何かありそうな人物?
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