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ミトロジア  作者: ビタードール
一部】二章『愛を知らない神様』
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第8話【神々のラグビー】その2

 試合開始から20分、カーマがゴールに向かって走っていた。走って追いつかないことを悟った北欧チームは、何発か魔法を放つ。しかし、距離が離れていて余裕で避けられる。


「ダメだ。この距離じゃ避けるのは容易い」

「身体強化魔法」


 しかし、北欧チームの一人――イアンが雪玉を握り、それを野球選手のように美しい姿勢で投げた。

 その雪玉は、膨大な魔力に包まれており、圧倒的な筋力と腕力で放たれる。

 雪玉は、先程の魔法とは桁違いのスピードでカーマの背に命中する。しかし、カーマの背に雲が纏われており、雪玉を完全に防いでいる。


「ちっ!絶対に逃がす訳には行かない!ニコラス!ロイース!」

「「おう」」


 イアンが呼んだ二人、バンダナを付けた少年――ニコラスとふんどし姿の少年――ロイースが、イアンの近くで魔法を使用する。ニコラスは自分の分身を一人創り、馬を召喚させる。その分身は、イアンと共に馬に乗り、ロイースが放った魔法でカーマの方まで吹き飛んで行く。


「あいつら、まさか追いつく気か?」

「魔法の爆風を利用して吹っ飛んだな。それに馬を召喚者以外に使わせるとは」


 ジャックもルーナも、少し嫌な予感がしていた。勿論、まだカーマとイアンの距離は200m以上あるが、カーマの速さはイアンに劣る。あと100mでゴールに辿り着くにしても、その不安は拭えない。


「まだだ!身体強化魔法!」

「行け!イアン!」


 馬から降りたニコラスは、馬に乗った状態のイアンの足を蹴り飛ばし、遠くへ高く飛ばす。更に、イアンはその場で立ち上がり、馬を蹴飛ばしてカーマの元へ吹き飛んで行く。


「なっ!!やりやがった!追い付かれるぞ!」

「カーマ避けて!」


 ルーナとベルが危機を察知するが、カーマはボールを離さずに、飛んで来たイアンを避ける。だが、イアンが隠し持っていた雪玉を当てられ、大きなダメージを受けた。


「ちっ!ゴールはすぐ目の前なのに……」

「痛い目に会いたくなければさっさとボールを渡せ。お前の速さでは俺から逃げきれん」

「そうするよ」


 カーマは、一瞬こちらに走って来ているルーナやアウトリュウスを見て、諦めたかのようにボールをイアンに投げた。だが、ボールはイアンの少し前に投げられたので、イアンは少し体勢が崩れた状態でボールを受け取った。

 カーマは、その隙を見逃さなかった。


「ウェザー.サン」


 カーマは手の平に太陽を創り出し、それを体勢の崩れたイアンの顔に当てる。


「ああああぁ!!」

「ふんっ」


 そして、イアンが顔を抑えた瞬間、流れるようにイアンを蹴り飛ばし、ボールをキャッチしてゴールへと走り出す。

 しかし、カーマを逃さまいと、イアンのゴツゴツとした手がカーマの腕を掴んだ。


「身体強化魔法!」


 魔法で強化されたイアンの手は、圧倒的な握力と筋力でカーマの腕をへし折った。


「くっ!!このボケナス!!俺の邪魔してんじゃねぇ!」


 カーマは、腕の痛み以上に怒りが勝っており、膝蹴りをイアンの顔に食らわせる。だが、イアンはもう片方の手で膝蹴りを受け止め、カーマの腹を殴ってボールを奪い返した。


「俺の邪魔もすんな」

「くそっ……」

「身体強化魔法、100%」


 イアンはカーマの反撃を警戒し、すぐにボールを投げた。しかし、ボールを投げた方向は味方である北欧チームではない。


「早い!?けどこのボールの軌道……味方じゃない」

「はっ!避けろセーレ!ボールが――」


 ルーナが気付いた時には、既にボールは目的地に到着していた。魔法以上の兵器とも言えるボールは、膨大な魔力を纏った状態でセーレの顔面に当たった。あまりのパワーとスピード故、ボールをキャッチ出来なかったのだ。


「かはっ!?」

「セーレ!」


 更に、セーレの顔面にバウンドしたボールは、北欧チームのニコラスに取られ、馬に乗った状態で逃げられる。


「ちっ!追えアウトリュウス!奴に追い付けるのはお前だけだ!」

「命令するな」


 アウトリュウスはボールやニコラスを気に求めず、倒れたセーレに駆け寄った。それを見て、ルーナが諦めたようにジャックと目を合わせる。


「流石英雄、まだやる気だな?」

「その通り……まだ諦める時じゃない。やるだけやろう」

「援護頼むぞ、ジャック」

「ああ、奴らの真似をしよう」


 ジャックはルーナを背に乗せ、地面に向けて水魔法を放った。その水は、瞬間的に魔力と共に放たれ、ジャックとルーナを遠くへと吹き飛ばす。


「頼んだ」


 更に、イアンとニコラスがやったように、空中で足を蹴り飛ばし、ルーナをニコラスのいる方向へと吹き飛ばす。


「届け!」

「来るのかよ。まぁ、無駄なんだけどな」


 ニコラスは一瞬焦った表情を浮かべ、すぐに魔法陣からもう一人の自分を出して、ルーナの足止めに徹底させた。


「ちっ」

「よしよし!貰い貰い!点数と喜びゲットゲット!」


 ニコラスはルーナの足止めに成功し、その隙にゴールを決めた。これで、ギリシャと北欧は同点となる。


「北欧チーム!一点!」


 *


 セーレが大怪我した為、試合再開まで数分の時間が与えられた。セーレの顔面は深く傷付いており、片目が切れてしまっている。


「避けて」


 ジャックの治癒魔法とベルの回復魔法を使用し、何とか治療するが、ダメージはしっかりと残っている。

 それどころか、セーレは気だるそうにし、やる気を失っている。


「ボール取れない。セーレのテレポーテーションも転移魔法も使用する場面来ない。セーレ疲れた」

「……ボールは俺達が取る。あんまり気を落とすな」

「そう、頑張ってね」

「「……」」


 セーレの治療を終えると、試合が再び再開する。次は、ギリシャチームからのスタートだ。


「来た来た。勝ち確定!セーレ!」


 ボールが手元に渡ったことで、ルーナが勝利を確信してセーレにボールを渡す。すかさず、セーレは望遠鏡を取り出してゴール前まで視線をやる。


「テレポーテーション」

「フッ。雪魔法、スノー.ウォール」


 だが、北欧チームのマフラーを身に付けた少年――コルビンによって、雪の壁が創られる。よって、セーレはゴールが見えなくなり、雪の壁手前に転移する形になった。


「いいやっ!ほんと邪魔!」

「視覚の壁があればお前の能力なんか、無意味だっ!」


 更に、帽子を被った少年――サントスがセーレを蹴り飛ばし、ボールを奪って逃走する。


「もういや……あいつの言う通りセーレ無意味。ジャックが余計なこと言ったせいでセーレに魔法無制限持たせた。もういや」


 セーレは独り言をブツブツと言い、顔の雪を拭ってその場に座り込む。


「セーレ何してる!?お前が鍵だと言ったろ!テレポーテーションで奴を追え!背後から襲えばボールを奪い返せる!」

「ルーナうるさい」

「あいつ……やっぱり魔法無制限を持たせのは間違いだった。バカ英雄の提案とアホセーレのせいで負けるのはごめんだってのに」

「カーマうざい」


 ルーナとカーマに反抗的なセーレは、意地を張ってその場に寝込んでしまう。だが、それを補う様にアウトリュウスが馬を走らせる。


「けっ!?」

「うっ!?」


 アウトリュウは通り際にルーナとカーマを蹴り飛ばし、嫌悪の目で二人を見下ろす。


「ごちゃごちゃうるさいな。それ以上セーレを悪く言うな。俺ちゃんが何とかすればいいんだろ」

「アヒャヒャ!誰が仲間?もう分かんないねっ?」

「笑ってないで行くよ。俺達速さでは劣るけど、魔法で援護するんだ」


 ベルとジャックは、馬を走らせるアウトリュウスに続いてコート内に広がって行く。


「来てるぞサントス!イアンを圧倒したイカレ野郎だ!追い付かれる!ボールを回せ!」

「わあってるよ!」

「ナイス!!流石の奴も同じ馬召喚を持つ俺には追い付けまい!」


 ボールがサントスからニコラスへと回る。ニコラスはニヤッと薄い笑みを浮かべ、ボールを抱えて馬を走らせる。

 だが、アウトリュウスには焦りも迷いもない。

 ボールを手放したサントスに飛びかかり、目玉に噛み付いて片目を抉った。


「あああっ!!?」

「美味しいね」


 アウトリュウスはニヤッと笑い、口の中から抉った目玉を見せ付けた。その目玉は、綺麗にくり抜かれており、アウトリュウスによってグミのように齧られる。


「何やってんだ……あいつ……サントスはもうボールを持ってないんだぞ」

「やけくそか!?奴を半殺しにしろ!」


 周りに居た北欧チームは、慌ててアウトリュウスに襲い掛かる。だが、アウトリュウスはぬらりくらりとフラフラとするだけで、一切抵抗せず攻撃の避けに徹底する。


「避けろ!身体強化魔法!100%!」


 イアンが放った拳は、周りの雪や空気を吹き飛ばす程の威力だ。その拳をもろに受けたアウトリュウスは、遠くへと吹き飛ばされて行く。


「おほっ!すげぇ吹っ飛んだぞ!?死んだんじゃないか?」

「ち、違う……あいつ、わざと受けて自ら飛びやがった」

「は?」


 両チーム、アウトリュウスが吹き飛んだ方向に注目していた。その方向は、馬を走らせるニコラスがいる方向だからだ。


「まさか、作戦だったのか?わざと受けてニコラスの元へ吹き飛ぶ為、あんなイカれた真似を……」

「けどバカな作戦だ。あいつ、まともに動ける訳ない。わざと吹き飛んだと言え、イアンの攻撃をもろに食らったんだぞ」

「そうだが……」


 北欧チームは、焦りを混じえた表情で吹き飛んで行ったアウトリュウスを見ている。そのアウトリュウスは、顔面がぐしゃぐしゃになりながらも生命を保っており、空中で意識を取り戻した。


「い、生きてる……なら俺ちゃんの……かーちだ、ね!アヒャアヒャひゃひゃ!」

「ちっ。俺を追い越す位置に落ちてくるな。蹴り飛ばしてやるぜ!」


 ニコラスは、前方に落ちてきそうなアウトリュウスに蹴りを入れる満々だ。馬の上で立ち上がり、蹴り飛ばして正面突破する気だ。


「……レッド」


 同時に、アウトリュウスの近くに赤い本が出現する。その赤い本は、普通の本より一回り大きく、辞書のように分厚く綺麗だ。


「丁重にお返しする。身体強化魔法……100%」

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