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ミトロジア  作者: ビタードール
一部】二章『愛を知らない神様』
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第38話【エンヴィー】その3

 エンヴィーはもう学園付近には居なかった。当然のことだ。あれだけの大惨事をしでかして近くに潜んでる訳がない。


「真理の義眼」


 ジャックはドラゴンに乗りながら神器を研ぎ、戦いの準備をしている。そして、真理の義眼で手がかりを見つけたようだ。


「真理の義眼が見るのは未来だけじゃない。数秒過去を見て、お前の位置を突き止めたぞ。エンヴィー」


 エンヴィーが居たのは、被害を全く受けていない少し離れた街だった。人々が学園のある方向から出てる黒い霧を見てざわつく中、カフェで呑気に緑茶を飲んでいる。おまけに、和菓子のどら焼きとカステラ、豪勢なわらび餅を食している。


「見えた。その和菓子が最後の晩餐だ。止まるなポム吉!このまま突っ込め!」

「それじゃ店の人も巻き添いになるよ!」

「安心しろ。幸い店主だけだ。俺が誘導して避難させる。信じて突っ込め!」

「分かったよ!」


 ドラゴンはスピードを乗せてエンヴィーの居るカフェに真っ直ぐつ突っ込もうとする。同時に、真理の義眼で店の中を見てるジャックが、ワイヤーを使って店のドアを引っ張り開けた。


「なんだ?誰も居ないのに開いた。ねっ、見ましたお客さん?」

「ドアより注文だ。このわらびをもう一つ」


 能天気な店主とエンヴィーだが、店主が急にドアの方へと引っ張り飛ばされた。これには、エンヴィーも目を丸くし、直感で危険を悟る。だが、時すでに遅い。壁から突撃して来たドラゴンが、エンヴィーの腹に頭突きし、そのまま首元に噛みついた。


「和菓子は食ったな?こっからは、あんたが和菓子だ」

「ジャック……追って来たか」


 ドラゴンに乗ってるジャックは、抱っこしていた先程の店主をその場にゆっくりと下ろした。


「死にたくなくればこの場から去るんだな」

「なっ!何なんだお前は!儂の店を壊しやがって!」


 店主が反抗的な態度を見せるも、それを黙らせるようにジャックの光魔法が店主の頬を掠めた。


「ひっ!この悪魔!器物損壊罪で訴えてやる!」


 店主はそう言って店の入り口から出て行く。


「法廷でお会いしましょう!!!」


 そして、怒ったまま捨て台詞を吐いて去って行った。


「エンヴィー、あの店主はお前に言ってないからな?お前はもう時期誰にも会えなくなる」

「ガキが……しゃらくせえぇ!」


 エンヴィーの体から溢れ出た闇は、剣や動物と言ったあらゆる形状に変化してドラゴンを内部から破壊した。ドラゴンはその場に溶け、上に乗ってるポム吉とカーマも床に転げ落ちる。


「ホワッ!」

「あいつ……やはり見間違えではなかったか」


 妙なことに、エンヴィーはそんな二人を見て必要以上に驚いている。


(カーマが居ることに驚いてる?いや……視線が違う。ポム吉?まあいい、どっちにせよチャンスだ)


 少し引っかかりつつも、ジャックはすぐにエンヴィーの死角に回って大剣を投げた。反応に遅れつつも、エンヴィーはそれを弾いて一歩身を引く。

 だが、大剣に隠れていた光魔法を片目に食らってしまう。


「チッ。俺としたことが」

「構えな。あんたの神器」

「神器、暗産霊あんむすび

「俺はアマノの力を継いでいる。だからカーマのように狩られない」

「アマノ……一年前の大英雄の方か。そこまで誇るなら、とくと見せてもらおう」


 緊迫した空気の中、二人の神器が交わった。体格差が倍以上ある為、攻撃のリーチも大きさも圧倒的だ。しかし、ジャックはそれを考慮した上で攻撃を振るっている。


「なぜだ?普通ならリーチの差で先に攻撃を食らってしまうのに……ジャックの方が圧倒的に早い。いや、早いというより、読んでいる。あの目で数秒未来を見て対応してるのか」


 カーマもジャックの華麗な戦いに目を引かれている。


「俺とエンヴィーの戦いでエンヴィーの対応の仕方を学んでやがる。しかも、回数制限のある未来予知を極限まで短く使用することで使用回数を増やしてる。ムカつく野郎だ」


 全てカーマの言う通りだ。ジャックは真理の義眼を省エネモードのように使用し、エンヴィーの動きに合わせて神器を振るっている。そのせいか、少しづつジャックの攻撃が入っている。


「ちょこまか動きおる」


 二人の武具と戦闘センスには目を光らせるものがある。彫刻や絵画と同じで、一種の芸術にも見える洗礼された動きだ。戦い方は違えど、お互いの武器を生かして神器や魔法でダメージを与え合っている。


「どうした?大の大人が言い訳でもするか?攻撃は当たって初めて攻撃と言うんだぜ」

「口の減らぬガキ!こんなチャンバラに付き合ってやれるかああ!!」


 エンヴィーが放ったのは、先ほど見せた範囲魔法だ。だが、先程より魔力を練る時間がない為、範囲は半径5mといったところだ。それでも、近くに居たジャックは未来が見えてて尚、避けきれなかった。


「くっ。範囲魔法でこの威力か……。伊達に最古の神じゃないな」

「人間風情が、この俺に勝てるとお思いか?図が高いぞ小僧」

「図が高い?見下ろしてるじゃねぇか。頭悪いのか?」

「口の減らぬ男よ。黙らせてやろう!」


 片腕を負傷して不安定な体勢のジャックに、棍棒を持った鬼が襲いかかる。それは余りにも早く、無謀な人間に熊や虎が襲い掛かるよりも滑稽だ。


「かかったな。この獣め」

「なっ!」

「神器!魔漂線まひょうせん!」


 ジャックがワイヤーを引っ張ると、天井のシャンデリアが自然落下より早く落ちて来て、エンヴィーの体を拘束し、四方八方から貼られてるワイヤーで縛り上げられた。


「このシャンデリア、光系統の魔法で結界が張られてやがる。それにこの無数のワイヤー……まさか戦闘時に全て仕掛けたと言うのか?」


 あらゆる策を見破ってきた策士エンヴィーでも、ジャックの罠には気付かなかった。それもそのはずだ。


「違うな。最初にこの店に突っ込んで来た時、ドラゴンに乗りながらこの店を中心に町中にワイヤーを仕掛けたんだ」

「何だと……。ではシャンデリアの結界は!」

「店主を助ける時、店に突っ込んだ時、店主に魔法を放った時、三回に分けて仕掛けた。あんた相手に一回で仕掛けるのは不可能だからな」

「はっ、ははっ。やるな!このクソガキィ!」


 エンヴィーは血管が筋肉のように浮き上がる程ブチギレているが、同時に初めての笑みを見せている。それを見て、ジャックは危機を感じエンヴィーのトドメを急いだ。


「この世に未練を残した亡霊よ。死ね」


 ジャックはワイヤーを力一杯引っ張り、エンヴィーの体を切断しようとする。


「なっ!」


 しかし、切断されたのは引っ張ったジャックの手の方だった。ワイヤーを強く引っ張ったせいか、逆に手が切断された。しかし、それはあり得ないのだ。ジャックにとってあってはならないことなのだ。


「バカな!俺の筋力は鬼の血を引くアマノと同等だ!おまけに最大限の魔力を覆っていた!はっ!」


 それどころか、エンヴィーの方は無事で、ジャックがワイヤーを離したことで結界が解けてシャンデリアの檻から出てしまった。


「このワイヤーは魔力を乱しす神器だぞ。まともに魔力操作ができる訳ない。つまり……つまり、奴は素の肉体と素の力でこのワイヤーに耐えたってことになる!できるはずがない!あり得ない!おふざけにも程がある!」

「ち、違うぞジャック!」


 遠くからドラゴンによし掛かってるカーマが辛そうに叫ぶ。


「奴は魔力を乱された上で完璧に魔力操作をしたんだ!これがタカミムスビノカミだ!これが造化三神なんだ!魔力技術の次元が違うんだよ!ワイヤーは無駄だ!」

「なっ、何だと……デタラメであってくれよ。あの状況で魔力防御し、俺よりも精密な魔力操作でワイヤーに耐え、逆に俺の手を切断したと?そう言ってんのか?」

「そう言ってんだよ!早くファイティングポーズだ!刀持って魔力練って呼吸整えろ!前来るぞ!」

「てめーは俺のセコンドトレーナかっ!言われなくても分かってる!」

「お前も行けよ!このバカグマ!」

「ホワっ!」


 エンヴィーが痛めた体をバキバキと鳴らし、ジャックに突進してくる。そして、鬼の如く棍棒を振るう。


「ホワッ!」


 しかし、ジャックはそれを避け、カーマが蹴り飛ばしたポム吉がそれを受ける形になる。


「貴様……俺の邪魔をするか」

「しょしょしょしょんな!僕はただの可愛すぎるクマだ!」

「邪魔だ!」

「ホワっ!」


 ポム吉はエンヴィーの後ろに投げ飛ばされる。同時に、エンヴィーの視界からジャックが消える。


「何!?」

「相手が無害だと、そりゃー油断するよな」


 ジャックは転移でポム吉の元へ移動し、エンヴィーの背後を取った。だが、エンヴィーは前を向いたまま背後のジャックを手で掴み、自分の前に持ってきた。


「やはり体格差か。背後に居ても届くのか」


 カーマから見ても滑稽だった。ジャックが使える真理の義眼ももう後がない。ここぞと言う時以外は使えない。しかし、もうその時も来なそうに見える。


「くそっ」


 棍棒がジャックに振り下ろされる。しかし、その棍棒は遠くから放たれた小さな太陽によって軌道を変えられ、ジャックの顔横に当たり、その衝撃でジャックが吹き飛んだ。


「くっ……」

「また貴様か」


 太陽を放ったのはカーマだ。神器を杖のように使い、一歩足を運んだ。


「逃げろジャック。もう勝てない。これは俺が蒔いた種。俺に残された正義は、命に変えてもお前を逃すことだ」

「ほおう。正義?復讐者が正義を語るのか。何とも何とも……今夜の笑い話になるな」


 ジャックはそんなカーマを何とも言えない理解し難いような瞳で見ていた。


「なぜだ?お前は俺が嫌いだろ?いつもいつも英雄だの人間だの、難癖つけて俺を睨んで遇らう癖に」

「好き嫌いは関係ない。今重要なのは多くの命が助かるという正義だ。俺のくだらない復讐にこれ以上他人を巻き込めない。だから逃げろって言ってんだ。俺は悪党で居たくないし、死ぬなら正義を貫いて死ぬ。善悪は個人の中の物だが、俺にとって復讐以上に大切なことだ。お前みたいに利己的じゃないんだよ。分かったらさっさと行け」

「おいおい、何言ってんだ小僧。お前が一番悪人ズラしてるぞ。鏡ってものがないなら買ってやるぞ。あの世には持ってけないだろうがな……クククッ」


 エンヴィーの標的がカーマになった。お互いに先程の戦いの決着を付けようとしている。それを近くで座り込んで見てるジャックだが、何だかそれを物凄く遠くの出来事に見える。

 カーマの態度と真逆の心情は、ほんの僅かジャックの心を動かせる。


(自己紹介を聞いて、一番自己中心的な奴だと思った。なのにそんなこと考えて……そんな覚悟と正義を持って生きてたのか?実際、今捨て身で俺を逃がそうとしている)


「ジャックを連れてけポム吉!ここは俺が食い止める!」

「けどそれじゃカーマは……」

「早く行け!ぶっ殺されてえか!!」

「はい!」


 ポム吉はドラゴンになってジャックを連れて行く。ジャックは何か言う訳でもなく、ただひたすらカーマを遠目で見て、考えるようにグッと何かを堪えた。


「一度死んだのに、また殺される為にでしゃばるとは……愚か極まりない」

「死なねえよ。この肉体が消えても、俺の正義は消えない。俺が大切な人の意思を貫いたように、また誰かが受け継ぐ。だからこのカーマは死なねぇ。お前の邪悪な意思を滅ぼすのは俺の意思だ。それが俺の正義なんだ」

「全く、負け犬はよくほざく」


 まだ死にかけのカーマと、魔力操作で徐々に自然治癒してくエンヴィー。二人の決着は、すぐに着くだろう。

正直、一章の1部は適当に書きました。けど、個人的には一部が1番上手く書けたんです。

設定や伏線、適当に書いた割には上手く話が噛み合って、上手いようにストーリーが完成しました。

これって、人生においてあるあるですよね笑

例えば料理。適当に作った料理がめちゃめちゃ美味しかったり...逆に気合い入れて作った料理がイマイチだったり...。


1部の好きな所は、複数の陣営が利己的に動き、それが上手くストーリーに絡み合ってることです。

アイム、マモン、クルーニャ、ゼウス、アマノ、皆違うチームですが、最終的には上手く結末まで行きました。

2部にはそういうのがないので、それが好きな人にはイマイチかもしれませんね。

けど、私はどちらも好きです。

2部は第3勢力がほぼないので、ストレスなくシンプルなストーリーで見れます。

つまり、この作品は部によって物語の流れやお決まりが変わるということです。読者からしたら、めんどくさいですね...。

何が言いたいかというと、分かりません。

3部は1部2部どちらとも似てないストーリーの進み方をします。今書いてます...完成するの楽しみ。

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