第41話【最初の神様】その2
アメノがムスビを産んで何年も経つ。生活は未だ変わらないが、周りの環境は少しづつ変わっている。神界以外の世界が増えたり、小さな家を創ってみたり、少しづつだが変化はある。その為、ムスビに比べて飽き性なアメノも退屈はしない。
「ムスビ、もっと木を入れてくれ」
「ああ」
ムスビはそう言ってポム吉を焚き火の中に入れる。
「ホワあああ!」
ポム吉は秒で燃えるが、すぐに再生して復活した。
「変な生き物だ」
「あんまりいじめないの」
アメノはムスビに寄り添うように座り、復活したポム吉を焚き火の中に蹴り入れた。
「ホワあああ!」
「まさかこんなに大きくなるなんてね。昔はママママ言って甘えて来たのに……不思議だね〜」
幼いムスビはもう居なかった。月日が経ち、顔付きも体も大人になっていた。体格は非常に良く、身長は2m50cmはある。髪はみずらで、長い髪を綺麗にまとめてあり、髭もない。和風の服はよく似合っており、アメノが寄り添いたくなるのが分かる男前な大人だ。
「一度も言ってない」
「じゃあ今言ってみな。ママって。百歩譲って母さんでもいい」
「またそれかよ。絶対言わないよ」
「それは残念だ」
しばらく沈黙が続いた。二人はワインやぶどうジュースで乾杯し、黄昏たように夜の焚き火を楽しんでいる。
「文明を作ろうと思う。どうかな?」
突然、アメノが言った。あまりにも突然すぎるし、言葉足らず過ぎてムスビも困惑した表情だ。
「ちゃんと説明してくれ」
「歴史かな。つまり、神を増やそうと思うんだ」
「え?」
ムスビは自分でも分からない不安に襲われた。直感が武者震いを起こさせ、不安と恐怖がほんの僅か浮かび上がる。
「だから神を増やすんだよ。骨から何神か増やし、それを何らかの方法で繁殖させる」
「一体何の為にそんなことするんだ?」
「ん〜。飽きたから」
「あ、飽きた?」
「今の生活も楽しいけど、ちょっと飽きてきてさ。やっぱ終わりがないのはちょいと苦痛かな。だから変化が欲しくて」
「だからこうやって焚き火したり登山したり何か作ったりしてるんじゃないのか?」
「もっと大きな変化が欲しい。革命的な変化。そう、ポム吉や君を創った時みたいに革命的で心踊るようなドラマある変化さ」
「その先に何があるんだ?」
「歴史がある。どうなるかはやってみないと分からない」
「そう……。そ、それって絶対やるのか?」
「うん。好奇心が抑えられない。君にも見ていて欲しい」
「まあ、そんなにやってみたいなら……良いんじゃない?最悪、上手くいかなかったら文明や歴史ごと消せばいいし」
「そうだね。私にはそれが可能だ。天之御中主は何でもできる」
ちょっと不安が募るが、その時はそこまで深く考えていなかった。なぜなら、上手くいかなくてもアメノがリセットしてくれるという安心あったから。
だが、ムスビのその安易な考えと裏腹に、結果は気に入らないものだった。
*
アメノが神々を増やし、歴史を創る計画を実行してからもう何千年と経つ。神が増えてからは、予想通りに家や畑や文明が作られた。神の繁殖方法には、色欲を利用し、男女の性行為での繁殖が可能になった。
おかげで、神界は神々で溢れかえってる。
「アマノは?」
「西の街に行ってるよ。子供達の様子を見てくるとか何とか」
ムスビはもうアメノと二人で暮らす生活をしていない。アメノがどこに居るかも分からないから、ポム吉を見つけては聞くのが大抵だ。
「なら今日も会えないな」
「来年会う約束してるんでしょ?」
「してる。けど、去年は殺神事件があったり、色々立て込んで会えなかった。約束が必ずって状況じゃない」
「そんな」
「アマノは神々の神様だ。皆んなの太陽であり、居なくてはならない存在だ。俺やお前みたいにもう暇なんてない。神々に困難がある以上、アマノはその改善をしようと必死になる。上から眺めてるだけで良いのに、わざわざ一緒になって歴史を創るなんて……バカだよな」
「よく分からないよ」
「お前もバカだったな。悪い、聞かなかったことにしてくれ」
「どうやって聞かなかったことにするの?」
「お前なら多分忘れるな。いや、もういい。これ以上喋らなくていいぞ」
「しょんな」
ムスビは不満でいっぱいだった。アメノが創った歴史は、結果的にムスビからアメノを引き離し、アメノ自身も忙しくさせている。もう時間に縛られず、登山や焚き火をする日々はやって来ない。海を眺めることすら、時間を決めなくてはならない。アメノは自分が創った歴史に縛られている。
「アマノ……」
ムスビはアメノを遠くから見守るのがほとんどだ。だから、どの神々よりもアメノを知っているし、皆が見えない所も見えている。
「はあ〜」
ムスビはたまに疲れては海にやって来る。アメノが来れない分、自分が代わりに見に行くつもりで。そして、海辺を眺めて心を痛めるのだ。
「歴史のせいだ」
海は少し汚れ始めている。砂浜には神々が捨てたと思われるゴミがちらほら見えるし、自然も心を痛めているようだ。
「ムースービっ!」
「……あ、アマノ?」
海を眺めていると、アメノが背中を押してムスビの隣に座って来た。もう何年も会って話をしていなのに、絡み方は昔と変わらない。
「久方ぶり!寂しくて海に来てしまったのかい?全く私が居ないと髭も剃らないのかな?ふふっ」
「何だよ。いきなり現れて。去年も会えなかった癖に」
「今日は具合悪いって言って抜け出して来た。まあ、具合が悪いのは半分本当なんだけど」
「それでこの海にか……」
「いや、君に会いに来たの。久々にムスビと話したくて」
「気を使ってるなら今すぐ帰れ。俺はそこまで弱くない」
「何だ?拗ねてるの?私が何年も君と関わっていないから」
「うるさいな」
二人は久々に会ったせいか、気まずそうに距離を取って目線を逸らしている。しかし、ムスッとするムスビとは違い、アメノは申し訳なさそうに懐から箱を取り出した。
「君には申し訳ないことをしてるね。分かってるさ。昔の二人に戻りたいことは。確かに一番愛してるのはムスビだけど、こんだけ時が経った今、他の子供達も等しく愛してるんだ。分かってくれ。私はもう戻ることは出来ない」
「分かってるさ。俺が言いたいのは、これがアマノの望んだ世界なのか?っていう疑問だ」
「どういう意味?」
「周りを見ろよ。アマノが好きな海はその歴史に汚されている。神々だって皆が皆アマノみたいに素晴らしい奴じゃない。俺みたいな捻くれ者が秩序を乱し、皆で決めたルールを破っている。醜いんだよ。どいつもこいつも醜くて仕方ない……そんな奴が善の皮を被ってアマノに近寄ってるって想像するだけで心配だ」
「そう悪くわないで。良いとこも悪いとこもあるさ。逆に言うなら、それがあるこそ良いとこがより素晴らしいし、感動やドラマが生まれる。君もこちらに混ざれば分かるさ。妻を貰い、家庭を築いてみなさいな。絶対に分かる。分かってくれる」
怒りを堪えるように砂を握り込むムスビに対し、アメノは少し迷いながらも手に持っている箱をムスビの手に握り渡した。
「誕生日……おめでとう。ずっと祝えてなかったから」
「俺の誕生日?俺すら知らないのに、覚えていたのか?」
「君が生まれた日のことは一度だって忘れてないさ」
ムスビは恐る恐る箱を開け、中身をゆっくりと取り出した。箱の中身は、小さな棍棒と綺麗なサングラスだ。
「神器とサングラス?」
「いつも私を見ているからね。眩しすぎて目を焼かれないようにする為よ」
「ははっ。そうだな。アマノは眩しすぎるからな」
「えへへっ」
アメノは照れたように笑い、ゆっくりと立ち上がる。そして、何も言わずにムスビの頭を撫で、その場を立ち去ろうとした。
「もう行くのか?」
「ええ」
「そうか……」
ムスビは少し寂しそうに下を向き、懐から大きめの箱を取り出した。そして、それを持ってアメノの背後に立つ。
「目を瞑ってくれないか?渡したい物があるんだ」
「分かった」
アメノが瞳を閉じると、ムスビはゆっくりと箱の中身を取り出し、それを優しくアメノの頭に被せた。
「いいよ」
アメノは瞳を開いて不思議そうに頭を触る。何か被っているようだが、それが何かは分からない。
「鏡」
「……」
鏡に映ったのは、王冠のような仮面を身につけているアメノの姿だ。その仮面は、金や鉄でできており、とても神秘的で美しい。
「これから顔は隠してくれ。この仮面なら素顔を見られない」
「なぜそんなこと?」
「アマノは一番偉い立場だ。暗殺されてもおかしくない。俺と会う時、素顔で居れる為、普段は隠していて欲しい。護身の為だよ」
「ムスビが作ったの?」
「うん」
「貴方も頑張ってたのね。嬉しい。大切にするわ」
「……」
その時のムスビは、もう二度とアメノに甘えないことを誓っていた。もう二人で会おうだとか、アメノを変えようとか考えないようにしていた。自分が成長すれば良いではないか……そう思っていたのだ。
だから、アメノが幸せならそれで良かった。自分もアメノの言う通り、妻を貰い、家庭を築こうと能天気に思っていた。
だが、そんな簡単ではないのが神や人間だ。心はそこまで算数的じゃない。
ここから、ムスビは今以上に苦しむ。そして次第に次第に近づいて行く。エンヴィーという嫉妬の邪神に……。
私は小説が読むのが苦手です。
文字だけで想像し、物語を汲み取るのが苦手なんです。
だから本を読む時、一回読んで理解出来ることはほとんどないです。
私は漫画が好きなので、絵さえ書ければ漫画家を目指してました。
しかし、今目指してるのは小説家です。
絵が書けなかったこと、書かなかったこと。小説を書く習慣が付いたこと、その全てを運命だと思っています。
きっとこの先も小説を読むのが苦手で、下手くそな小説を書き続けるのでしょう。
けど、下手くそでも面白ければいいんです。
私は小説の書き方も適当で独学です...。小説の書き方を学ぶ為だけに専門学校に行くか迷うくらい下手な文書でしたが、時間と量がそれを解決してくれました。
もう、書き続けるしかないんです。
誰にも見られなくても、下手くそでも、つまらくても、息を吸って吐くように私は書き続ける。
もっと読者に伝わるような小説を書けるよう昇進する。
この後書きは独り言のようなものですが、一人でも多く見てくれる人が居るのならとても幸せだ。




