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ミトロジア  作者: ビタードール
一部】二章『愛を知らない神様』
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第37話【エンヴィー】その2

 エンヴィーが出した闇の台風は、部屋いっぱいになるほど大きい。これを避けようとするカーマだが、向こう側に見える壁を見て逃げ場がなくなっていることに気付く。


「なっ!部屋に壁!真っ黒の部屋だから近付くまで分からなかった!」


 ジャックの位置からは、カーマがどうなっているか分からない。それでも、エンヴィーの表情と直感でなんとなく追い詰められていることを理解していた。


「次は俺だろうが、対策はできている。光魔法持ちの俺の相手ではない」


 そんな中、カーマは必死になって動かない体と疲れた頭を働かしていた。そして、この状況を突破する方法を見つけていた。


「やっぱ透過しかない。透過で台風の向こう側に行くしかないが、どう考えても魔力消費が激しい。その後こいつを倒す武器がない。それに、一時的にあの台風を避けるだけになってしまう」


 だが、その方法に納得はしていなかった。それでも、負傷した体でどうにかできるような相手と状況ではない。


「いや、一つあった、この状況で奴を倒す可能性。そしてそれは今……今がその時だ」


 カーマが取った行動は、黒い台風に突っ込むことだった。そして、向かった先は台風の目であり中心であり、そこに居るエンヴィーの元だ。エンヴィーからしたら、突然闇からカーマが現れて困惑状態……のはずだった。


「やっぱその程度か」

「何だと……」


 戦闘経験の差が物を言わせた。エンヴィーはカーマが突っ込んでくるのを予想していたのだ。待ち構えられていたカーマは、諸に振り下ろされた棍棒を喰らい、床へと叩き付けられ、そのまま棍棒に挟まれ押し潰される。


「俺を……殺すのではないのか?」


 台風が晴れた。ジャックから見える光景は、倒れるカーマと棍棒をカーマの顔に突き立て押しつぶすエンヴィーの姿。そう、勝敗が決まったのだ。


「くそっ……」

「復讐者は皆同じだ。どいつもこいつも馬鹿の一つ覚えみてえに……同じセリフと同じ感情をぶつけてきやがる。お前は一番天底的な馬鹿だ。自分の実力に見合わないプライドを持ち合わせ、それを必要以上に大事にしやがる。うんざりだぜ……お前のような奴には……」

「うるせえ!お前は必ず地獄に落ちる!俺を殺して生き延びても!いつか必ず誰かに倒される!俺と同じ意志を持つ誰かにだ!その時まで黄泉の国で待っててやる!何万年何億年何兆年経っても!必ずだ!」


 怒りと憎しみの言葉がカーマの口から鋭く吐き出された。だが、表情はまるで勝者かのようなニヤついた笑みで、少し痩せ我慢をしているようにも見える。そんなカーマを、エンヴィーはただ見下ろし、しばらくして大きなため息をついた。


「一万以上の奴が俺に勝負を仕掛けたが、半数は同じことをほざいて死んだ」


 エンヴィーが冷徹にそう言った瞬間、どこからか飛んできたカーマの神器がエンヴィーの首を吹き飛ばした。これにはジャックも驚きで、カーマもしてやったりと思い、喜びを堪えるように下唇を強く噛んだ。


「やっ、やった……カーマのやつ、一瞬の油断をついて一発で……」

「ははははははっ!ざまあみやがれ!腐れ神!何が半数は同じことを言って死んだだっ!はっはっはっは!」


 ジャックが面食らい、カーマはエンヴィーの足と体を振り払って仰向けになって大笑いした。


「更にもう半数は同じように不意打ちし、同じように笑った」


 ドス黒いその声は、愉快なカーマを絶望で縛る。エンヴィーの吹き飛ばされた首から黒い闇が現れ、一瞬にして倒れてる体と接合する。そして、首に刺さってる神器を手に持ち、容赦なく仰向けのカーマの心臓に神器を振り下ろした。


「そして死んだよ……誰も彼も……お前も……」


 神器はカーマの胸を突き刺し、ドクドクと血が流れる程ぐりぐりと傷口を抉った。そして、神器はゆっくり抜かれ、神器の先端にはカーマの心臓が突き刺されている。


「がはっ!」


 流石のジャックも動揺した。その光景が止まって見える程、衝撃的な一瞬だった。同時に、訳の分からない怒りが現れ、ジャックの背中を軽く押した。


「ッ!?」


 ジャックの蹴りがエンヴィーを軽く吹き飛ばした。防御はしたものの、エンヴィーの腕は蹴りの跡が付き、痺れてしまうほどの攻撃力だ。


「鬼の血を引く大英雄の後継者……流石のパワーだ。あんな小さな体でそれに見合ってない力持ってやがる」

「治癒魔法」


 ジャックはエンヴィーに見向きもせずカーマの心臓を移植し直し、治癒魔法で治療を行なっていく。真理の義眼で血管や細胞の細かい動きを把握しながら、高度な技術と魔力操作を駆使してる。


「そんなことも出来るのか……。不可能ではないが、普段から訓練してないと出来んぞ」


 取られた心臓を治療し、それを体に戻して復活させる。その行為は、魔法があっても技術がないと成立しない。しかし、ジャックはそれをやって見せた。


「クハッ!ゴホッ!くっ……」

「生き返っただと?こいつ……人体実験でもしてるマットサイエンティストじゃあるめーな」


 ジャックの異常性を疑うエンヴィーは、ニヤッと笑いつつ気味の悪そうに目を細める。


「一年前の奇石団撃退後、破壊された街の復興と怪我人の治療に携わた時に身に付けただけだ。一ヶ月以上怪我人の治療に手伝わされたからな……重症患者を治す時にやっとの思いで得た技術だ。数百人居て二、三人しか成功しなかったが」

「その真理の義眼あっての技術だろうが、にしても厄介な奴だ」


 エンヴィーは凝った体の骨をバキバキ鳴らし、次の戦いに備えるように体を捻ったり、軽く跳ねたりしてスタートダッシュを切る準備をする。そんな中、ジャックはカーマの状態を起こし、魔法陣から取り出した薬や水を飲ませる。


「よっ。余計な真似を……」

「じゃあ死ぬか?」

「……ちっ、貸し一だ。必ず返してやる。だからって大きな態度取るなよ」

「左足は魔法でも完璧に治せなかった。体が生命を維持するのに精一杯だから。もう二度と走ったり激しい動きはできないかもな」

「そうっ……か」


 命を取り留めたものの、カーマの体の状態は非常に悪い。今すぐにでもしっかりとした治療が必要だ。しかし、目の前のエンヴィーはそうさせない。


「来るぞ。ジャック」

「大人しく寝てろ。起きた頃には病院だ」

「奴の最後だけは、この目で見る」

「……」


 エンヴィーの魔力が極限まで練られ、空気が歪む程の気とオーラを感じる。最大まで引っ張られたパチンコ玉が、すぐ目の前にある感覚だろうか。殺気がビンビンと伝わる。


「ちっ」


 しかし、その殺気は一瞬で消え、エンヴィーもガックリしたように体勢を緩めた。


「時間か」


 エンヴィーがそう言うと、周りの真っ黒の壁や天井が水で溶けたようにドロドロになってエンヴィーの影に吸い込まれていった。そして、周りは数十分前に居た学園の階段と廊下だ。廊下では、先程と同じ生徒や先生、学園祭を楽しむ客が居る。


「時間が変わってない。あの空間とこちらの時間にはズレがあるのか」

「それがどうした。めんどくせえ。俺の復讐はまたお預け……白髪のガキのせいで予定が狂った」


 エンヴィーは仏像の手のように右手と左手を上下逆向きに向け、手の平から魔法陣を出した。そして、その手で円を描き、体をクルッと一回転させて手を叩き、左右に膨大な魔力が込められた手の平を突き出し、床を踏みつけて自分を囲う球体の魔法陣を出す。


「ふー、死ねえええええーい!!!」


 エンヴィーを中心に大津波とも言える闇が出現し、一瞬にして学園をぶっ壊した。建物は砂のように秒で崩壊し、神々もその建物と一緒に吹き飛んだ。ジャックの想定を遥かに上回った範囲魔法は、学園付近にある街まで及んでいる。


 * 


「しょんなぁ……一体何が起きたの?」


 崩壊した学園の瓦礫から出てきたポム吉が、台の上に座って周りを見渡した。神々はほとんど瓦礫の下敷きになっており、近くに居た生徒も見当たらない。見えるのは、自分が着てるメイド服と絶望とも言える景色だ。


「やはりお前は生きてたか」


 そんなポム吉の前に、瀕死のカーマを背負ったジャックが転移してきた。ジャックも片足を怪我しており、真理の義眼で周りを見ている。


「ジャック!これは一体どう言うことなの?」

「奴は俺との戦いをお預けと言った。つまり、俺が真理の義眼で攻撃を回避するのを分かってたんだ。学園や神々をめちゃめちゃにしたのは足止めか、それとも目的故か……どちらにせよ逃す訳には行かない」


 ジャックはカーマを安静な体勢で安全な場所に寝かせ、上空を見上げた。そこには、学園を見下ろすエンヴィーが飛んでおり、ゴミを見るような目をして、ゆっくりとその場を立ち去った。


「ドラゴンだ。ドラゴンになって追うぞポム吉」

「けど巻き込まれた人達は?」

「どうにでもなる。生きてる奴らに任せるんだ。俺らはあいつを仕留めに行く。それが賢明だ」

「分かったよ!」


 ポム吉は素早くドラゴンに変身し、ジャックを背中に乗っせた。だが、違和感を感じたポム吉が下を見下ろす。


「カーマ!その怪我大丈夫なの?」


 カーマがドラゴンにしがみつき、背中に登ろうとしている。それを見て、ジャックは呆れを通り越した哀れみの表情を見せた。


「見届けたいとか言うんだろ?ダメだ降りろ。まだ借りを返してもらってない。自殺行為はやめろ」

「頼む……お願いだ。奴の最後を見ないと、俺はこの先生きていけない」

「お前都合が良くないか?普段俺に睨み効かせといて、都合のいい時だけお願いしますだと?馬鹿にするな。お前最初に言ってたよな?俺のことは特に嫌いだって」


 ジャックの言葉に対し、カーマは一言も反論できない。そう、これはカーマの日頃の態度が招いたことだ。こればかりはジャックの言う通りだろう。


「分かってる。謝りはしないが、貸し、貸し二で手を打ってくれ。この先お前の奴隷にでパシリにでもなる。死ねと言われれば死ぬ。だから、だから最後のお願いだ!俺を連れてってくれ!」

「今の言葉忘れないからな。約束破ったら殺す。行くぞ」

「ああ、必ずだ」


 結局、ジャックはカーマを連れてドラゴンに乗る。

個人事ですが、最近はカフェや図書館での執筆にハマっます。

雰囲気のいいカフェに行くと、とても心地よく物語の中に居るような気がして幸せになるんです。


昨日は図書館に行ったのですが、ついつい世界の美しい場所が載った写真集や神秘的な廃墟集を手に取って見てしまいました。

その写真集を見て、物語の世界観やキャラクターがどんな場所で何をしたらいいか?などよく考えます。

最近は、キャラクターを色々なシュチュエーションや場所で戦わせることを意識してますが、これが中々難しいし、楽しい。

無我夢中に書いてると、同じような戦闘、同じような場所、同じようなスチュエーションになりがちなので、やはりイメージしながら書くのは大切だと思い知らされたこの頃です。

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