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ミトロジア  作者: ビタードール
一部】一章『アマノとジャック』
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第51話【最強の兄妹】

 ドラゴンの上で、メタトロンとサンダルフォンがアマノとジャックを追い詰めている。ドラゴンから上半身だけ生えてるポム吉もあわあわと慌てている。


「「死ね」」


 メタトロンとサンダルフォンの目の前に現れた大きな魔法陣から、炎と氷の衝撃波が放たれた。お互い横に逃げるアマノとジャックだが、避けるのを読まれていた双子にいとも簡単に首をはねられる。

 だが、はねられた首と体は、光になって消える。


「分身!?」

「えー!本体はどこ?」

「ここだよ!」


 本体を探す二人に話しかけたポム吉は、小さな手を挙げて可愛らしく笑っている。そんなポム吉とドラゴンは、光を放っている。


「まずい!離れろサンダルフォン!」


 光を放ったポム吉とドラゴンは、一瞬にして爆破した。爆破に巻き込まれたメタトロンとサンダルフォンだが、大した傷は負っていない。


「野郎……小癪な真似をしやがって」

「お兄ちゃん!あれ!」


 二人の少し遠くには、一人で空を飛ぶジャックが居た。その手の上で、粉微塵になったポム吉が再生される。


「ジャックとエロクマだ!」

「アマノが居ない……囮だ」

「私が行ってくる」

「心臓を置いてけ。もしもの為だ」


 サンダルフォンは、自身の心臓が入っている氷をメタトロンに渡し、静かな笑みでジャックの元へ飛んで行く。それをただ見ているメタトロンは、隠れているアマノを警戒している。


「やっーぱっりかぁ」


 メタトロンの背後から、透明化状態のアマノが神器を振るった。メタトロンは目に魔力を集中させ、透明化のアマノの動きを読んで行く。そして、メタトロンは気付く。圧倒的に自分が押され負けている違和感に。


「こいつ!まさか!」


 メタトロンは、その場で腕と足を片方づつ斬られ、多大なダメージを受ける。


「サンダルフォン戻れ!こいつ!欠片を六つ全部持ってる!それはジャックの分身だ!」

「何!?」


 サンダルフォンは氷の弾丸をジャックに当てて、光になって消えたのを確認し、メタトロンの元へ急いで戻る。


「短期で蹴りを付ける作戦に出たか!数より質!」

「気付いた所で、もう遅い!」


 アマノの神器がメタトロンの胸に刺さる。刺された瞬間、全身が炎の鎧で包んで反撃に出るメタトロンだが、アマノの背後から現れたジャックに首を斬られる。


「がはっ!?」


 首を斬られたメタトロンは、後方で持っているサンダルフォンの心臓を投げる。


「残念」


 だが、素早く移動したアマノに、心臓を真っ二つに斬られる。同時に、サンダルフォンが胸を抑えてその場い朽ちるように落ちて行った。メタトロンも血を吐き、首をカクッと落とした。


「成功した……ね?」

「ええ……上手くいった」


 アマノはホッとしてメタトロンの体をワイヤーで縛る。だが、ジャックの心はモヤモヤしていて、何だかスッキリしなかった。だから、焦ったよう表情でメタトロンの斬れかけの首を完全にはねた。


「……!?び、びっくり……。一声かけてくれても良かったのに……」


 アマノがそう言って、ジャックの方を見た瞬間、メタトロンのはねられた顔がニヤッと笑い、宙に浮いたまま一回転した。


「良い感してるな……ジャック」


 アマノとジャックはゾッとする。同時に、二人は背後から何者かに体を強く拘束される。


「これは……」

「やあやあ!やるじゃないか二人共!」


 背後に居たのは、氷で作られた巨大なサンダルフォン像だ。氷の像の前には、ニコニコと笑うサンダルフォンが居る。ジャックは何が何だか分からなかったが、アマノは悟ったように目を細めた。


「心臓は偽物か……メタトロンの心臓も別で隠してる……そうね?」

「ピンポーン!心臓は魔法陣の中に隠してましたよ~」


 サンダルフォンはそう言って、魔法陣からチラッと氷で保護してる心臓を二つ見せる。


「メタトロンはなぜ生きてる!?首を斬ったのに!」

「ジャック……俺はここ百年以上最強と呼ばれる天使だぞ?この程度のピンチはいくつも潜り抜けてきた」


 メタトロンの体は炎そのものとなり、離れた首と体が炎状態でくっ付く。だが、すぐに炎状態から通常の状態へと戻った。


「まだ力を隠していたか」

「この状態になるには膨大な魔力と気力が居るが……相手を油断させるには最適な技だ」


 傷が治ったメタトロンは、暗くて深い瞳で、身動きの取れないアマノとジャックを観察するように見て、氷漬けにされているポム吉を見せつける。


「ポム吉!」

「これ以上ちょこまか動かれるのは厄介だからな」

「じゃあ、捻り潰すよ」


 氷の巨象は、アマノとジャックを強く握り、完全に圧し潰そうとしている。


「待て。アマノの方だけ殺せ。ジャックには精神的苦痛と敗北を植え付ける。大して強くないしな」

「あいあいさー!」


 ジャックは、欠片をアマノに預けていることもあり、身動きが取れなかった。逆にいうなら、その分、アマノには欠片の力があるということだ。アマノの圧倒的なパワーは、氷の巨象の手をいとも簡単に破壊した。


「まぁ、そうだよな」

「鬼の血も引いてるし、見た感じ力はお兄ちゃん以上だね。鬼の子だから、鬼ちゃんってね」

「……」


 アマノが氷を破壊して脱出するのは、メタトロンとサンダルフォンからしたら想定内だ。


「ライト.ファロン!」


 アマノが放った光魔法は、ジャックを縛る氷の巨象を一撃で破壊する。だが、一手早く動いたメタトロンが、ジャックの腕を後ろに回して取り押さえた。


「サンダルフォン!次は氷漬けにして拘束しろ」

「はーい!」


 サンダルフォンは、攻撃してくるアマノを避け、メタトロンの援護を受けながらジャックを体全身氷漬けにした。凍り付いたジャックは、一瞬にして温度を奪われ、じわじわと冷たい痛みを感じる。


(リオーノ.メルト、リオーノ.メルト)


 魔法で氷を溶かそうと必死だが、魔法で出来ている氷はそう簡単に溶けない。辛うじて体温を取り戻すが、体に力が入らないまま、まともに魔力を練れる状態ではなくなる。


「ジャック!」

「そっちは欠片六つ……二対一だが文句はねえよな?」

「子供を虐めるなんて……ちょっと心が痛むね」


 ジャックを心配するアマノだが、メタトロンとサンダルフォンの二人に囲まれ、絶体絶命となる。欠片の数は合計で同じだが、状況は圧倒的にアマノが不利だ。


「確かに女で子供だが、短期間で人間をあそこまで育てた。魔女以上の魔力、鬼以上の力、授かった力だけなら一流のガキだ。あんま舐めるなよ」

「分かってる。けど、やっぱ心が痛むわぁ~」


 メタトロンは疑ったような目で、大袈裟に胸を抑えるサンダルフォンをチラッと見る。


「あ、違ったよ。ただドキドキしてただけだ。へへっ……楽しいとドキドキしちゃうからさ」


 だが、すぐに照れ笑いをするサンダルフォンを目にし、鼻で笑って余裕を見せる。アマノにとって、その小さな余裕が怖かった。それは、まだ得体の知れない何かを感じていて、二人の本気を目にしていないからでもあるのだろう。


(ジャックが凍え死ぬ前に……終わらせなくては)


 神器天之月あめのづき神器魔標線まひょうせんを手に取るアマノは、片目に隠していた力を展開させる。目の色と輝きが変わり、紋章と共に脳裏に今見てる世界と別の世界が映る。


「真理の義眼」


 アマノは力を使用した状態で、突っ込んで来る二人の攻撃を避ける。二撃、三撃、放たれる炎と氷の攻撃を一手早く避け、一瞬の隙をついて攻撃を仕掛ける。ワイヤーで縛ったサンダルフォンを振り回し、メタトロンへ直接ぶつける。体制を崩した二人に、追い打ちを掛けるように光の魔法を放つ。

 メタトロンとサンダルフォンは、何ヶ所か深い傷を負うが、急所は全て外している。


「まるで分かってたかのように避けたな」

「避けたね。死角からの攻撃も避けたよ」

「やはりあの目か……。さっきと目が変わってた。今は普通に戻っているが、さっき奴の目は紋章が浮かんでいた」

「予知能力……てとこだね」


 サンダルフォンの一言は、アマノに悪事を咎められたような顔をさせた。それを見て、メタトロンとサンダルフォンはくすくすと嘲笑い、余裕な態度を見せつける。


「確かに貴方達の想像通り。けど、分かったからってどうも出来ないでしょ?」

「おいおい、お前は誰を相手にしてると思ってるんだよ?常に運命を変えて来た最強の兄妹だぞ?俺達は常に突破口を見つけて来た。大した問題じゃねえよ」

「そうだそうだ!私達最強の兄妹!最兄妹!」


 メタトロンの圧倒的な余裕の裏には、口だけでない実績がある。相手が最強の天使だと改めて知ったアマノは、一呼吸を置いて再び力を使用する。


(彼らが力に慣れる前にしとめなければ……真理の義眼!)


 内心、アマノは焦っていた。ジャックの命も危ないし、長期に渡れば不利になることも理解している。だからこそ、決着を焦っている。


「デス.ブレイド!」

「アイス.デザスター!」


 放たれた炎と氷は、生きているように動き回り、アマノの目を翻弄する。だが、真理の義眼で数秒先の未来が見えてるアマノからしたら、無意味に過ぎない。すぐに身を避け、攻撃を仕掛けようとする。しかし、次に見えた未来はアマノの動きを鈍らせた。


「なっ!」

「俺が余裕な態度を見せた時、そこで気付くべきだったな」


 数キロ離れた場所から、炎の壁が超スピードで近付いてきてた。それも、円状で近付いてきており、既に大きな球体がアマノ達を囲っている。


「魔法領域、デス.ルーン……お前はもう捕まっていたんだよ、ド三下」


 更に、氷の巨象が三体出現し、アマノを少しづつと追い詰めていく。メタトロンとサンダルフォンは、そんなアマノを炎の壁の中に取り残し、ジャックと共に壁の外へと逃げる。


「……コース.レゼン」


 アマノも追いかけるようにジャックの元へと転移し、メタトロンとサンダルフォンを刀で深く斬りつけた。


「ぐはっ!?転移!?」

「がはっ!忘れてた……普通に転移があったか……」


 攻撃を受ける二人だが、すぐにニヤッと笑みを浮かべる。瞬間、ジャックを囲っている氷が変形し、氷の槍となってアマノの胸を突き刺した。


「がはっ!?」

「何てな……忘れるなんてギャグ、誰がするかよ」

「絶対転移でジャックの元に来ると思ったのよね」


 血を吐いたアマノに、勝ち誇った二人が追い打ちを掛ける。二人は、持っている炎と氷の剣で、アマノの胸を深く切り裂いた。


「……ッ!」


 ジャックは氷の中で絶望する。アマノが目の前で切り刻まれ、無残な姿で地に落ちていく。心の底から、抑えきれない感情がこみ上げてきて、落ちていくアマノの姿が、クルーニャに殺されたサタンと重なって見えた。

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