表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ミトロジア  作者: ビタードール
一部】二章『愛を知らない神様』
91/170

第33話【ラトニー】その5

 ラトニーが転移で逃げた場所は、何だか賑わっていた。何かのお祭りがあるらしく、誰も彼もがパーティー衣装を着て大きな城に向かっている。


「はあはあ、ここら辺にプライドが居るはず。早く会わなくてわ」


 もう時期死ぬであろうラトニーは、瀕死の状態でラースとエンヴィーを連れ歩く。通り掛かる神々が驚いたように瀕死のラトニーを見るが、誰もラトニーに近寄ろうとしない。面倒ごとに巻き込まれては、大事なお祭りに参加出来なくなるからだろうか。


「ら、ラスト……ラスト!」


 ラトニーは驚いた様子で一人の青年に話掛けた。青年もラトニーに気付き、足を止めて振り返る。


「やあ!どうしたの母さん」


 青年は、パーティー衣装を着たラストだ。ラースとラトニーの実の息子で、ラックとして学園の生徒を演じてる七つの亡霊のメンバーだ。


「良いところに居たわ。お願いラスト……二人を連れてどこか安全な場所へ逃げて」

「分かったよ。今忙しいから後でね〜」


 ラストはラトニーをあしらう様にそう言い、すたこらとその場を立ち去ろうとした。


「待って!急いでいるの!」


 だが、ラトニーはラストの肩を引っ張り、強引に引き留めた。瞬間、ラストはラトニーを殴り飛ばした。


「がはっ!」

「急いでいるって言ってるでしょ。せっかくの衣装も母さんの血で汚れちまった。時間も取られたよ」


 捨て台詞を吐いてその場を立ち去ろうとするラストだが、ラトニーがしつこく足を引っ張ってくる。


「それ以上俺に構わなうなら、蹴り殺すよ」

「お願い……二人を……」


 手を伸ばすラトニーは、冷酷なラストによって蹴り飛ばされる。民衆の上に着地し、軽く騒動になっても、ラストは何も知らないフリをして人混みの中へ消えて行った。


「大丈夫かあんた?」

「凄い傷だ」


 民衆がラトニーに声を掛けるも、当の本人には聞こえていない。


「何でなのよ……私が何かしたっての?ラースと違って愛情だって注いだ。グリードと同じくらい世話を焼いた。幼い頃はあんなに遊んであげた……なのに何で……。あ、あんたなんて……産まなければ良かった。神の皮を被った、あ、悪魔めっ……」


 ラトニーは身も心もボロボロだった。実の息子に理不尽な扱いを受け、今までを後悔したように涙を流す。そして、民衆の目を気にもとめず、隣に倒れてるラースに手を伸ばす。


「ら、ラース。貴方だけでも……」


 だが、ラトニーには力も魔力もない。そんな無力なラトニーの前に、一人の少年が現れる。そして、周りの民衆を膨大な魔力と殺気で威嚇し、遠ざけさせる。


「……だ、れ?」

「プライド」


 少年――プライドは、仮面とフードで顔が見えない。


「た、助かった。ふ、二人を……」


 プライドは何も言わず、気絶してるラースとエンヴィーを宙に浮かせ、両橋に止まらせる。


「あ、貴方が……貴方が私の子なら良かった」


 ラトニーはふらついたまま膝立ちをし、プライドの肩に手を置く。そして、血濡れた手でゆっくりとプライドの髪を撫でる。


「だって、貴方は本当は良い子だもの」


 ラトニーの最後の言葉はそれだった。息を引き取るラトニーは、そのままプライドによしかかり、瞳から光を失う。


「お前の子なんてごめんだよ」


 小さくそう呟いたプライドは、ゆっくりと背後を振り返る。そして、こちらを見てる一人の少年と目を合わせた。


「……お前も七つの亡霊か」


 少年ーージャックは、ラトニーを肩に乗せたプライドに尋ねる。両手に神器を持っており、魔王の羽根で警戒を高めている。


「そうだ。ジャック」

「ラトニーは死亡したようだな。もう二人もこちらに寄越せ。今回ばかりは、お前だけは見逃していい」

「俺も今回は見逃す。だから次会う時、その時に……暴れようぜ」

「断る」


 民衆が居る中、ジャックは所構わずに攻撃を仕掛ける。しかし、プライドは三人を連れたまま人混みに身を投げ入れ、一瞬にして姿を消した。


「ラトニーの位置が消えた。あいつ、呪い解除持ちか。くそっ」


 ジャックの片目に咲いている花が消えた。つまり、リベの魔法の効果が切れたということだ。


 * 


 疲れ切ったジャックは、森に居るポム吉とリベの元へ戻って来た。リベは木によしかかっており、疲れた表情で下を向いている。腕も背中も深く負傷しており、左目は魔法の影響のせいか少しシワが入っている。


「無事でなによりです」


 リベは帰って来たジャックを見て、真っ先にそう言った。自分の負傷やラトニーがどうなったかはさほど気にしてないように見える。


「俺は言ったはずだ。神や天使達を誰一人仲間や味方だと思ってないし、過去のことから嫌悪していると。それは先生も例外じゃない。なのに……なのに何でこんなになるまで俺を守った。必要以上に俺を庇って……その結果がこれだ。治療が遅れれば腕や羽根が機能しなくなる可能性もあるのに」

「……」


 ジャックの疑問に反応を見せないリベは、困ったように薄い笑みを見せる。その笑みは、死ぬ直前のアマノを思い出させるような、とても苦しい表情だ。

 ジャックは疲れた足を引きずり、残り少ない魔力でリベの治療をする。


「なぜここまでしたんだ?答えてくれよ……先生」

「……空っぽだから」

「空っぽ?」

「そう。何もない私にあるのは、教師という使命。生徒をより良い道へ導く仕事。別に好きでやってる仕事じゃないけど、それを中途半端にしたら空っぽ以下になっちゃう気がして。いや……単に変化が欲しいだけ、かな?先生もよく分かりません」


 リベの話を聞き、ジャックはアマノを失った後の一年間を思い出した。その一年間、ジャックも空っぽで何にもなかった。だからこそ、リベの背景が少し分かった気がした。


「今回は助かったよ。礼を言う」

「何が礼を言うよ。ありがとう……でしょ?」

「ふんっ」


 * 


 その後、ジャックとリベは最高神達から事情聴取され、一週間病院で待機となった。だが、その退屈な一週間もすぐに過ぎ去る。


「皆席について。今日は学園祭について話し合います」


 一週間後、リベもジャックも何事もなかったように学園生活へ戻った。


「先生七つの亡霊どうだった?やっぱ亡霊っていうだけあって幽霊だったのぉ?」

「先生表彰受けるんでしょ?今日そのパーティしようよ」


 リベがいつも通り授業を始めようとするが、ベルやアウトリュウスがそれを妨げる。だが、リベはガクッと下を向いて、やる気をなくしたようにため息をついた。


「普段の授業もそれくらい意欲的だと良いのに……」


 そして、一瞬の内にネガティブモードになる。それを見て、生徒達は察したように困った表情をする。


「学園祭の話ですよね。先生」


 気を利かせたルーナは、話を切り替えるようにリベに話を振る。


「そう。ルーナだけは良い子で助かりますよ」

「何よそれ!生徒差別だ!」

「ごめんなさい。すぐに差別するような先生で……」


 せっかく気を取り戻したリベだが、ベルの一言で再びネガティブモードになってしまう。思わず、ジャックやルーナがベルを睨んだ。


「へ、へへっ、ごめんなさい。学園祭だよね?先生」

「そう。一週間後、この学園でお祭りがあります。各学年でお祭りを盛り上げるようなお店や出し物をしてもらいます」

「それってどんなの?何やればいいの?」

「自分達で考えて下さい。今日は一日中学園祭の準備。今日中に終わらなければ、皆留年。それじゃあ」


 リベはだるそうにしたまま教室を出て行く。唖然とする生徒達は、数秒顔を見合って困った表情をした。


「あれでよくクビにならないな」

「終わってるなあいつ。投げっぱなしかよ」

「けどジャックと一緒に七つの亡霊を倒したのには変わらない」

「関係ないでしょ」


 リベに不満を言う生徒達だが、ジャックとルーナはそうでもなさそうだ。他の四人の会話を横目で見て、すぐにお互いに目を合わせる。


「そんなことより学園祭だ。どうする皆?」

「俺ちゃんパス。任せる」


 ルーナが話を切り出すも、アウトリュウスがやる気なさそうに昼寝に着いた。続いて、カーマも興味なさそうに読書を始める。


「ベル、セーレ、こっち来い。四人で考えよう」

「「はーい」」


 ジャックとルーナとベルとセーレの四人は、椅子を向け合って話し合いをする。だが、学園祭のイメージが湧かなすぎて、何をして良いか分からない。


「お店ってことは飲食店とか?それとも何か売るの?」

「クレープ屋さんとか?」

「お前が食べたいだけだろ」

「……」

「売るってなったら何?本とか魔道具とか?」

「そんなの学園でやる意味がない。売るなら俺達が作った物とか、学園ならではの物だ」

「出し物でも良いんでしょ?」

「出し物って何だよ。お遊戯か?」

「お化け屋敷とか?それともダンスでも披露する?バンドもありじゃない?皆で組む?私センターね」

「おいおい。先走るな。まとめるから待ってくれ」

「早くしてよ」

「せっかちな」


 四人の話し合いは少しづつ盛り上がり、次第にやることも決まっていった。


「メイド?」

「カフェだけじゃ物足りない。お前らでメイド衣装を着るんだ。料理は俺がやるから、お前達三人で接客だ」


 話し合いの結果、出し物はメイドカフェになった。だが、ジャックは不満そうに片目を細める。


「なぜ俺も?」

「分かってるくせに。ほれ」


 ルーナは揶揄うように鏡をジャックの前に持っていき、顔がよく映るようにする。ジャックは察したように嫌な顔をし、鏡を手で退ける。


「絶対やだ。俺は厨房で料理する」

「それじゃ人手が足りない」

「アウトリュウスとカーマのどっちか使えよ」

「メイドは女の子だ。二人共可愛さに欠ける。なッ?ベル、セーレ」

「まあ、見てみたいけど。クスクスッ」

「それに、ジャック料理得意?厨房は俺とカーマでやろうと思ってたんだけど」

「普通くらいだけど……なぜ決まってるんだ?」

「カーマは料理が趣味だ。俺も得意」


 ルーナがそう言うと、読書していたカーマがビクッと跳ねて、少し恥ずかしそうにルーナを見る。


「何で……知ってる?」

「神だからかな。と言うことで、厨房はこの二人だ」

「ずるい。それなら皆同じじゃないと不公平だ」

「じゃあ、俺もカーマも衣装を着るって言ったら……着るか?」

「まあ、いいけど……」

「よし、決まりだな」


 ルーナもジャックも納得したようだ。だが、勝手に話が進んだことで、カーマが驚いて椅子から落ちてしまう。


「勝手に決めるな。俺は着ないぞ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ