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ミトロジア  作者: ビタードール
一部】二章『愛を知らない神様』
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第40話【最初の神様】その1

 遠い遠い昔の記憶が蘇る。まだ歴史のない歴史の話。


「いや〜、疲れたね」


 アマノとそっくりな女性は、大きな山を登り切って疲れたように座り込んだ。そして、山から見る景色を眺めて清らかな表情で微笑んでいる。


「わざわざ歩いて登るなんて……飛べばすぐなのに」

「ムスビにもいずれ分かるさ。私がわざわざ歩いて山に登った理由が」

「アマノの言うことは大体分かるさ。その理由も予想がつく」

「フフッ」

「何?」

「アメノ」

「は?」

天之御中主アメノミナカヌシ……だからアメノ。ポム吉だってちゃんと呼べてる」


 アマノにそっくりな女性――アメノは、そう言ってムスビを小馬鹿にするようにデコピンをする。


「アメノ!」


 山を登ってきたポム吉が、嬉しそうにアメノの胸に飛び込む。アメノも親のような微笑んでポム吉を撫でる。


「ぺちゃ!」

「「……」」


 だが、ポム吉が胸に顔をスリスリしたことで、アメノ

 とムスビの表情が真っ暗になる。


「ぺちゃぺちゃ!」

「おい……エロ吉」

「ん?」


 当然、ポム吉はアメノに蹴り飛ばされて山の頂上から吹き飛ばされて落下して行く。


「ホワあああああ!!」

「けど、どっちでも同じだ。アマノもアメノも」

「そこは別にいいんだけど……ふふっ。赤子の頃から変わってないなって。昔間違って覚えて、それが今も直らないのが何だがおかしくてさ」

「ふんっ」

「けど、たまには名前じゃなくてお母さんって呼んでも良いのだよ?」

「いや、いい」

「母上でも母様でも、なんならママでもいい。ちょっと試しに呼んでみてよ」

「いや。それに、そのお母さんって何だよ?アメノのあばら骨から生まれたからか?」

「私がそう呼んでるだけさ。私らのような関係を親子だと。君は私にとって子供だからね」

「アマノ親って感じしない。アマノはアマノだ」

「……そうだね。私もそうだ」

「どっち何だよ」


 これがアメノとムスビの日常だった。三つの命しか生きないこの世界で、穏やかで刺激のある楽しい生活をする。こんな幸せはない。


「なぜ俺を作ったの?」


 ムスビはふと疑問を口にする。すると、アメノも不思議そうに首を傾げ、誤魔化すようにニコッと笑う。


「わからなーい!ははっ!」

「誤魔化さないで教えてよ」

「……私と同じ存在を見てみたかった」


 アメノは一瞬ムスビの方を見て、すぐに穏やかな表情を見せる。


「神を見たかったってことか?」

「まあ、そう。私の最初の記憶は、ポム吉に胸をぺちゃぺちゃされてる記憶さ」

「最低最悪な記憶だ」

「今のは嘘よ」

「……」


 ムスビは途中途中引きたような顔で聞いていたが、話自体は興味があったのでしっかりと聞いていた。それに、アメノが淡々と話してくれるのは珍しい。だからこそ静かに聞いていた。


「前も言った通り、最初は私以外何にもなかった。そう、何も。世界も時間も空気も……私の体も感情も」

「じゃあどうやって?」

「器を作ったわ。最初に作った器は光」

「光?キラキラ輝く、今俺たちの視界に入ってるこの光?」

「そう。これが最初の私の器。次第にその器に飽きて、色んな器を作っては試し、器を乗り換え続けた」

「……どれくらい?」

「時間にすると一億年。回数は三千百四十一億五千九百二十六万六千五百三十五回」

「……とにかくたくさん?」

「たくさん。飽きては変えて飽きては変えた。そして最終的にこの器が気に入り、この器を神と呼んだ。ちなみに、飽きずに使って一万年以上。最高記録」


 ムスビが知ってるアメノはいつもいつも明るくて太陽のような存在だ。だが、今静かに会話してるアメノは月のように穏やかで、どこか寂しそうにすら見える。

 だが、こんなアメノを見るのは初めてではない。


「じゃあ、今までの器は無駄だった?」

「やっぱ分かってないじゃない」

「え?」

「私が山を歩いて登った理由」

「関係ある?」

「あるさ。この世の中に無駄なことなんて一つとない。山を歩いて登らないと山の中は見れないし、どんな植物があるかも分からない。やっぱムスビは飛んで山を見るように、上っ面だけを見て理解してるよ」

「そんなこと……ない」

「そう?まあ良いけど、とにかく無駄ではないよ。色々な器は今でも使われてる。植物や石ころ、火や水や風、全て今まで私が器として試してきた物だ。一億年の無駄に思えるような時間が今を創り出してくれてる」

「何となく分かる……理解も共感もできる」

「流石ムスビだ」


 アメノは再びムスビの頭を撫でる。ムスビは変わらず無表情だが、気分は悪くない。


「神という器を得てからは脳や心臓と言った体のシステムを作り、それが正常に働く環境を作った。そして、やっと思考と感情を手に入れ、そこから世界を創造した。そして思考と感情を持つ命を誕生させた。これは革命的だった」

「それが俺?」

「違いまーす!ポム吉でしたー!」


 月がいきなり太陽になって、ムスビは目を細めて軽く笑った。その時、変な安心感すら覚えている。


「ポム吉は最初に作っただけあってマヌケだった。覚えてもすぐ忘れるし、感情は喜怒哀楽の喜と楽に偏っている。一緒に居て愉快だけど、胸を触られて違和感を覚えたよ」

「違和感?」

「ちょっと感じちゃったのだ」

「感じッ!?やめろよそういうの!」


 ムスビは顔を赤くし、気まずそうにして目を逸らした。一方、アメノはちっとも気にしておらず、恥ずかしがるムスビを不思議そうに見た。


「いや、これが本当。その後ペチャって言うから自分でも分からない怒りに苛まれるけど、実際悪くないのさ」

「……聞きたくなかった」

「でも、それが君を創る最初の原因だった」

「え?何言ってんの?」

「試しに私の中に欲を付け加えた。七つの欲だよ」

「前言ってた。食欲とか睡眠欲とか」

「それは三大欲求。七つの欲は、傲慢、憤怒、嫉妬、怠惰、強欲、暴食、色欲。この欲は良くも悪くも私を変えた。感情を大きく動かし、喜怒哀楽が激しくなった。一見、この欲は足を引っ張るように見えるが、そうでもない」

「どう言うこと?」

「この欲が我々の原動力になってくれてる。君を創る理由なんてそれさ」

「どれ?」

「さっきポムちゃんの話をしたね?私のその妙な感覚は色欲を生み出した。すると、不思議と私一人では満たせない。色欲の原点は愛情であり、それを育む相手が居ないと成り立たない。ポム吉はその相手には不十分だった」

「そ、それで俺を?」

「性別を作ったのさ。私は自らを女とし、自分の骨から男であるムスビを創った。今はまだ成長段階だが、それでも悟ってしまったんだよ」

「何を?」

「君に対する思いは、色欲とは関係ない。自ら育てたせいか、不思議とエッチな気分にならないのさ。寧ろ逆で、とても清らかな気分にさせてくれる。S極とN極のように惹かれ合う男女だったはずなんだけど、計算と違う形になってしまったんだよ。本来なら私と君は裸で絡み合ってる」

「恥ずかしいからやめて……」

「けど不思議とそれを拒む。行き過ぎた接触を拒んでるんだ。そう、ポム吉にぺちゃって言われた時みたいに嫌悪すら感じてしまう。だから私と君の関係に親子という言葉を使ってる」

「じゃあ色欲は満たされない?」

「これも不思議。君と居るとその欲は蒸発するように消えていってるんだ。変だろ?妙だろ?」

「分からない。俺はアマノ程考えれない」

「そうか……そうだね」


 アメノは詳しく教えてくれたが、ムスビはどうでも良くなっていた。自分が創り出された理由を聞いたのはムスビ本人だが、次第にどうでも良くなり、ただアメノが自分を必要とし、愛してくれてることが嬉しかった。

 それだけで満足で、疑問は一切なかった。例えこの感情すら作り物で偽物でも、幸せと感じるならそれで良いのだ。過程を大事にするアメノと違い、結果良ければ何でも良かったのだ。


 * 


 アメノが一番好きな場所をムスビもポム吉も知っている。それは、透き通った青が輝き、何の汚れも見せない素晴らしい場所。


「……」


 海だ。砂浜はとても温かく、冷え切った素足に体温をくれる。海の音は心地よく、海の青はアメノの隠された心を写してるようにも見える。視界に入りきらない光景だが、その中央には美しい女性が髪を靡かせている。

 女性――アメノは、パイプタバコをふかし、グラスに入ったワインを優雅に飲んでいる。近くにあるワイン瓶の数を見るに、相当長い時間居たのだろう。

 そんなアメノを遠くから見るムスビは、かれこれ一時間そうやって突っ立てる。そう、アメノがこの海とタバコとワインを好むように、ムスビもそんなアメノを誰にも悟られずに眺めているのが好きだった。

 海を見るアメノが何よりも美しいと思うし、何よりも好きだし、何よりも愛しかった。


「アメノー!」


 しかし、毎回その時間はどこかで壊れる。ポム吉がどこからかやって来て、静かに靡かれるアメノに抱き付く。アメノも無言でポム吉を撫で、隣に座らせてタバコを吸わす。


「ゴホゴホ!ホワああ〜」


 ポム吉はタバコにむせ、その場にくたばる。アメノはそれを見てクスッと笑う。そして、やっとムスビに気付いた。


「やあムスビ!またそこに居たの?全くとんだストーカさんだね」

「……」

「おいで!一緒にワインやジュースを飲もう。君の為にぶどうジュースを用意してるよ」


 アメノに誘われてようやく動いた。ゆっくり歩いてアメノに近付くおよそ30秒間、これほど胸がざわめく瞬間はない。


「何やっての!遅いよ!走っておいで!ほら!今なら特別大サービス!」


 アメノはそう言って両手を広げ、ムスビが飛び込んで来るのを待っている。しかし、ポム吉はそれを見て困ったように手を加える。


「それ毎日言ってる気がするけど、一度も走って来たことないよ」

「毎日やって来ないんだ。これからもやり続けないと絶対来ないさ」

「なるほど……全然わかんないや」


 ポム吉はそう言って諦めたように砂場に座り込むが、遠くのムスビを見て表情を変えた。


「ッ……」

「ッ!」


 ムスビが下を向いたまま走って来る。これには、アメノも驚きを隠せず、数秒表情が固まってしまう。だが、すぐにニコッと笑ってポム吉を嘲笑うように目線を下ろした。


「ほらね」

「ほんとだ!」


 ムスビがアメノに抱き付いた。アメノもそれが嬉しくて、まだ幼いムスビを抱き締めたまま一回転し、海の方へ落ちて行った。


「……」

「はっ……」


 ムスビがアメノの上に跨り、お互いに驚いたような表情で見つめ合っている。だが、アメノが「クスッ」と笑うことで、すぐにその空気が消え去った。


「アハハハハハハハハ!」

「ははっ、ハハハハハッ!」

「来てくれた!初めて!」


 アメノはそのままムスビを抱き締め、海の中でも構わずに横に転がり、犬と戯れるようにはしゃいだ。


「やめろって!あんま調子乗んなよ!」

「何が調子のんなだ!こいつー!」

「おい!」

「あはははハハ!」


 二人は久々にはしゃいだ。ムスビにとっては最高最大の思い出だ。


「いやぁ〜、楽しかったね」


 そのアメノの楽しそうで寂しい不思議な表情は、幼少期のムスビの最後の記憶だ。ここまでは、とっても幸せだった。

【最初の神様】。このエピソードはその5まであり、長めの過去編です。長いのは、それ程このミトロジアの物語に大事だからです。どうかご了承を。


個人的な好みになるのですが、私は長い年月に渡る物語が大好きです。

言い方を帰ると、人生を感じさせる漫画や創作物が好きです。

つまり、ワンピースとドラゴンボールでいえば、ドラゴンボール派というですね。

誰もが知る有名漫画の2つですが、ワンピースは2年間の物語で、ドラゴンボール幼少期から孫ができる程の大人になるまでの物語になってます。

ドラゴンボールは少し分かりずらいかもしれませんが、ドラゴンクエスト5とかまさにそれです。

ドラクエ5は主人公の一生を描かれた作品です。作中トップレベルに人気ドラクエ5ですが、それが人気の由縁の一つだと思います。


ミトロジアもそういう物語です。1部と2部で主人公ジャックの年齢も変わっていますし、死んだキャラクターも沢山居ます。

私は人生をとても素晴らしい物だと考えいますが、それが言葉には出来ません。

だからせめて、創作部を通して人生という儚くて尊い美しい物を表現したいのです。

ミトロジアのテーマの一つが「人生」なのです。


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