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ミトロジア  作者: ビタードール
一部】二章『愛を知らない神様』
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第11話【神々のラグビー】その5

 アウトリュウスが気絶する中、カーマを筆頭にジャックとセーレがボールを奪回しようとしている。

 それを、ずっと後ろからルーナとベルが退屈そうに見ている。


「お前も行っていいんだぜ。何一つ活躍してないだろ?」

「ルーナこそ、行かなくていいの?ここに居てもつまんなそー。まぁ、あんま派手に動きたくないよね」

「それはお互い様。お前は特にだろ」

「うん。やっぱ、普通にめんどくさい」


 ベルがその場に座り込み、ルーナもゆっくりとしゃがんだ。そして、お互いに奥底を見るような横目を向ける。


 *


 ボールを持って馬を走らせるニコラスは、追い掛けるカーマをどんどん引き離す。ジャックとセーレも、ニコラスの元へ行こうと望遠鏡を取り出す。だが、転移を警戒してる北欧チームが何もしない訳ない。周りの雪が蠢き、ジャックとセーレを囲んだ。これでは、目で見て転移するアイ.モーメントも、テレポーテーションも使うことが出来ない。


「邪魔」

「壊しても壊しても雪が再生するようだ」


 ジャックとセーレが魔法を放つも、雪の檻が再生して壊しきれない。だが、カーマがアウトリュウスが置いてった馬に乗り、ニコラスを追い掛ける。しかし、ニコラスの速さ5に対し、カーマの速さ4。更には、馬はその乗り手の速さを二倍にする。つまり、ニコラスは速さ10、カーマは速さ8ということになる。普通に追い掛ければ、追い付ける訳ない。

 カーマ本人も、打つ手がなかった。


「セーレ、先に行ってる」

「え?どうやっ――」


 そんな中、雪の檻に閉じ込められていたジャックが姿を消す。セーレも、それを見てゆっくりと目を細めた。


「転移か……どうやら、ポム吉をどこかに置いて来てたのね」


 セーレの予想通り、ジャックはポム吉の元へ転移したのだ。そして、肝心なポム吉の居場所はニコラスの場所だった。


「なっ!?なんだとぉぉぉ!!」


 慌てたニコラスは、馬の上で分身を創る。そして、その分身がジャックの足止めに入る。しかし、ジャックは慌てずに分身を投げ飛ばし、本体のニコラスに飛び付いた。


「今度は逃がさない」

「前と同じ!転移したのか!?一体どうやっ……はっ!?前は投げた雪玉から妙な妖精が出て来た!まさか!?」


 ニコラスは慌ててボールを確認した。よく見ると、ボールに薄く張り付いたポム吉が居た。


「試合再開の時から、ずっと張り付いていたのか!極限まで小さくなって隠れていたのか!」

「照れちゃう!」

「返してもらう。ボールもそいつも」

「あー!やられる〜!お助けおー!」


 ニコラスは情けない声を出して馬にしがみつく。だが、ニコラスの体から複数のニコラスが現れ、飛び付いてきたジャックの手足を掴んだ。


「なっ!」

「なんてな!次はお前が俺と同じセリフを吐くんだ!ほら言え!言えば助けてやるぞ!」


 四人のニコラスに拘束されてるジャックは、体を強く引っ張られて抵抗が出来ない。それでも、ニヤッと笑ってニコラスを見下ろすように少し顔を上げた。


「俺に構ってていいのか?」

「どーゆう意味だぁ?」

「さぁね」

「ッ!?」


 ボールは独りでに動いて、雪の上をてこてこと進んで行く。そのボールの下には、必死に走るポム吉が見える。


「野郎!」

「照れちゃう!」


 分身にジャックを拘束させ、ニコラス本体は馬を走らせてボールに追い付く。だが、そのボールに手を伸ばした瞬間、追い付いたカーマの馬に馬ごと蹴られた。


「くっ!」

「ウェザー.サン」


 更に、カーマの放った手の平サイズの太陽がニコラスに直撃する。悶絶するニコラスだが、カーマよりボールを優先した。

 そして、分身を出してボールを渡す。その分身は、カーマの第二撃を警戒してボールを投げる。ボールを投げた先は、サントスの居る方向だ。


「ナイスだ!ばいばいギリシャの皆様!」


 ボールを受け取ったサントスは、ゴールに向かって一直線だ。


「やばいよ!」


 カーマの近くで、ポム吉が軽く慌てた。そのポム吉に目を向けるけたカーマは、サントスの方向へ走り出してポム吉を蹴り飛ばした。


「ほわぁ〜!!」


 それを見て、ジャックが驚いたようにカーマに目を向ける。同時に、カーマの考えを悟る。


「ふんっ」

「コース.レゼン!」


 ポム吉がサントスの元へ着地したの見て、ジャックもポム吉の元へ転移する。


「あー!このクマずる過ぎ!ぶっ飛ばすぞ!」

「やってみろ」

「そうだそうだ!やってみろ!」


 サントスが薄っぺらな怒りを見せ、ジャックとポム吉の攻撃を避けて一歩身を引く。


「どうした?ぶっ飛ばすんじゃなかったのか?」

「俺が英雄様に勝てる訳ないだろ?しかし、言った通りぶっ飛ばすぜ」


 サントスがその場に伏せた。瞬間、サントスの後ろから物凄い勢いでイアンが突っ込んで来て、ジャックにラリアットする。


「がはっ!!」

「ジャック!?」


 ジャックの喉が強く潰れ、呼吸が出来なくなった。どうみても、完全に戦闘不能だ。


「本当に大英雄アマノの天で、魔神アイムを倒した英雄か?まぁ、所詮元人間……無様な物だな」


 イアンがゆっくりとボールを拾い、ゴールに向かって走ろうとする。だが、イアンの目の前にルーナとベルが現れる。


「なっ!転移!?」


 更に、上空からセーレが降って来る。イアンはすぐに防御し、サントスと共に一歩下がる。


「シーマスとコルビンは!?ロイース何やっ――」


 イアンが背後を振り返ると、遠くに倒れてる北欧チームが目に見えた。それを見て、ゆっくりとルーナとベルを疑った。


「そこの金髪女を解放したのか……まったく泣けるな」

「これからもっと泣いてもらう」

「そうかい、なら泣かせてみろよ」


 イアンがボールを懐に隠すように持ち、体を丸めて走り出す体勢を取った。その体勢を見て、三人が強く警戒する。


「身体強化魔法……120%」


 イアンの体にヒビが入り、皮膚が硬い岩石のように黒くなり、体温も上がって蒸気が出ている。そして、我を忘れているような白目で三人を睨み付け、雪を強く蹴り飛ばす。

 三人は、イアンの圧倒的なパワーによって軽く吹き飛ばされた。三人が受身を取るが、イアンは既に近くに居ない。

 イアンが走った地面は、雪が削れて溶けている。それを見て、ベルが諦めたようにその場に座り込む。


「追い掛けるの?」

「無理だろ」

「なら、俺を……俺に回復魔法を……」


 しかし、ジャックが喉の傷を治癒魔法で治療し、立ち上がってベルにしがみついた。ベルはニコッと笑い、ジャックの首を触って回復魔法を使用する。


「ジャック、行くの?」

「勿論」


 *


 イアンがゴールするのは時間の問題だ。ゴールラインも近くに見えている。だが、それを阻止しにカーマが馬を走らせる。それも、ニコラスから奪ったもう一匹の馬も使い、二頭の馬に仁王立ちで乗っている。


「何て癖の強い馬の乗り方だ」

「ウェザー.サン!」


 カーマの手の平の上に太陽が創られ、それがイアンに直撃する。しかし、イアンの強化された筋肉と皮膚には一切ダメージがない。


「嘘だろ……ありかよ」

「無駄なんだよ!今の俺の前ではてめぇらゴミ同然だ!」


 イアンが防御を固めてタックルしてくる。その体は、一瞬数倍にも見える程の大きさで、カーマに恐怖と絶望を与えた。


「後ろならどうだ?」


 しかし、背後から聞こえた声がカーマ同様イアンを恐怖で縛った。イアンが背後を振り向くと、そこには背にしがみつくジャックが居た。


「まだ生きてたか!英雄ジャック!」

「今だカーマ!」


 カーマが再び手の平に太陽を創った。それも、先程より大きく禍々しい。だが、イアンはそれを無視して先にジャックに拳を向けた。瞬間的に手を開き、圧倒的魔力と筋力で周りの雪ごとジャックを吹き飛ばす。

 同時に、瞬時に伸ばした髪が針のように鋭くなり、カーマの手足を貫いた。


「がはっ!?髪まで……」

「後ろに居てもゴミ同然だったな――ん?」


 ジャックとカーマを蹴散らし、勝ちを確信したイアンだったが、違和感を覚えて周りをキョロキョロと見渡した。


「ボールは!?さ、さっきまでしっかり持っていたはず……。なぜか雪玉にすり替わってる。ま、まさか――」


 イアンは慌ててジャックの方を見た。その予想は大当たりだ。ジャックがイアンを無視し、フラフラの状態でボールを抱えて走っている。見た感じ、片腕が折れて使えないようだ。


「やっ、野郎!!!逃がすかああああぁぁ!!」


 当然、イアンが怒りMAXでジャック目掛けて走る。速さ5に加え、強化された圧倒的な身体能力。チーターに追い掛けられる人間以上に滑稽だ。すぐに追い付かれるのは目に見えてる。


「もう試合終了まで大した時間はない!俺、限界を越えろ!身体強化魔法、100%中の150%!」


 更に、自分に鞭打つ。イアンは体のヒビから血液が流れ、ほん少しづつ体が崩れ落ちている。もって10分という状態だが、こうなれば誰も彼もイアンに敵わないだろう。


「ジャック!セーレの手を!」


 あともう少しの距離で、セーレがジャックに手を伸ばした。セーレに触れれば、テレポーテーションでゴールまで転移してもらえる。この状況は、希望そのものだ。


「くっっ――あっ!?」


 しかし、あともう少しと言う所で転けてしまう。よく見れば、雪の中から出た手がジャックの足を引っ張っている。


「なっ!」

「惜しかった惜しかった!ご褒美だ!高い高い!!」


 サントスは素早く雪の中から飛び出し、ジャックの足を振り回してセーレと真逆の方へと投げ飛ばした。

 更に、セーレに目潰しを食らわし、両目を強く潰した。


「もう安心だぞイアン!お前のスピードなら手負いの英雄に片足でも追い付く!転移持ちもこのザマだ!」

「ああぁぁぁ!!セーレの目!!セーレの目がぁ!!」

「良くやったサントス!!奥の二人を見張っとけ!」


 イアンが雪を蹴って高く飛び、瀕死のジャックの元へ向かう。セーレは目が無えなくなり、その後ろではルーナとベルが足止めを食らっている。アウトリュウスは気絶しており、カーマも足を引き摺って遠くに居る。

 ジャックからボールが奪われるのは時間の問題だ。


「負けたね」

「負けたな」


 ルーナとベルは、悟ったようにため息をついた。

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