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ミトロジア  作者: ビタードール
一部】二章『愛を知らない神様』
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第10話【神々のラグビー】その4

 神々のラグビーは、後半40分が始まろうとしていた。

 皆、全ての傷を治したが、心身共に疲れており、集中力を落とさないようにしている。


「きっと、相手はセーレとアウトリュウスを警戒する。特にセーレの転移だ。だから、分かってるな?セーレを援護するんだ。特にアウトリュウス、お前はゴールへ突っ走る。そうすればセーレのコース.レゼンでアウトリュウスの元へ転移出来る。つまり、前半のように雪の壁が現れても、それは無意味。アイ.モーメントでの転移が失敗すれば、そちらに移行する。分かったな?」


 試合再開の前、ルーナが皆に確認するように話す。それを聞いた五人は、疲れた表情でコクっと頷く。


 *


 後半の先行はギリシャで、ジャックのドロップキックによって試合再開する。


「来たぞ!頼むぜコルビン!」

「雪魔法!スノー.ウォール!」


 試合開始と同時に、セーレの転移を警戒して雪の壁が出現する。だが、ギリシャチームは一切うろたえずにセーレにボールを回す。そして、アウトリュウスが雪の壁の所まで馬を走らせた所で、セーレも雪の壁まで転移する。


「だいたいそこに来ると思ったぞ!」

「うっ!」


 だが、転移した瞬間周りの雪に体を包まれて体を強く縛られた。しかし、魔法を使用したコルビンに違和感が走る。


「あれ?消えた?どこも見えないから転移は出来ないはず」

「こっちだ!壁の手前だ!奴らが居る!」


 壁の奥からサントスの声が聞こえる。その声に従い、他の北欧チームが慌てて雪の壁を潜って自分達のゴールの方へ行く。


「なっ!?奴らあんなとこに!」

「さっき、真っ先にイカレ野郎が走ったのはこの為か!俺達は神だ!神の使う転移を警戒してなかった!」

「コース.レゼンか!?それであのイカレ野郎の元に!」


 セーレが居たのは、アウトリュウスが乗る馬の上だ。アウトリュウスに掴まり、揺れる馬の上で氷のような瞳を輝かせてる。


「やばいぞ!すぐにゴールに行かれる!?転移でも使われたら!」

「遅いぜ!」

「遅いよ!」


 北欧チームが何かする暇はなかった。セーレが馬の上から消え、ゴールの目の前に現れる。そして、ゴールラインの奥へとボールを地面に当てる。


「ギリシャチーム!一点!」

「よっしゃ!」


 再び、ギリシャチームが一点リードとなる。


 *


 試合再開と同時だった。イアンが中央のボールを手に取り、真っ先にボールを投げた。だが、明らかに投げ方はパスなんて優しい物ではない。


「なっ!」


 反応する暇もなかった。ボールがセーレの顔面に当たり、首の骨が折れる音がする。


「セーレ!」

「治癒魔法」

「回復魔法」


 ジャックとベルが、一瞬唾を飲み込んですぐに手当に回った。セーレの余りにも酷い顔に、アウトリュウスも立ち止まって怒りを顕にしている。


「ハッハッハ!敵を信用した俺達の勝ちだ!本来、敵は疑うもの……だからこそ信用させてもらった!」

「信用だと!」

「セーレが死ななかったことも、ジャックとベルが手当に回ることも、アウトリュウスが立ち止まることも、全てを読んだ上で賭けにでやがった」


 皆が足止めを食らい、ルーナがニヤッと笑う中、カーマだけが動いた。カーマだけは無表情で、目の前の状況を受け入れているようだ。


「ウェザー.スノー」

「なっ!?」


 カーマの魔法がイアンを襲う。イアンの上空に現れた雲から雪が降り、雪達が吹雪になってイアンを襲う。だが、イアンは一瞬焦るだけで、すぐに吹雪の中を突っ走った。


「あははは!!寧ろ心地よいぜ!この吹雪はよォ!」

「俺も、心地よいぜ」


 カーマはニヤッと笑い、飛んで来た何かをキャッチする。その何かは、吹雪がイアンから奪ったラグビーボールだ。


「いつの間に!?」

「アウトリュウス!セーレは二人に任せてボール持ってゴールへ行け!奴らの足止めは俺とルーナが何とかする!」


 カーマがアウトリュウスへとボールを回し、イアンを初めとした六人の足止めに回る。

 だが、アウトリュウスはカーマの話を聞いておらず、穏やかな表情でセーレの手を取って寄り添っている。


「おい!ボール来てる!アウトリュウス!」

「アウトリュウス!ボール取って!」


 ジャックとベルは飛んで来るボールを見て、焦った表情を浮かべる。しかし、セーレの治療をやめる訳にはいかない。


「あ!お前!何やってんだ!」


 ボールはアウトリュウスを通り過ぎてしまう。それどころか、先回りしたニコラスにボールを取られる。


「焦った。けど、お前が腑抜けで助かったぜ。イカレ野郎」


 ニコラスが煽るようにそう言い残し、馬を走らせてゴール方向へ行ってしまう。

 それを見ていたカーマは、片目を痙攣させてブチ切れた。


「てめぇ!!せっかく奪い返したのに!!このクズ野郎がッ!!」

「怖っ」

「アッハッハッハッハッ!!!ひでぇ〜、腹痛いぜ!最高に最低のチームだな」


 ルーナは、ボールを諦めて腹を抱えて大笑いする。


「笑ってねぇで取りに行け!!」

「無理。残念だったな偏屈神様」


 カーマが怒り、皆が諦める中、ジャックが雪を弾いて走り出した。それを見て、皆表情を変える。


「おいジャック、諦めろ」

「そうするよ。ただし、点が入ってからだ」


 ジャックがそう言って通り過ぎると、ルーナが薄い笑みでニヤリと笑う。その笑みは、喜びと嬉しさを堪えたような笑みだ。


(魔力を集中させろ)


 自分にそう言い聞かせ、ジャックが走り込みながら雪玉を遠くへと投げた。投げる時の体と雪玉には、最大限の魔力が込められており、パワーとスピードが爆発的に上がる。


「分身」


 だが、ニコラスが盾に使った分身に当たり、ボールを持った本体は更に先に行ってしまう。


「コース.レゼン」


 その場からジャックの姿が消え、雪玉が当たったニコラスの分身の元へ姿を表す。


「なにっ!?」

「照れちゃう!」


 先程の雪玉から、イヤーカフに化けていたポム吉が現れる。ジャックはポム吉を拾い、分身のニコラスの肩を蹴り飛ばして前方の本体へと飛び掛る。

 だが、その時既にゴールラインは超えていた。ジャック自身も、それを理解した上での最後の足掻きだ。


「地面に着かせるか!」

「うおおおおぉ!!こいつぅ!!」


 ニコラスが焦りに焦り、慌てて馬から降りようとする。しかし、ニコラスが急に動いたことで、馬が暴れて体勢を崩してしまう。とうとう、ジャックはニコラスを掴む。


「のおおぉ!!」

「くっ!」


 馬が転倒し、二人も雪の上に落っこちる。雪が舞い上がり、どちらがボールを持っているのか、ボールが何処にあるのかは分からない。


「どっちだ?」


 審判の妖精も、上空から目を細める。そして、ボールが見えたのを確認し、少し残念そうにして結果を言う。


「北欧チーム!一点!」


 ボールは、依然ニコラスの手の中にあり、地面に着いていた。よって、ギリシャと北欧は同点へと持ち込まれる。


 *


「惜しかったな」

「うん」


 ルーナが少し嬉しそうにする後ろで、カーマは嫌そうにジャックの方を見ている。


「おい、あいつお前の方見てるぞ。お前のこと好きなんだな」

「どう見ても逆の目付きだろ」

「ツンデレかもな。つまり、ツンデレホモ野郎」

「ルーナキモイ」


 軽い冗談を交え、試合再開へと移行する。ボールは、ギリシャチームからだ。ボールはすぐにセーレに渡り、同時にコルビンが雪の壁を創り出す。


「邪魔するよ」

「ほんと邪魔だね」


 そして、アウトリュウスが馬を走らせ、それを邪魔するようにニコラスも馬を走らせる。

 ここまでは、両チーム当然の流れだ。

 更に、ギリシャチームの他の四人が走り出し、壁の奥へ向かって散らばった。それを見た北欧チームは、焦った表情で四人の邪魔に入ろうとする。


「やばい!誰か一人でも壁の奥に行けばコース.レゼンで転移させる!」

「流石にこの数は止めれないって!」

「奴らは無視しろ!!奴らの会話を聞いた所、全員が親しい仲だと思えん!イカレ野郎を通す為の策略だ!」


 イアンのその一言で、ジャックやカーマが表情を変える。それは、イアンの言う通りの策略だったからだ。セーレがコース.レゼンで転移できるのは、アウトリュウスの元だけだ。


(バレたか)


 策略がバレたのを引き金に、セーレが壁の前まで転移する。だが、それを読んでいた北欧チームが攻撃を仕掛ける。


「やれロイース!」

「パワー!」


 ロイースは、セーレに向けて圧倒的な魔法を放つ。その魔法は強力なエネルギー弾で、セーレと周りの雪を吹き飛ばした。上空高く飛んだセーレは、足止めされてるアウトリュウスとチャンスを伺うジャックとカーマを確認する。

 だが、ロイースの魔法によって体は傷ついている。


「いったいなぁ。それに……めんど〜」


 セーレはそう言いつつも、魔法陣から望遠鏡を取り出す。


「テレポーテーション!」


 そして、ニコラスとアウトリュウスの前にボールが転移する。そのボールは、二人が手を伸ばせば届きそうな位置だ。


「ボール!?」

「ナイスセーレ!」


 一瞬早く馬から立ち上がったのは、アウトリュウスの方だった。それを見て、ニコラスも慌てて立ち上がってボールに手を伸ばす。それを待ってたアウトリュウスは、ニヤッと笑って蹴りの体勢に変える。


「なっ!?」

「くれてやる、ボール」


 そのまま蹴り飛ばされたニコラスは、すぐ近くに仰向けに倒れる。ボールは、アウトリュウスの手元に渡る。


「惜しかったなぁ〜、アウトリュウス」

「ッ!?」


 しかし、背後から聞こえた声と同時に、アウトリュウスの首に手刀が当たり、そのまま気絶してしまう。背後に立っているのは、薄く肩目を閉じ、喜びを堪えるように片手を震わすニコラスだ。止まった馬の上には、ボールを持った勝者ニコラスだけが残る。


「分身か……浮かれやがって、変態イカレ野郎」


 倒れるニコラスとボールを持つニコラスの二人を見て、カーマが嫌そうに片目を痙攣させる。そして、切り替えるようにニコラスを追った。


「ルーナ、カーマを援護しよう」

「ああ、俺とベルは防衛に回る。お前ら三人でボールを取り返せ」

「ちゃんと守れよ」

「あぁ、頑張れジャック」

「……やる気あるのか?」


 ジャックは少し冷めてるルーナに違和感を感じながらも、空中から落ちて来たセーレをキャッチし、カーマの援護に回る。


「てめぇら!残り20分!この一点に命賭けろ!絶対取るぞ!」

「「「「おう!」」」」


 アウトリュウスの気絶により、北欧チームにツキが回る。士気が十分の北欧チームに比べ、ギリシャチームはチームワークに欠けていて、グダグダのようにも見える。

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