第4話【神の試験】前編
ジャックら新入生は、金曜日の夜に教室で待たされていた。外は当たり一体暗くなり、先生も生徒も皆学園から出ている。
「ん〜、あれ?まだ先生来てないの?もうすぐ今日が終わるよ」
ベットから起き上がったアウトリュウスが、眠そうにしたままセーレによし掛かり、再び目を閉じた。
「試験明日何でしょ?もう明日になるよね?」
「先生来ないな」
とうとう時計が12時を回り、学園には鐘が鳴り響いた。
「私見てくる」
ベルが教室のドアに手を掛けた。だが、その手は止まってしまい、不思議そうにしてドアを引っ張ったり押したりする。
「開かない」
「避けな」
ルーナは悟った表情をし、ドアに向けて雷の魔法を放つ。それでも、ドアはビクともしない。
「決まりだな」
「え?どゆこと?何が決まったの?」
「試験はもう、始まってるんだ」
ルーナのその一言に、セーレやカーマが反応する。
「けど、試験の内容聞かされてないよ?この部屋から出るってこと?」
「フンっ」
カーマはハンモックから降り、自らドアが開かないことを確認しに行く。
「試験の内容を暴くのも、試験の内なんじゃないのか?如何にも神々が考えそうなことだ」
「だってさアウトリュウス。どうする?」
「エッチしよ。部屋から出れないんだ」
教室から出れないことを知ったアウトリュウスは、セーレの服の中に手を入れ、顔を掴んで頬擦り付ける。そして、その場で倒れ込んでイチャつく。
「きめえ。まじかこいつら」
これには、ジャックも顔を引つる程だ。
「私もお腹空いたから食事にする」
ベルも知らない顔で肉にかぶりつく。カーマはカーマで、部屋の中をあちこち探索している。
「ダメだこいつら」
「カーマ!やっぱりお前もそう思うか?」
ジャックが呆れる中、ルーナはカーマに声を掛ける。
「それしかないだろ」
「だな。何かあったら教えてくれ。俺らも教える」
「フンっ」
ルーナもカーマ同様、カーペットの下や天井を探る。
「何してるジャック。俺ら三人だけでも試験クリアするぞ」
「この部屋に何かあるの?」
「分からん。けど、手掛かりがあるならこの部屋だ」
ジャックもその言葉に納得し、部屋の探索を開始する。しかし、数十分が経っても手掛かりが見つからない。
「ん?んん!!!っ!!」
ジャックが諦めかけたその時、ベルが喉に何かを引っ掛けて苦しそうにジタバタ暴れた。ジャックはそれにいち早く気付き、ベルの元へ駆け寄った。
「詰まったの?」
ジャックは、ベルの背中を思いっきり叩く。すると、ベルは喉に引っ掛けていた物を吐き出した。
「大丈夫?」
「ゴホッゴホッ!ダメかと思った」
「一体何に――」
ジャックは、ベルが吐き出した物をつまみ上げる。それは、金色に輝く鍵だった。
「はっ!ルーナ!カーマ!あった!鍵だ!!」
「ほんとか!?」
ルーナもカーマも疲れた表情が一瞬にして吹き飛び、希望に満ちた表情でジャックの元へ駆け寄る。
「ベルが食べてた肉に入ってた」
「ベルが食べるって分かって入れたな?下手したら死んでたぞ」
「どちらにせよ、これでこの教室を出れるな」
ルーナは恐る恐る鍵穴に鍵を入れ、教室のドアをゆっくりと空ける。ドアの奥は真っ暗で、当たり一体見えなくなっている。
「何も見えねぇな」
「おい、まさかビビってんのか?情けない奴だ」
カーマは、そう言って教室から一歩出る。
「おい。あんま迂闊に動くと――」
すると、カーマのすぐ目の前に斧が降り掛かった。カーマは背筋を凍らせ、冷や汗をかいて背後を振り返る。
「ルーナ、先行くか?」
「何ビビってんだよ。お前が行け」
「おい、斧に何か貼ってるぞ」
ジャックは、振り下ろされた斧に何かついていることに気が付く。それは、六つのカードで、それぞれ数字と名前が刻まれている。
「何のカードだ?」
カーマはそう言い、自分の名前が刻まれたカードを手にする。
「俺の数字1000だ。カーマ、お前の数字は?」
「996」
「ジャックは?」
「495」
「ベルは?」
「810かな。これって……」
「あぁ、間違いない。この前のテストの点数だ」
カードに書いてる数字はテストの点数と一致していて、裏には文字が書いてある。
「一人でクリアせよ?」
「俺は三人でクリア」
「俺は二人」
「私は三人」
ルーナは一人、ジャックは二人、カーマとベルは三人でクリアせよと書いている。
「てことは、あの二人のどちらか二人で、どちらかが三人ってことか」
「一人か、寂しい気もするが気楽でいいや。じゃあな皆、俺は先に行ってるぜ」
カーマやジャックが立ち止まる中、ルーナは一人暗闇の中を突き進んで行ってしまう。
「あー!面倒臭い……どっちだ!」
カーマは、斧に付いてる残り二つのカードを手に取る。セーレは750で、二人でクリアせよ。アウトリュウスは246で三人でクリアせよ。
「アウトリュウス早く来い!いつまでもイチャつくな」
「何?俺ちゃんの邪魔する気?」
アウトリュウスは服の下からセーレを抱き締めたまま起き上がり、片目を開けてカーマを睨んだ。
「早く来い。試験は始まってる」
「……まぁ、いい。行こうかセーレ」
アウトリュウスは、眠たそうなセーレを引っ張ってカーマの元へ近寄る。カーマはカードの数字を説明し、二人にカードを渡す。
「え!?セーレ二人?アウトリュウスがそっちってことは、セーレこっ……ジャック……と?」
セーレは一瞬大きく困惑した様子を見せたが、すぐに納得したようにジャックの方を見た。
「よろしくね」
「……よろしく」
「またねアウトリュウス」
セーレはジャックにペコッと頭を下げ、少し寂しそうにアウトリュウスに手を振った。そして、三人ペアと二人ペアは互いに指定されている道へと別れて行く。
「ライト.ファロン」
暗闇の中、ジャックは明かりを付け、ただひたすらにセーレと共に足を運ぶ。
「英雄様とペアなんて、とても光栄ですよ」
セーレはわざとらしく、お嬢様のようにポーズを取り、手品のように出したオレンジのユリをジャックに渡す。
「……ありがと」
二人は、目に入った扉全てに手を掛けていた。だが、ほとんどが開かずの扉だ。そんな中、庭に繋がる扉の前で立ち止まった。
「カードが入る」
扉の前には、カードがちょうどハマる形が二つあった。セーレは自分のカードとジャックのカードをそこに入れた。すると、庭に繋がる扉が開かれる。
「よし」
入ってすぐの場所には、自動販売機に似た箱のような魔道具が二台並んでいる。一つは魔力、もう一つは神器と書かれている。
「カードが入る」
その自動販売機にカードを入れると、魔力の方は数字を指定でき、神器の方は剣、槍、斧、弓、銃と五つがある。
「選べということ?取り敢えず、神器の方から選ぼう」
セーレが弓矢を選ぶと、魔道具からは弓矢の神器が出てくる。それを拾うセーレは、カードを抜いて魔力と書かれてる方にカードを入れようとする。
「あれ?数字が減ってる?」
カードに750と書かれた数字が700に変化してるのに気付いた。それを知り、ジャックは悟ったように魔力と書かれた方を見る。
「この魔力って書かれてる方、これも数字を失うんじゃない?神器は一つ50、魔力は自分で選べる。恐らく、この先に魔力や神器が必要になる場所があるんだよ」
「セーレも同じこと思ってた」
セーレは一瞬見栄を張り、魔力と書かれた方にカードを入れて数字を選ぶ。迷いに迷った末、セーレが指定した数字は300だった。
「どうぞ」
ジャックも浮かない顔をしながら、カードで剣と魔力200を購入する。ジャックの残りの数字245、セーレの残りの数字400となる。
そして、セーレは庭の入口に手を掛け、その扉を開けた。
「なっ!?」
「庭じゃない?」
目の前に広がる景色は、学園にあるような景色とは全く違う。外の景色が永遠に続いてて、大きな岩の柱が並んで奥へ続いている。下に足場は見えなく、あちこちこちらに気球が飛んでいる。周りには、海を泳ぐかのように空を進む魚に似た幻獣も何匹か居る。
「飛べってことかな」
セーレはそう言って足元から飛び降り、空を舞う。ジャックもそれに続き、空を舞って飛行を続ける。
「どこへ向かうつもり?」
「分からない。何もなさそうだから、何か探す」
セーレはそう言ったが、進んでも進んでも永遠と続く背景を前に、ジャックは少し不安を覚えている。
「ジャック、カードの数字が変だよ」
「え?」
ジャックは、ポム吉に言われてカードの数字に目を通した。数字は、一秒ごとに一カウント減っていて、ジャックの数字は220まで落ちていた。
「セーレまずい!カードの数字が減っている!」
「……ほんとだ」
セーレは、カードを見てすぐに目を丸めた。
「恐らくこれは制限時間。時間が経つことに減っているんだよ。分かったなら急ぐよ」
セーレは焦ったようにそう言い、飛行のスピードを上げる。ジャックも慌ててセーレを追いかけるが、再び異変に気付く。
「待ってセーレ!早まってる!減るのが早まってる!」
「どっ、どゆうこと……」
セーレも数字の減るスピードが変化したのに気付き、その場で足を止める。すると、再び数字の減るスピードが遅くなり、少しの余裕が生まれた。
「間違いない。飛行のスピードで減る早さが違う」
「けど何もしなくても減ってる。出口や試験クリア条件らしい物は見当たらない」
「やばい……とにかくこの数字が減るのを止めないと」
試験の内容が分からないまま数時間が経過した。今現在、セーレの数字350、ジャックの数字200。
数字が減る中、二人は謎を前に立ち止まる。




