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ミトロジア  作者: ビタードール
一部】一章『アマノとジャック』
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最終話【END OF THE PROLOGUE】

 アイムは、ジャックが居た光の中をじーっと見ていた。


「触れた物を全て消し飛ばす最上位魔法だ。消えてるはずなんだ……」


 アイムはそう言ったが、光の中からは何かが姿を現した。長い白髪、女性寄りな中性的な顔、細身の体――ジャックは、明らかに先程と違う。死にかけだった体も完全に治癒しているし、何より目が特殊だ。三角の紋章は上下に二つ交差していて、何もかもを見据えているかのようにギラギラと光っている。そんなジャックは、天を見てヘラヘラと笑っている。


「アマノ様……アマノ――」


 だが、アイムに気付いたことで、魔法が解けたかのように様子が一変した。いつものツンッとしたジャックに戻り、目を細めてアイムを睨み付ける。


天津あまつじん


 ジャックがそう言ったのは、今の特別な状態を名乗ったのだ。なぜその名を言葉にしたのか、それを名付けたのがジャック本人なのかは分からないが、どちらにせよアイムを震わせる異常事態には変わりはない。


「アマノの力なのか……?その姿……まるで……魔女の子アマノ……貰い物ばかりで調子乗りやがって。もう魔力を気にもしない!ゼロ.メーデン!」


 アイムの魔法は先程より素早い。だが、ジャックの目には常に未来が見えていて、それをいち早く交わした。そして、一瞬にして姿を消した。同時に、アイムの背後にゾッとした感覚が走る。


「アイム……お前はもう俺達に勝てない。この力は……アマノの力」

「じゃっ、ジャック……」

「出会った時、お前はアマノに負けている。勝てないんだよ。お前はアマノに勝てない」

「いいぃやろおおお!!!」


 魔神アイムは、天津の神ジャックの手元で踊らされる。体から無数のアイムを出すも、ジャックが振るった刀によって辺り一帯が斬れた。アイム本人も首が斬れ、焦りがにじみ出ている。


「ライト.ファロン」


 ジャックが放った光は、幻想のアイムに当たることに屈折を繰り返し、高スピードで本体のアイムに当たっていく。アイムの体に入り込んだ光は、内部から輝きを放ち、体中で暴れ回る。体がバラバラになったアイムは、血で体を修復させようと必死だ。


「ざけんなざけんな!ざけるうなあ!!!!俺は魔王だ!憤怒の魔神だ!こんな理不尽な事でやられてたまるか!!!借り物の力でイキリおってえええ!!!もうどうでもいい!どいつもこいつも消し飛ばしてやる!!神界を全て消し飛ばす威力の広範囲魔法!デーモン.スフィテア!!!」


 アイムは、自身の体の修復を後にし、全魔力を上空から地表へ放った。それに包まれていくジャックは、難しい顔を浮かべてグッと拳を握る。


「真理の義眼……フルパワーだ」


 広範囲に渡って放たれた魔法は、全てジャックの視界の中に吸い込まれて行く。全てがジャックの目線一直線に集まり、魔法を全て吸収していく。だが、徐々にその瞳が割れていき、その痛みが体全体へと渡っていく。体中にヒビが入り、眼球が割れる。ほぼ全ての魔法を吸い込んだが、残りの魔法がジャックへと向かっていく。


「憤怒の魔神アイム……お前の怒りを受け止めてやる」


 ジャックは、残りの魔法を素手で受け止める。触れた瞬間、手の皮膚が激痛で覆われ、全身に負担が掛かる。魔法は徐々に魔力を失って消えていくが、それ以上にジャックの体が朽ちていくスピードの方が早い。だが、ジャックは魔法を受け止めた状態でアイムの視界から消える。


「消えた!?まっ!まさか……」


 アイムは青ざめた表情で背後を振り向く。そこには、魔法を受け止めた状態ジャックが突っ立ている。どう考えても、アイムに魔法をぶつける気だ。


「返しに来たぜ」

「返しに来ただぁ?お断りだあ!」


 だが、アイムは体を修復してない状態で魔法に手を当て、ジャックへと押し返す。二人は、全身全霊で残りの魔法を押し合う。瞬間、魔法から魔力が失われるスピードは急激に早くなる。だが、アイムとジャックの体も魔法によって擦り減っていく。


「「はあああああぁぁぁ!!」」


 そしてとうとう、魔法は全ての魔力を失った。だが、アイムもジャックも魔法と同時に力を失い、ボロボロの状態で地へと落ちて行く。


 *


 二人に魔力も力も一切ない。アイムも体を修復する魔力がないから、体がバラバラで心臓が生で見えている。ジャックも天津の神が解除されていて、元の状態のジャックへと戻ってる。


「俺の勝ちだろ」

「バカ。どう見ても俺だ」


 二人共、口は達者だがお互いに息を切らしていて、もう喧嘩する力も一切ない。互いに仰向けにになって倒れていて、地から背を剥がすことが出来ない。


「奇石だ……奇石をよこせ……」

「こっちのセリフだ。先によこせ」

「このガキ……敗者の癖に生意気……いいからよこせ。殺すぞ」

「やってから言えや……アホ悪魔……」


 朽ちる体とは真逆に、口喧嘩はエスカレートしていく。だが、そこに横やりが入った。何者かがアイムとジャックの懐から奇石を取り上げ、手に持っている刀でアイムの脳と心臓を突き刺した。流れるように起きた数秒の出来事は、ジャックから言葉と表情を奪い取る。


「がはっ!?き、貴様……どういう……つもりだ。く、クルーニャ」


 アイムが口にした言葉は、ジャックを恐怖と憎しみで強く縛る。上をよく見てみれば、ニヤッと笑うクルーニャが居て、白と金の奇石をくっ付けてしまっている。


「ゲームオーバーだアイム。ゲームマスターの俺が判断したんだ。お前は用済み……」

「ちっ……ちくしょうが……」

「アイム!おい!しっかりしろ!」


 ジャックが力を振り絞って横を見た時、アイムは死に出会っていた。体から生命力は消えてて、死んだ目がゆっくりと閉じていく。


「クルーニャ貴様!!のこのこと俺の前に現れたと思えば!!」

「お前も神になったようだなジャック。そして、失ったようだな……アマノを」


 クルーニャが不敵な笑みを浮かべる中、遠くからはポム吉と神々が飛んで来ていた。それに気付いたクルーニャは、首の骨を鳴らして何か企む顔を浮かべる。


「これは!?どういうことだ!?アイムは死んでいるのか!?」

「誰だあの男!ジャックを人質に取ってるのか!?」

「おっ、おい……あいつ奇石を手にしている。それも、完成された奇石だ。アイムとジャックから奪ったんだ!奇石を!」


 神々は次々と状況を理解していく。そんな神々に、クルーニャは容赦なく魔法を放った。


「がはっ!!」


 その魔法は圧倒的で、神々を広範囲に渡って吹き飛ばす。


「これが魔法……。感動的だな……俺が魔法を使うなんて……魚が陸に上がって走り回るようなものだ」

「クルーニャ……俺はお前に言ったよな?絶対に許さないと……のこのこと来てくれて嬉しいぜ。手間が省けたよ」


 ジャックはクルーニャの足にしがみ付き、自力でその場に座り込んだ。そして、傷付いた片目を瞑ったままニヤッと笑う。


「ありがとうクルーニャ。俺から全てを奪ってくれて……何の後悔もなく、お前を葬れる……地獄に」


 クルーニャの背後に大きな門が現れた。それは、クルーニャが良く知る地獄門だ。


「地獄の門番アバドンよ、地獄の門よ今開け!」

「ケッケッケ……魔力を使用しない契約魔法か……」


 開かれた門は、ニヤニヤと笑うクルーニャを力強く引き込んでいく。クルーニャは焦った態度を取らず、呆気ない程門に引き込まれる。だが、ギリギリで門の淵にしがみ付き、真剣な目でジャックを見詰める。そして、体から放った魔法でジャックの体を縛り、自身の手元へ引き寄せる。


「くっ!?」

「お前を先に殺せば、この門は解除される。どうするジャック?」


 ジャックは意識が吹き飛びそうだった。頭も体も、力も魔力も限界だった。それでも、力を振り絞って弱弱しい拳をクルーニャの顔に当てる。ペチッと当たる拳は、クルーニャに効いてるように見えない。だが、クルーニャはニコっと薄っぺらな笑顔で笑い、魔法を解除してパッと手を離した。


「諦めない……か。ひとまずクリアだ」


 何が何だか分からなかったが、クルーニャは自ら門の中へと吸い込まれていった。それも、完成された奇石と共に。


「な、何を考えて……わ、わざと負けたのか?」


 ジャックは困惑したが、溜まりに溜まっていた疲労でぶっ倒れてしまう。最後に見たのは、ゆっくりと閉じた地獄の門だ。


 *


 ジャックが目を覚ましたのは、一週間後のことだった。体は全身治療されていて、痛みも披露も一切ない。だが、クルーニャの呆気ない最後と、アマノやアイムの死が印象強くて、スッキリとした目覚めを迎えれなかった。


「起きたようだな……ジャック」


 ベットから起き上がろうとした時、近くに座っていたスサノオが声を掛けた。


「もう……誰もアマノを魔女の子と呼ばないよな?俺は英雄で、アマノはその英雄を育てた大英雄だよな?」

「そなたの言う通り。そなた方は世界を救った英雄だ。奇石団やアイムは皆倒され、奇石も門の中に封印された。全て丸く収めてくれたのは、人間のそなただ。それと、その師である女神アマノ」


 スサノオの言葉を聞いたジャックは、安心したように薄く微笑み、下を見て涙を流した。その涙は、アマノのことを想っての涙だ。堪えていた物が全て溢れ出ていく。


「照れちゃう!ジャック起きた!」


 扉から飛び出て来たポム吉がジャックの元へ飛び込んだ。ポム吉は何か期待するかのようにニコニコと笑み浮かべるが、ジャックはその期待を裏切るようにポム吉を優しく撫でた。


「ありがとうな、ポム吉」

「て……照れちゃうよ」


 ジャックは微笑み、ポム吉はガチ照れをする。


「これからどうする気だ?」

「アマノの墓を作り、元の場所で静かに暮らす。俺とアマノの思い出の場所で静かに暮らす」

「そうか……拙者達に出来ることがあれば、何でも言ってくれ。寂しい気もするが、達者でな」

「ありがとう。あんたも元気でな」

「たまに遊びに来い。歓迎する」

「そうするよ」


 ジャックはそう言ったが、何かをする気力はなかった。アマノという生きがいを失い、クルーニャとう復讐も失った。生きる理由はなかった。神界や天界で、神や天使や悪魔が平和に浸る中、ジャックだけがその世界の外側に居た。


 *


 一人の子供が風に煽られ黄昏ている。周りにも複数の子供が居て、その中に群れないでいる。


「何やってんだよ!お前も来いよ!」

「ああ、今行くよ」


 だが、周りに子供に声を掛けられ、その子供の元へと歩いていく。


「ケッケ……ひとまずラスボスを倒してクリアを迎えたな。次のゲームにも参加してもらうぜ……ジャック」


 その子供は、邪悪な笑みを浮かべ、何かを期待するかのように顔を抑えた。それはまるで、何か小さな傷を撫でたようだった。

一部一章を最後まで見てくれてありがとうございます。


二章投稿は、しばらく時間が掛かりますが、今年中には投稿する予定なので、ぜひそちらもよろしくお願いします。


今後は、更に面白くなる予定なので、気軽に読んでくれると嬉しいです。

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