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ミトロジア  作者: ビタードール
一部】一章『アマノとジャック』
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第6話 【天.シックス】 前編

 アマノ達がバーミンガムを出て森に戻ると、二人の天使が待ち伏せしてたかのように立っていた。

 そんな天使を無視し、森に入ろうとした瞬間、天使はアマノの前に立ちはだかる。


「何か用?」

「貴様、魔界からの噂は本当だったのだな。人間の子を天にしているという噂は」


 天使の態度は、明らかにアマノを謙遜する態度だった。尊敬なんて一ミリもない。


「だから何?」

「規則違反だ。天界まで来てもらおう」

「そんな規則はないわ。それに過去に人間が神々と関わってきた事例はある」

「それは別として、重要なのは貴様が魔王を殺したことだ」

「誰がそんなこと言ったの?」


 当然のことだが、魔王を殺したのは邪神天悪の三人組だ。アマノからしたら、濡れ衣を着せられるなんてたまったもんじゃない。


「目撃者に決まっているだろう。それとな、貴様は神じゃない。そろそろ自覚しろ」

「貴方が私を神と認めないのは勝手だけど、私は純粋な神よ。申請も通っている」

「黙れ、ゼウス様を始める多くの神々がお前を神ではないと言ってるんだ」


 話が通じないと悟り、アマノは呆れた表情を浮かべる。ジャックも、目の前の天使が邪魔な存在だと確信が付き、苛立ちを覚える。


「そんなに言うなら黙る。ただし、貴方達の命の保証はなくなるわよ」


 アマノは無表情だったが、殺気はジャックを含め、この場の全員に伝わった。無意識のうちに天使達が後ずさりするほどの殺気だ。


「やっ、やはり……神殺しのアマノの異名は本当だったな。貴様は後悔することになるぞ。精鋭部隊『天.シックス』がお前らを始末してくれる」


 天使達は、隠しきれない怯えを見せて消えた。だが、同時に今後起きることに嘲笑っていた。


  *


 上機嫌だったアマノの気分は、最悪になっていた。その苛立ちは、ジャックにも伝わっていた。


「天.シックスって何?」

「殺しに関わることを全般とする天使六人で構成される精鋭部隊」

「勝てる?」

「六人全員を相手するのは流石に辛い。けどやり方は一つじゃないわ」

「そう、あと魔女の子って何?アマノは魔女の子供なの?」


 きっとタブーな質問だったのだろう。アマノは、質問に答えずに険しい表情を浮かべる。


「今日はもう寝ましょう」


 翌日、アマノは天界から取り寄せた『天界新聞』に、いち早く目を通した。

 天界新聞は、その名の通り、天界での出来事が記事として載っている新聞だ。


「天界って天使と神が住む世界でしょ?」

「そうよ」

「昨日のこと載ってる?」

「今読む……えー、天使二人、魔女の子から命かながら逃げきる。主神会議で魔女の子及び邪神天悪の三人を天.シックスが処すことに決定」

「なんで邪神天悪の三人も?」

「人間との契約をしてるから。それに協力してるデモとゼパルも同罪」

「なるほど」

「それより森の入口に誰か来た。戦闘態勢をとって」


 立ち上がった二人は、神器を構えて入口まで近づく。


「アイ.ファロン」


 光り輝く緑色の球体、この光とアマノの視覚は繋がっている。そして、その光で入口を覗く。


「誰だった?」

「あの三人、なぜこの場所が分かったのかは謎だけど」

「あの三人って邪神天悪の三人?」

「うん、私の魔法に気が付いたみたい」


 二人は、仕方なく邪神天悪の三人の前に顔を出すことにした。


 *


「何の用?」


 アマノが腕に手をまわし、少し困った表情を見せる。それに対し、デモは一瞬考え込むような表情を見せ、すぐに思い出したかのように懐から新聞を取りだした。


「新聞見た?僕達追われる身だよ」

「貴方のせいで私魔王殺しの罪に問われられたんだけど、どうしてくれるの?」

「どうしたらいい?」


 アマノは一瞬、困った表情を見せるデモを、揶揄うような笑みを浮かべる。


「じゃあ貴方が私達を守って」

「流石に六人は無理だよ、協力するってのはどう?」


 ニコッと笑うデモを見て、アマノは内心(嘘つき)と思った。


「分かったわ」

「で?いい作戦はある?」

「あるわ」


 その一言で、無関心だったアイムが耳を立て始めた。


「言ってみろ」

「戦いやすい場所におびき寄せる作戦。私とジャックがここに残り、戦いやすい場所まで誘導する。そうすれば罠だって張れるし、有利な状況を作れるわ」

「いい作戦だ。で?その場所はどうする?」

「魔界、悪魔が住んでない最果ての地で戦えば問題ないわ。確か捨てられた城や街がたくさんあったはずよ」

「よく知ってるじゃないか、確かにある」

「じゃあそうしよう!」


 しかし、ゼパルが心配そうにアイムの肩に手を置く。


「なにか心配?」

「倒し方は?一人一人が強いし、そこのジャックちゃんを囮に使うのは危険なんじゃない?」

「ジャックなら心配ないわ。魔法も使えるようになったし、ちゃんと戦える。倒し方は一対一が理想、勿論デモには二人以上相手してもらうけど」

「何で一対一?」

「噂によれば天.シックスは六人で使う強力な魔法やコンビネーションがあるの。だから引き離すの」

「尚更ジャックちゃん大丈夫?」

「その為に戦いやすい場所を作っとくのよ」


 今まで妖としか戦っていないジャックにとって、天.シックスはハードルが高い。

 そのことを分かっていても、アマノは戦いを強要する。まさに愛の鞭だ。


 *


 天.シックス対策をした翌日、さっそくアマノとジャックが住む森に天.シックスが訪れた。

 白いローブを纏った六人組の天使、彼らが天.シックスだ。


「森に強力な結界が張られていたが、破って入ってきたぞ。余裕こいて食事をしないで立て」


 天.シックスが森に侵入した時、二人はちょうど朝食を取っていた。


「分かりました。ですが魔王を殺したのは私ではありません」


 しかし、天使達は聞く耳を持たない。皆が神器を構えて、暴力で解決しようと割り切っている。


「そうか、じゃあ決めろ。天界まで付いてくるか、死ぬか」

「決めたわ、魔界に逃げる。コース.レゼン!」


 アマノは、ジャックと共にその場から姿を消した。


「追うぞ。魔法を使えば魔界に居る奴らを探せる」


 天使達も二人を追って姿を消す。


 *


 アマノ達は、魔界にある捨てられた城に転移していた。城と言っても魔界の城、宙に浮いており複雑な構造をしている。この城には、すでにデモ達が身を潜めている。


「ジャック、頼んだわよ」

「分かった」


 アマノもジャックを置いて城の中に隠れる。そして数分後……予測通り天使達が来た。


「人間の子供だけ?お前のご主人様はどうした?」

「さあね。それより鬼ごっごはご存知?あんたらが鬼で鬼ごっごしよう、それも今から」

「鬼ごっご?」

「じゃあ、十秒数えな」


 ジャックは、隠していた羽根を広げて宙を舞う。その黒くて大きい羽根を見て、天使達が表情を変えた。


「人間のくせに羽根がある!」

「魔王から奪った羽根だ!やはり魔女の子は魔王を殺した犯人だ!確信したぞ!」

「もたもたするな!追え!」


 天使達が城の中に逃げ込むジャックを追い、羽根を広げて鳥のように舞う。ジャックはスピード負けしており、徐々に距離が縮まる。


「奴も殺して構わん!魔法を放て!」


 ジャックは、飛んでくる光や雷の魔法を華麗に避けながら、飛行を続ける。しかし、数秒もすれば魔法は止んでしまう。


「何をしてる!もっと魔法を……あれ?皆どこに?」


 先頭を飛行していた天使が後ろを振り向く。しかし、誰も彼も居なくなっていた。居るのはジャックとその天使ただ二人。


「鬼を捕まえる鬼が居るのを伝え忘れていた。皆今頃逃げるのに必死だぜ。そしてあんたも俺から逃げたがる」


 飛行を止めたジャックは、天使にゆっくりと近づく。


「貴様、仲間が居たのか」

「天使を殺すのは初めてだ。神器、桃凛剣とうりんけん


 ジャックは、手袋から出した大きめの刀を振るう。だが、当然の如く天使に避けられてしまう。


「惜しかったな」

「あんたの腕、切り落とした方が良い」

「腕?」


 天使の腕はドロドロに溶けていた。液体が付着してあり、腐るように溶けている。


「刀から飛ばしたのか?この液体を」

「リオーノ.メルト」


 更に、ジャックは刀から液体の斬撃を投げる。天使はすぐに宙を舞い、距離を取るが、空中で体が爆発して燃える。


「お互い迂闊に動かない方が良い。この部屋には触れたら燃えるトラップが仕掛けてある。俺は場所を把握しているが……あんたは違うだろ?」

「動かなければ良いんだな?ならば吹き飛ばしてやる!水魔法、アクア.カッター!」


 天使が放った水は、通った場所を斬り裂いた。例えるなら切れる水の刃だ。ジャックは間一髪交わすが、水で斬り裂いた瓦礫が飛んできて怪我を負う。


「リオーノ.メルト!」

「アクア.カッター!」


 液体の斬撃は、水の刃に打ち消されてしまう。天使は次々と水の刃を放ち、ジャックに隙を与えない。


「避けきれない」


 とうとうジャックは、水の刃を受けてしまい、腕が深く切れる。そして、腕が切れた痛みのあまり、持っていた刀を手放してしまう。


「やばい!神器が!」

「水を放った起動にトラップがないのは分かった。そして溶ける液体は刀から飛ばす魔法!貴様の手に注意してれば始末できる!」


 チャンスを悟った天使は、飛行して一瞬で距離を縮めた。ジャックは慌てて拳を振るうが、余裕で避けられる。


「馬鹿め!」

「反省しないな。最初に避けた時の反省をしてたら、こんな小細工食らわなかったのに」


 天使の顔には、ジャックの血が付着していた。拳を振るった時、負傷した腕から飛び散った血が付着したのだ。

 その血は、天使の顔を溶かし始めていた。


「なにぃぃー!?血が溶ける!溶ける液体と同じ効果だ!?」

「血に魔力を込め、魔法とした」

「貴様!ドブネズミ以下の薄汚れた小僧の分際でぇ!!」

「遅せぇよ」


 ジャックは、下に落ちていた神器を踏み上げ、足で蹴り、天使の体に突き刺した。


「かぁァ!!」

「あんた達が天使だろうが、正しかろうが、俺には関係ない。俺は自分を成長させてくれるアマノの為に行動する」


 天使が地に落ちると、天使の体は爆発して燃えた。

 どうやら、落ちた場所がたまたまトラップのあった場所だったらしい。

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