第42話【真理の義眼】
アマノの話を聞き覚えた主神達、それとアイムとジャック。
皆、多かれ少なかれ表情を変えている。
(アポロンって奴、死んだから良いけど……ムカつく)
アマノの話を聞いて、一番怒っていたのはジャックだった。
(こいつ、昔はルゼみたいな明るい奴だったんだな)
アマノの話を聞いて、一番驚いているのはアイムだった。
「何て可哀想なアマノ!間違っていたのは我々神々だ!アポロンって奴は酷いね!民主にも誤解を解かないと!」
大袈裟に言ったロキを見て、主神達は皆顔を引きつらせた。
「何だその胡散臭い言い方」
「言い方?僕は僕の伝えたいことを分かりやすく伝えたんだよ?皆も僕と同じ考えにならないのかい?」
「確証がないではないか」
「記憶見ればいいじゃん。魔法の使えない空間で記憶を見る。それで十分だろ?」
「そうだな」
ロキの提案にコクっと頷くのは、ゼウス以外の三人の主神だ。
「どうしたんだい?君は僕の提案に頷いてくれないのかい?ゼウス」
ロキの鋭い目付きは、ゼウスを後ろめたい気持ちにさせた。
「困るのだろ?アマノの言う通りアポロンが悪ければ、ギリシャに泥を塗る。アポロンは英雄扱いされてる神だからそれはそれは困るだろう。それに、君はアマノの件で我が北欧のオーディンを始末している。身勝手な判断で」
ロキは、ゼウスの心に漬け込むように言う。周りの皆、そんなロキが少し怖かった。
「言いがかりはよせ。アポロンの件はまだしも、オーディンを殺してはいない」
「君も嘘吐きだね。まぁいい、取り敢えずアマノの記憶を見させてもらうよ」
ロキが取り出した魔道具は、当たり一体魔法が使えない空間にする魔道具だ。その状態で、主神達がアマノの記憶を見ようとする。
「待って!」
大の大人五人が一斉に近寄ってきたせいか、アマノは警戒したように声を発した。
「何だ?」
「一人にして。見られたくない記憶だってある。それを五人にハッキリ見られるのは流石にいや。誰か一人にして」
「儂だ!儂が見る!」
いち早く反応したのはゼウスだ。だが、それを分かっていたかのようにロキが止めに入る。
「ダメ。ゼウス君は自分の優位の為、嘘をつく可能性がある」
「何だと?」
「僕も客観的に見てアマノを守ってるように思えるだろ?てことで、僕はスサノオ君がいいと思うんだけど」
「俺もスサノオでいいと思う。一番信用できる」
「決まりだ」
よって、アマノの記憶を見るのはスサノオとなった。スサノオは、無表情のままアマノの額に座り、数秒触れてすぐに手を離した。
「この子の言う通りだ。記憶を見たところ、この子は正当防衛のように思える。まぁ、いくら困惑していたとしても、やりすぎだとは思ったが」
スサノオの一言を聞いた主神達は、皆ため息をついて椅子に座った。
「神殺しのアマノ。間違ってはいないけど、言い過ぎだね。こんなんで神殺しの異名が付くなら、皆神殺しだよね」
「まぁ、この件は民主にまだ伏せとこう。すぐに言っては混乱を招く。希石団の件やアイムの件で困惑してる民主を更に困らせてしまう」
「事が落ち着いたら公表しよう」
アマノ達を含めた話はそれで終わった。そして、アマノ達三人が部屋を出ると、主神達だけの話が進められる。
「希石団の件だが、明らかに内通者が居る。今回はロキ、アヌビス、シヴァの三人の主神が眠らされる自体に陥った。これがあったから希石団は我々を追い詰めれた。アイムやアマノらの助けがあったから助かったが、本来あってはいけない事態」
「眠さられる前の記憶を整理してみらどうだ?」
スサノオの提案を聞いた三人の主神は、記憶を捻じるように考えた。
「あやふやだ」
「僕も」
「寝むる直前に眠りの攻撃を受けたとは限らない。眠るまでに時間を必要とする魔法かもしれない」
「そう考えると記憶はあまり当てにならないな」
皆、再び考え込むが、すぐにシヴァが発言をする。
「身近な者だというのは確定だよな?でなければ我々三人を眠らさせるとは思えない」
「そうだね。それに、僕ら三人は別々の場所に居た。複数犯かもしれないし、転移を使っての犯行かも」
「普通に考えてた主神の側近だろ」
「側近じゃないなら内通者は我々の中に居ると考えるべきだな」
主神達は、お互いを警戒することを強制された。誰が内通者か分からない状況の中、これからも情報を共有していくのは、余りにもリスキーだ。
*
アイム達がこれから住む場所は、ギリシャ神話にあるお城だ。偉い神々が何人か住んでいる広すぎるくらいの城で、温泉や遊び場などもある。
三人が用意された部屋に戻ると、ルゼとポム吉が楽しそうにはしゃいでいた。
「ぺちゃ!」
「ポムちゃん可愛い!」
「照れちゃう照れちゃう!」
ルゼは純粋にポム吉を可愛がっているが、ポム吉はルゼの胸元でエロ吉モードを発動している。
「あっ」
アマノとジャックは、悟ったようにアイムの表情を見上げる。予想取り、片目を痙攣させてポム吉への怒りを露わにしている。
「このエログマ!」
「ほわっ!?」
ものの数分でポムはルゼから離され、ぺちゃんこになるまで殴られた。ポム吉はアイムの片目同様、手足を痙攣させている。
「しよっ、しょんな」
「ざまあ見ろ」
ジャックは、そんなポム吉を見て誇らしげに笑う。アマノもクスクスと笑っている。
*
その日の夜、アマノを訪れてスサノオがやって来た。
「アマノ、少し聞きたいことがある。ちょっと来てくれ」
「どこに連れてく気だ?」
だが、ジャックはスサノオを警戒して鋭い目付きで睨んだ。
「心配ならそなたも来い」
「心配。そなたも行く」
アマノとジャックは、スサノオと共に城の外で立ち話をすることになった。
「そなたの記憶見た時気になったのだが、未来予知のような能力を持ってるか?」
「持ってると言えば持ってるけど、最近目覚めた力」
ジャックも知らないことだった。少し驚いた表情を見せるが、すぐに話を聞くことに徹底する。
「最近か。もしかして未来予知をする時、目に力を入れたり、目を意識するか?」
「ええ。少し目に違和感が走る感覚になる。最初は目が痛かったけど、今はその痛みがなくなってきた。サンダルフォンと戦った時も少し使ったけど、その時はまだ慣れていなかったから一二回しか使用してないわ。もしかして、この力について知ってるの?」
「知ってる。恐らく、真理の義眼だ」
「真理の義眼?」
「自分の瞳だからよく見たことはないだろうけど、力を使用する時瞳が変わる」
アマノは、スサノオから貰った手鏡で瞳を移し、未来予知の力を発動させる。
「ほんとね」
「凄い!」
アマノの瞳は、限りなく海に近い水色になって紋章が浮かび上がる。それを見たスサノオは確信したように頷いた。
「間違いない。真理の義眼だ」
「てことは、過去に同じ目を持つ者が居たの?」
「過去に二人」
「誰?」
「一人は、拙者の師であるギリシャのアスノ。もう一人は最初の神である日本のアメノ。またの名を天之御中主神」
「天之御中主神の方は知ってる。誰でも知ってる有名神だけど、そんな目があることまでは知らなかった」
アマノは、そう言って不思議そうに自分の瞳を何度も見る。
「これは拙者の憶測だが、真理の義眼は継承されてる。最初の神のそなた達に」
「私最初の神じゃないわ。それに、貴方の師匠も」
「そなたは魔女と鬼から生まれ、悪魔の力で神になったな?」
「そうだけど……それが何か関係あるの?」
「拙者の師アスノは神工的に造られた」
「……それはつまり、真理の義眼を継承する者は神から生まれてないと?」
「察しがいいな。そういうことだ」
ジャックは、訳が分からなくなっていた。いっぺんに新しい情報が入ってきて、それがよりファンタジーな話となっている。
「そしてそなたを含めた三人は皆違う時代を生きている。これが真理の義眼が受け継がれてると推測する理由だ」
「なるほど。それはそうと、貴方の師匠は神工的に造られたと言ったわよね?一体誰によって?」
「分からない。アスノ様が死んだのはもう何千も前のことだ。拙者がアスノ様を見たのは幼少期だしな。ただ、アスノ様が言うには仮面の男らしい。それも少年か青年くらいの」
「仮面の男……」
「それはともかくだ。真理の義眼は素晴らしい力だ。それは決して強いという意味ではなく、価値のある力という意味で捉えて欲しい」
「ありがとう……色々教えてくれて」
「事が済んだら日本神話の方へ来るといい。ゼウスは何かと信用ならないし、拙者はそなたの力を買っている。隣の少年も大歓迎だ」
スサノオは、アマノを一人の神として見ていて、魔女の子だとか神殺しだとか、過去というものを気にも止めていない。
ロキはアマノに協力的だったが、スサノオは単純に真実だけを目にして話してる感じがして、他の主神は勿論、ロキ以上に信頼出来た。
「ふんっ。まだ信用してないからな」
だが、ジャックは相変わらず疑い深い。
「結構結構。それでは拙者は戻る。用事があれば遠慮なく尋ねてくれ」
「どうも」
スサノオが去った後、アマノはもう一度真理の義眼をジャックに見せた。
「どう?」
「かっこいい」
「ん?」
「何?」
アマノは、真理の義眼のままジャックをじーっと見詰めた。ジャックは目を細め、徐々に身を引く。
「ジャックの心の中見える」
「え?ほんとに?何が見える?」
「……ふっ、ははっ」
控えめだが、無邪気に笑うアマノは、昔のアマノの面影が少しある。
「何?何が見えたの?教えてよ」
「内緒」
「そんな……モヤモヤするよ」
ガクッと落ち込むジャックを見て、アマノは揶揄うようにその場にしゃがみ込んだ。
「今考えてること当てようか?」
「え?思考も読めてるのか?」
「温泉、行きたいでしょ?」
「おぉ、本当に読めるんだな」
「ポム吉にバレる前に行きましょ。あいつ来たら覗きに来るから」
「そうだね」
アマノは、ジャックの心の中を見たまま、薄く笑って温泉へと向かった。




