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ミトロジア  作者: ビタードール
一部】一章『アマノとジャック』
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第41話【神殺しのアマノ】

 アマノとジャックは神界に訪れていた。当然、安全の為アイムも一緒だ。


「ある程度の事は覚悟しとけよ。民主の中から命を狙ってくる者も居るだろうが、神々皆から狙われるよりはマシだと思え」


 アイムの傷は完治しているが、まだ精神的に疲れており、少し眠そうにしてる。


「ありがとうアイム。私達の安全をも賭けて戦ってくれて」


 アマノにしては素直なセリフだった。アイムも少しびっくりしたように眠そうな目を見開き、すぐに瞬きをした。


「デモに言われただけだ。お前らガキ共をよろしくって」


 嘘だった。ただの照れ隠しで言ったセリフだ。


「世話になってばかりだな。この前もメタトロンやマモンから助けて貰ったし」


 ジャックもアマノに釣られてか、子供らしく素直だ。


「お前まで何だよ」


 こんなに素直に礼を言われると思ってなかったアイムは、少し照れたように瞬きを長めにした。


「いでぇ!?」


 だが、瞬きを長めにしたせいで、柱にぶつかってしまう。


「大丈夫か?」

「だっ、大丈夫」


 恥ずかしそうにするアイムは、誤魔化すように足を早め、奥の扉をゆっくりと開けた。


「余り大きな態度を見せるなよ。場合によっては、約束を守る連中ではないからな」

「分かった」


 扉の奥へ進むと、主神五人が丸テーブルを囲って座っていた。手前には三つの椅子があり、ジャック達を待っている。


「さっそく話を進めようか」


 三人が席に着いたのを見ると、ゼウスが口を開いた。ゼウスの傷も完治しているようだが、アイム同様、精神的に疲れて眠そうに見える。


「我々神々はお前達二人の安全を保証する。今までのように追い掛け回すことはしない。代わりに、お前達二人にも対希石団の緊急時に戦力となってもらう。いいな?」

「はい。ありがとうございます」

「ただし、余り外を出歩くな。お前の神殺しの罪は消えない。民主はそれを忘れていない」


 冷静を装っていたアマノだが、ゼウスの一言でプッツンした。


「誤解です。確かに、私は師匠である神を殺しましたが、それは正当防衛です。あの時、誰も私に耳を貸してくれませんでしたが、全て誤解です。師匠は私を命の危険に晒した。それ故の行動です」

「魔女の子アマノ、見苦しいぞ。安全を保証されただけで満足するべきなのに、なぜ罪を認めようとしない?今更その話を信じろと?」

「事実です。私の記憶を見てもらえれば分かります」

「記憶を操る可能性もある。記憶を見ろと提案したが、提案した本人の記憶だ。記憶が無実なのは当然だ」

「聞く耳を持たないのね」


 アマノは、諦めたかのように身を動かしたが、両隣に居たアイムとジャックがアマノを強く引き止めた。二人共、目で「堪えるんだ」と言い、アマノの服を引っ張っている。


「ゼウス君って酷いね。せめて聞くだけ聞いてあげたら?聞くだけなら損もないでしょ?」


 だが、何か悟ったようにロキが提案をした。


「貴様、マモンやメタトロンの襲撃があった時、ぐっすり眠っていた癖に生意気なことを」

「だから、それは奴らにはめられたんだよ。僕だけじゃない。アヌビスとシヴァも眠っていた。勿論、魔法によってね」

「つまり、内通者が居たと?」


 沈黙が走る。関係ない話故、アイム達は気まずそうにその話を聞いている。


「その話は後だ。アイム達が居る今話す内容ではない」


 だが、スサノオが話を終わらせてくれた。


「そうだね。今はなんだっけ?アマノの話を聞くんだっけ?」

「聞かんでもいい。聞くだけ無駄だ」

「ゼウス、勝ちを得たのは向こう側だ。話を聞いてやるのは神としても男としても必然だ」


 再び、スサノオが口を挟む。


「勝ったのはアイムだけだ。奴は勝ってない」

「じゃあお前だけ聞くな。拙者はこの子らの話を聞きたい」

「そうだね。ゼウス君だけ聞かないことにしよう」

「それいいな」

「そうするか」

「分かった!分かったから儂を省くな!」


 周りの主神達がスサノオに乗ってくれたことで、アマノの発言が許される。


「じゃあ話して、君の師匠を殺した理由。その潔白性を」


 アマノは思い出す。トラウマとも言える自分の過去を。


 *


 アマノは、育ての親ジィジによって、10年以上下界で過ごした。幼少期、デモ.ゴルゴンによって命を救われたアマノは、17歳の誕生日を迎え、神界へ行くことを決意した。


「本当に行くのですか?」

「勿論!行動しなきゃ」


 この頃のアマノは、明るく元気なごく普通の子だ。そして、今日をもって神界に行く理由は、神として一生を過ごす為だ。


「娘が嫁に行く気分じゃわい」

「たまに顔見せるから」


 アマノは、デモから授かった教材で神々の知識を勉強していた。後はその目で神々の世界を見て、その体で神々の世界に触れるだけだった。


 だが、天界に行って何をしていいか分からなくなった。見たことのない生き物、触れたことのない物、感じたことのない世界、全てがアマノを困惑させた。


「申請は通っているけど、どの神話に属すか分からない」


 神々の世界には、神話と呼ばれる国に似た地域で区切られている。アマノは神としての申請は通っているが、どの神話にも属していなかった。


「神話に属したいのかい?」


 だが、一人の神が困惑してるアマノに声を掛けた。


「はい、そうですけど……」

「私に着いてくるがいい。名前は?」

「あっ!アマノです!」

「私はアポロン。よろしく」


 アポロン――彼が後のアマノの師匠だ。アポロンはギリシャ神話の神で、アマノもアポロンを通じてギリシャに所属した。


「アポロン様、先日受けた仕事終えました」

「おぉ、早いな。やっぱ君は優秀だ」


 数ヶ月が経つも、アマノはアポロンの元で働くようになっていた。アポロンから仕事を受け、仕事を通じて学びを得ていた。


「君は17年前、オーディンが助けたという魔女と鬼のハーフ何だろ?」


 アポロンは、アマノが魔女の子だと気付いていた。


「何でそのこと……」

「大丈夫。言わないであげるから安心して」

「ありがとうございます」


 アポロンは、約束通りそれを言わなかった。それも一年以上。アマノがアポロンを殺すきっかけとなった日は、突然来た。

 一年が経ったある日のこと、アマノがアポロンに言った一言がそのきっかけだった。


「一人立ちしようと思います」

「なんて?」

「アポロン様に頼るのをやめて、自立した神として生きていこうと思います」

「まだ早い。それに君は魔女の子。バレれば大問題になる」

「その時はその時。私は一人の神として自立したいのです」

「ダメだ」

「……分かりました」


 アマノは口で納得したが、それは表面上の納得であり、分かったフリをしてアポロンの屋敷を出て行った。それがアポロンの逆鱗に触れた。


「18年前に姿を消した魔女の子がここら辺に潜んでるらしいぜ」

「白髪の女の子、魔女の子がこの付近に住んでるって。捕まえれば報酬や名誉が貰える。生死は問わないとよ」


 アマノがアポロンの元から逃げて数時間で妙な噂が広がった。アマノはその噂に脅え、コソコソと逃げ回るように生きるしかなかった。


「あっ」


 そんなアマノの前にアポロンが立ちはだかる。その晩は、雨が降っていて、その雨がアポロンの本性を暴いていくようにすら見える。


「戻っておいで。もう君の噂は広まっている。私の元へおいで」

「酷い!貴方が噂を広めたのでしょ!?」

「ダメと言ったのに私の元から逃げたからだよ」


 アポロンはそう言ってアマノの頬を掴み、力んだ目でじーと見詰めた。


「君は自分の顔を見たことないのか?」

「へっ?」

「君は可愛いのだよ。君は女神と呼ぶに相応しい美しさがあり、その美しさ以上の能力をたくさん持っている」

「アポロン様?」

「大人になると自立心が出てしまう。それをずっと恐れていた」


 アポロンは薄っぺらな神の皮を脱ぎ、獣の如く本性を出した。まだ幼さが残るアマノの顔に顔をすり合わせ、腕を掴んで体を擦り合わせてきた。


「やっ……なっ、何をしてるのです!?」

「約束しなさい。もう逃げないと……約束するのです。私が君を永遠に生かしてあげるから」


 アポロンはそう言ってアマノを抱き締めるが、何だか気色悪くて、ゾッとした気分が残る。アポロンはそのままアマノを押し倒し、顔や括れを掴んでいやらしく触ってきた。明らかに、度を超えた接触だった。


「アポロン様、おやめ下さい」

「約束してくれたらやめるよ」

「ひっ、酷い……」


 アポロンは、とうとうアマノの服を脱がし、肌を直接触った。


「やめて!!」


 だが、アマノの放った魔力によって吹き飛ぶ。アポロンはすぐにアマノを追い掛けたが、恐怖でいっぱいになったアマノに返り討ちにされる。鬼以上の力を放つ手で殴られ、顔の原型が無くなるまで踏み潰された。その時のアマノは、無我夢中で目の前の敵を仕留めるハンターその者。目付きや表情は今のアマノに限りなく近い。


「はっ……」


 我に返って気付く。自分が踏み殺したのは、一年以上自分を育てた師匠アポロンだということに。それ程、精神的に追い詰められていた。

 考えることを放棄したアマノは、布を羽織ってジィジの居る下界へと逃げた。


「アマノ様!久々に帰ったと思えばどうしたのです!?」


 布の下が下着だったこともあり、アマノが普通の状態じゃないと察したジィジは、優しくアマノを抱き締めた。その行為は、アポロンの行為と似ているようで別物だ。

 アマノもその温もりが本物だと確信し、安心したように涙を流す。


「ダメだった。自分の師匠殺しちゃった」


 ジィジはアマノの言葉を聞くだけ聞き、後は一切語らずにただアマノを赤子の如くあやした。

 その日を境に、アマノの性格や表情は180°変わった。簡単に誰かを信じたりはしないし、明るさも笑顔をもほとんど出さない。そんな鉄のような女神を生んだのは、アポロンという神が原因なのだろう。

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