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ミトロジア  作者: ビタードール
一部】一章『アマノとジャック』
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第47話【閉ざす者】後編

 神界の北欧領域、広々とした野原で主神同士の戦いが行わていた。ゼウスとロキは、お互いに間合いを探るように歩いており、睨み合ったまま攻撃を仕掛けない。


「来ないなら、とっておきを見せてあげるよ」


 ロキの体から複数のロキが現れる。その複数のロキからもロキが現れ、次第に辺り一帯がロキだらけになった。


「こんな大量の分身を……」

「あら驚き!ロキがこんなにいっぱい!」

「無意味!雷霆!」


 だが、ゼウスの神器雷霆によって辺り一帯のロキが攻撃される。と思ったが、ロキ達はぐにゃぐにゃに揺れるだけで、攻撃どころか触れられてもいない。


「残念、これは全て幻想だよ!ばいばいゼウス君!」


 複数のロキは一斉に喋り、ゼウスの周りを踊り回る。更に、雲状態のゼウスに音の衝撃波があちらこちらから飛んでくる。音の攻撃を受けたゼウスは、体をよろめかせて本物のロキを探そうと目に魔力を集中させる。だが、本物らしき姿はどこにも感じられない。


「こうなれば全員調べるのみ」


 ゼウスの雲状態の体は、全てのロキを包めれる程広がる。雲がロキ達に触れている今、その中に本物が居れば瞬時に分かる。


「見つけたぞ、ロキ」

「バッカッだね~。これを待っていたんだよ」


 本物のロキの体から放たれた、爆音とも言える音魔法は、ゼウスを内側から痺れさせ、神経に直接響いた。ゼウスが血を吐き、雲状態を解除すると、それを読んでいたようなロキの蹴りが繰り出される。しかし、ゼウスはその蹴りをいつの間にか避けており、雷霆を振り落とす状態に入っていた。


「クロノス.タイムか。それほんと嫌い……」


 ロキに雷霆が直撃したように見えた。だが、実際は地面や空気が揺らいだだけで、ロキ自身はゼウスの背後に回っている。更に、ロキの体がゼウスと同じように雲状態になり、雲状態の手でゼウスの胸を突き刺す。当然、ダメージはないが、そこで放たれた音によって再びゼウスの体が蝕まれていく。


「出たな……貴様最大の能力、相手の魔法そっくりそのまま使えるコピー魔法……」

「君の時間停止と透過を使わせてもらったよ。ほんと便利だね」


 主神ロキの最大の力、コピー魔法。神々の間では有名な能力だが、その実態は謎に包まれている。コピーを使えるなら、強い魔法をコピーして使い放題。当然、最強の地位を得ることが出来る。

 しかし、ロキは主神の中で飛びぬけて強い訳ではない。そこが最大の謎だ。ロキのコピー魔法を知る者は、多かれ少なかれ気付いているのだ。コピー魔法は万能ではなく、弱点となる穴があることを。


「余裕ぶってないで来たらどうだ?」


 ゼウスも平然を装いながら、コピー魔法の実態を推理していた。


(やはり儂の魔法を連発してこない。クールタイムがあるのか?いや、だとしても最初から使って見せるのが普通……わざわざ儂が使ってからクロノス.タイムを使いおった。透過は持続中だが……一体どこが欠点だ?魔力を使い過ぎるとかか?それとも何等かの代償を払うとか?いや、やはりクールタイムがあるのが一番怪しい……)


 考えれば考える程、深々とハマっていく謎。一見万能に聞こえるコピー魔法、それに穴があるのは明白なことだ。でなければ、ロキはこの能力でもっと実績を得ることが出来るのだから。


「無駄で無意味……ゼウス君ってそんなに賢くないじゃん。この能力の実態を見破るなんて、君に出来ないでしょ」


 ロキはゼウスの心をなぞるように挑発し、手から雷霆を取り出す。更に、再び複数のロキを出現させ、ゼウスを取り囲む。


「雷霆まで……コピーを……」

「フルボッコだよぉ~」


 ロキ達は、雲状態のままゼウスに飛び掛かる。ゼウスは慌てて空中へ逃げるが、ロキ達もピッタリとゼウスに続く。


「やばい……奴が透過を使っている今、触って本物を見分けるは不可能。それに、ほぼ全てが偽物だとしても、本物が混じってきて音の攻撃をされたらそこでアウトじゃ……どうにかこの状況をひっくり返さなくては……」


 ロキ本体が分からない今、クロノス.タイムを使うのも無意味だ。そして、起死回生のチャンスを狙って、偽物のロキ達から逃げ続けるが、突然音の衝撃を受けて体が痺れる。


「見える者から逃げ過ぎたね」


 景色から浮き上がるように現れたロキは、ニヤリと笑ってゼウスの体に手を突っ込む。


「透明化か……」

「気付くのがおせぇ……いつもそうだよ……」


 ロキが手から放った音は、ゼウスの体を破壊へ追い込んだ。余りのダメージで魔法を維持できなくなったゼウスは、透過が解けて雷霆も手放してしまう。同時に、ロキの透過も解除されて、雷霆も消える。ボロボロに傷を負ったゼウスは、白目を向いてそのまま落下してしまう。


(勝てん……同じ能力を持つ相手……相手が戦略家なら尚更……。コピー魔法の事態や謎も分からぬまま死ぬのか……)


 朦朧とするゼウスの視界に、ゆっくりと降りてくるロキが目に留まる。ロキの体は通常状態に戻っており、雷帝も持っていない。


(透過も雷霆ももう用済みか……ハハッ。い、いや待てよ?透過も雷霆もさっき手放していた。それも、儂の透過が解けた瞬間……同じタイミングで。思い返せば、クロノス.タイムも儂が一度使った後に同じく一度使っただけだ。まさか……コピーの実態というのは……)


 最後の最後で謎の正体に迫る。小さくて見逃しそうだった手がかりが、少しづつ確信へと変わっていく。


「回数、または時間だ……」

「……ッ?何のこと?」

「貴様のコピー、相手が使った回数しか同じ魔法を使えない。だからクロノス.タイムは一回だったし、透過や雷霆も儂が使用中しか使えなかった。そうだな?これがコピー魔法の欠点だろ?」

「おっ。最後の最後で気付いたんだね。大正解。もっと言えば、クロノス.タイムのような認識すら難しい魔法は、認識した回数だけど……よく分かったね。これで何のモヤモヤもなく死ねるって訳だ」


 飄々と笑うロキは、槍で瀕死のゼウスにとどめを刺そうとする。瞬間、ゼウスは満面の笑みを見せた。


「フッ、ほんとスッキリした」


 その笑みと同時に、上空から落ちて来た雷霆がロキの胸を貫き、そのままゼウスの胸にも突き刺さった。


「がはっ!?」

「ぐっ……!くくっ……認識できるような状況ではなかったようじゃな」

「時間を止めて、雷霆を上空へ投げたのか?くっ、小賢しい……最後の悪足搔きめ」


 ロキは血を吐いてよろめくが、まだ余裕そうな表情で槍を振り下ろす。しかし、槍は何者かの魔法によって弾き飛ばされた。


「なっ!?」

「そこまでだロキ……お前のコピー魔法の弱点が分かった今、抵抗しても無駄だ」


 そこに現れたのは、主神のシヴァとアヌビスだ。二人共鋭い目をしており、ロキを囲むように移動する。


「助けを呼んでいたのね……プライドの高いゼウス君なら一人でやりきると踏んでいたのに……とんだぁ読み違いだあぁ。僕どうしよっかなぁ。へっへ、へへへ……ロキ驚きってね、ハハッ」


 よろめいたまま立ち上がるロキは、ヘラヘラと笑いながらどこを見ているか分からない目をゆっくりと閉じた。そして、二人の不意をついたようにゼウスの首根っこ目掛けて手刀を振るう。


「ぐがっ!」


 だが、地面から突き出た手によってロキの首根っこが掴まれ、アヌビスによって素早く拘束された。


「へっ、変だな。いつの間にか他の神を頼るようになっていたんだい?君はいつも言ってた……神は群れない頼らない……それに関しては僕も同意見だったのに……これだから君は嫌いだよ。大矛盾野郎」


 ロキはヘラヘラとしているが、同時に怒りの表情を見せている。しかし、肝心なゼウスの耳には届いておらず、ただの独りよがりの怒りになった。


「ロキ、貴様の罪は重すぎる……北欧の神々までも巻き沿い反乱を起こした。事が終わったら覚悟しとけ」

「事が終わったら?フフフッ、終わるのはどっちだろうね?神々か奇石団か……言っとくけど、彼ら勝算があって来たんだからね?何とかなるなんて思うなよ」


 闇のように深いロキの目と言葉は、シヴァとアヌビスをほんの少しだけ怯ませる程だった。


 *


 同時期、アイムはマモンに押されてた。欠片三つ同士の戦いが、マモンの気まぐれによって、倍の力の差がついてしまったからだ。


「フォティア.ラナ!」

「フォティア.ラナ!」


 同じ魔法でも、一度に込める魔力に差がある為、アイムが押し負けてしまう。


「くっ!野郎調子に乗りやがって」

「まだだま遊んでいたいのが本音だが、今は組織で動いてる。悪いが任務遂行に励ませてもらうぜ」


 一瞬にして距離を縮められたアイムは、マモンの拳を直で顔面に受ける。


(やべっ!流石にこれを貰うとやばい。死にはしないだろうが、致命傷は確実)


 アイムは、自身の顔面を真っ二つにすることで、マモンの拳を回避する。更に、割れた顔を繋げている血が独りでに動いて、モンスターの如く拳を引きちぎった。


「げっ!気持ち悪い!美しさに欠ける品の無いことしやがる」

「欠片増やしたお前が言うかよ」

「それもそうだな……俺が間違ってた。わあったよ。お互い汚く生きようぜ」

「言われなくても……お前をボロ雑巾のように小汚い姿にしてやる」


 大口叩いたアイムだが、今は逃げに徹底した上で攻撃を仕掛けることが最善の手だった。破壊された建物の中に逃げ込み、スピードで追い付かれないよう複雑な場所へと逃げ込む。

 マモンも獲物を追う狩人になった気持ちでルンルンと飛び回り、アイムが逃げ込んだ建物を徹底的に破壊し回る。


「じれったいぜアイム!お前の可愛い顔を見せてくれよ!こう見えて結構寂しがりなんだぜ俺は!」


 獲物を見失ったマモンは、付近に隠れているであろうアイムに向かって大声で言う。大きすぎる声にビビるアイムだが、決して姿を出さず、建物の影でやり過ごす気だ。


「そこか!」


 しかし、マモンはアイムが隠れている所に魔法を放とうと手の平を向ける。


「バカな!?なぜ分かった!?」


 位置がバレたこと驚きを隠せないアイムは、慌てて建物を飛び出す。そして、再びマモンとのチェイスが始まる。

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