表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ミトロジア  作者: ビタードール
一部】一章『アマノとジャック』
37/170

第36話【交渉】

 アマノとジャックは森へ戻っていた。サンダルフォンとの戦いに疲れ切っており、昼を過ぎてもベッドの上だ。


「んんっ……まだ疲れてる。ん?」


 ジャックが目を覚ますと、隣にはアマノが居た。いつもと違う光景に少し動揺するも、もう一度毛布を羽織って眠りに着いた。眠りに着くその表情は、とても清らかで赤子のような表情だ。普段のジャックが見せる表情ではない。


「起きたのジャック?」

「……」


 だが、アマノの声を聞いて、内心困りつつも寝たふりを続ける。


(もう少しだけ、一緒に寝たい)


 心の中はとても正直だが、それを本人に言えるジャックではない。


「寝たふり?それとも二度寝?さっき起きたよね?」

「……んん」


 ジャックは、以前寝たふりを続ける。


「昨日は残念だったわね。私達の安全と引き換えに双子を神々に引き渡す作戦が水の泡。まさか突然消えるなんて……。きっと団長マモンの仕業なんだろうけど」

「……」

「けど、欠片が計三つになったから得したことには変わらないよ」

「……」

「あら、ほんとに寝てるのかな?怪しい……いたずらしちゃうかもよ~」

「……」

「ほんとに寝てるのね。ならキスしちゃおうかな」


 ジャックは、その言葉を聞いてドキドキした。だが、今眠ってるふりを止めれば、プライドに似た何かが傷付く気がして止まなかった。それに、好奇心がこれから起きるであろうことを拒んでいなかった。


(どうしたらいい?アマノとしていいのか?してしまっていいのか?人殺し以上にやばい気もする……目には見えない何かを失うような……)


 ジャックがごちゃごちゃ考えている間に、唇に妙な感覚が走る。柔らかい何かが当たる感触。


(まじか……)


 そう思って恐る恐る目を開ける。


「え?」


 しかし、目の前にあったのは、ポム吉の唇だった。アマノがポム吉を持っており、唇に触れているのはポム吉の唇だ。


「照れちゃう!」

「お目覚めですか?眠り姫。王子ポム吉様のキスはいかかです?」

「最悪……」


 揶揄うアマノと純粋なポム吉は、ジャックの目覚めを更に悪くさせた。ジャックは露骨にガッカリし、拗ねてもう一度眠りに着く。


「ああ、拗ねっちゃった」


 *


 同時期。

 メタトロンは、目覚めてすぐに周りを見渡した。近くではマモンが座って寝ており、少し遠くではサンダルフォンが手当された状態で横になっている。


「おはよう」


 プロケルが目覚めたメタトロンに気付き、ティーカップにココアを注いだ。


「……俺気絶してたから、色々分からねえ」

「サンダルフォンからテレパシーで『助けて団長!副団長!』って情けない声が聞こえた。だから撤退したわ」

「欠片は?」

「貴方とサンダルフォンの欠片は奪われていたけど、変わりにテュポーンが神々から三つ程欠片を奪ってたわ。こちらも二つ奪った」

「じゃあ、あんま収穫はなかったか?」

「戦力を減らせたし、欠片の数がプラスだったから良い収穫よ」


 淡々と話す二人は、親子のように自然体で居る。あのメタトロンの表情が、比較的清らかに見えるほどにだ。


「けど悔しいな。ジャック達、まだ仲間が居るみたいだ。魔法を無力化する神が居たんだ」

「こっちにも一人来たわ。この前魔界を支配寸前に追い込んだことで有名になっていた堕天使、自称魔王サタン。大会第三位の天使でもある女……」

「厄介だな。向こうの戦力も以外とある。しかも、完全に仲間って訳じゃなくて不規則に手伝い合うのが逆に厄介だ」

「けど所詮は互いの利益の為に協力してる連中……私達に劣るわよ」

「勝る劣るは知らないが、神も悪魔も、アイムもジャックもねじ伏せて勝利するのは俺達だ」

「流石、未来の王様」


 プロケルがあっさりと放った言葉に違和感を持った。間違いを確認するように表情を伺うが、その表情は子供を見つめる母親のように清らかだ。


「俺が王様?マモンじゃなくて?いや、俺はこの世の頂点に立つが、マモン大好き悪魔のお前がそんなこと言うのは変だ」

「彼はただの暇人。この世の全てを知って、この世の全てを見て、この世の全てに触れたい底なしの欲の塊。ただ生きているだけの日々に痺れを切らして、こんなバカなことをしているの。私はそれを見届けるだけの女。私も彼も、貴方のような野望や執念はないの」

「……まぁ、そんな気していたよ。こいつは何も考えてないって。けど、妙に惹きつけられる何かがあって、その何かに共感してしまって、こいつの近くに居れば何か大きな物を得れるっていう確信があった。理由なんてどうでもいい……俺も、奴も、結局は我が道を行くだけ」

「信仰心の強い純粋無垢な人間の少年は、天使となって現実を目のあたりにし、かつて信仰していた神となろうとする。とてもロマンチックな生き様……女なら誰もがときめいてしまうような人生を送ってる。その波乱万丈な道を歩いてきた貴方を羨ましいとも思もう。だから団長は貴方を気に入っている。似てるけど、自分に持ってない物を持ってるから、互いに惹かれ合うのでしょうね」

「……そうかもな」


 メタトロンは表情と目線に困り、深く長めにココアをすすった。ココアを飲んだ後のメタトロンは、スッキリした様子で唇を小さく舐める。


 *


 ジャックやメタトロンからしたら昨日のことだ。アイムがサタンと別れ、ルゼと共にしたこと。


「助け出してくれてありがとうございます」


 炎の巨人は、膝をついてアイムにお礼を言った。どうやら、マモンに強制的に協力させられていたようだ。


「お前はどこから来たんだ?」

「魔界の最果ての地です。私は巨人族の生き残りなので、そこで静かに暮らしていたのです」

「それを嗅ぎ付けたマモンに操られていたってことだな?」

「はい。アイム様が魔法を解いてくれなければ、奴隷のように扱われいました」

「まっ、まあな」


 魔法と呪いを解除したのはサタンだが、アイムはそれを伏せたまま話を進める。それは、炎の巨人を自分の戦力にしたいからだ。


「名前は?」

「スルトです」

「なあスルト。これからもマモンの奴らがお前の平穏を脅かす可能性がある。そこで一つ提案があるんだ」

「提案?」

「俺と契約しないか?俺がお前と召喚獣として契約すれば、お前がピンチになった時、俺の手元に避難させることが出来る。逆に、俺がピンチになったらお前を召喚して助けてもらう。どうだ?悪くないだろ?」

「ぜひお願いします」

「こちらこそ」


 契約を終えると、スルトは魔界の最果ての地へ、アイムは神界へ、お互いに去って行く。


 *


 アイムは、ルゼと気絶しているゼウスと共に神界へ来ていた。


「いてっ!」


 アイムに叩かれてゼウスが目を覚ました。当然、魔力を封じる魔道具で体を拘束しており、逃げたり攻撃したりは出来ない。


「おい。お前俺達に助けられたよな?」

「貴様アイム!?マモンや炎の巨人はどうなった!?」

「俺が質問している。俺達が居なかったらお前死んでいたよな?」

「ぬぬっ……恩を売ったつもりか?」

「つもり?」


 睨みを利かせるアイムは、ゼウスのすぐ横を蹴って立場を分からせる。


「つまりじゃなくて恩を売ったんだよ。あんた老い耄れて理解できないようだから分かりやすく言ってやる。今死ぬか、俺の条件飲み込んで生き延びるか……決めろ」

「条件……それを話せ」

「俺達とアマノ達の安全を約束する。それ一つだけだ」

「それ一つだけ?だけじゃと?儂の立場になってみろ!周りの神々が納得する訳がない。それに、儂は命欲しさにそのような条件は受けない」

「じゃあ死ぬか?」


 アイムは、ナイフをゼウスの首元に突き立てる。しかし、ゼウスは死を覚悟した表情で、脅しでどうにかできそうではない。


(分かっていたけど……流石に英雄ゼウスは骨が折れそうだ)


 アイムは、ゼウスが脅しに屈しないと分かり、ため息を付いて次の手に出る。


「自分のメンツを保ちらいならこう言えばいい。『邪神天悪のアイムと魔女の子アマノは戦力になる!戦力不足のこの状況で奇石団の襲撃を凌ぐにはいい道具じゃ!』ってね。周りは納得するし、今回俺がマモンとの戦いに参加したことを言えば尚更……他に問題ある?変な意地張って死ぬよりさ、お互いに利益取っていこうぜ」

「儂とてそうしたい。しかし、お主はあのデモの仲間だ。魔王殺しはともかく、我々の仲間を多く葬った奴の仲間を、はいそうですかって受け入れれるか?民衆は納得しない。魔女の子においても、神を一人殺している。それも身内……自分の師匠を殺している。利益だけ取ればいいって話じゃない」

「じゃあ死ぬか?俺はお前を人質にして神界から出来るだけ欠片を奪って逃げるけど」

「……お主が見せつければいい。自分がどれほど価値のある男なのか」


 その言葉は、アイムの片目を強く反応させ、空気を変える一言だった。それは、近くに居たルゼも勘づいていた。


「なんだと?分かりやすく言え」

「儂と一体一で戦い勝利する。そうすれば民衆もお前の意見に耳を貸す。勿論、負ければ提案はなし。今まで通り犯罪者じゃ」

「あんた手抜かないだろ?」

「当然じゃ。手を抜けば主神共には見抜かれる。それに、儂とてお前が嫌いじゃ……勿論魔女の子も」

「ならその条件でいこう。俺が勝てば俺達の安全が保障される」

「負ければ死じゃな」

「俺を殺す気?」

「当然」

「ならあんたも覚悟しろよ」

「くくっ、久々に血が騒ぐ」


 アイムはその条件を飲み込み、神界の中心部に向かおうとした。だが、時間が夜だったので近くの小屋で一晩過ごした。勿論、ゼウスを拘束した状態で。


 *


 翌日。


「えー、これより緊急試合を始めます!尚、本試合の目的は邪神天悪のアイムを戦力として受け入れるか決めることにあります。もし、彼が勝つようなことがあれば、アイムだけにあらず、魔女の子アマノの安全も約束することとなります。当然、あくまでも対奇石団への戦力としてです」


 緊急で始まる試合にしては、多くの観客が集まった。主神は勿論、数十人の最高神、天使や死神、妖精達も見に来ている。


「それでは、全知全能ゼウス対邪神天悪のアイム!試合開始です!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ