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ミトロジア  作者: ビタードール
一部】一章『アマノとジャック』
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第26話【表彰式】

 表彰式は、上位三位が表彰される式だ。商品は一位のみで、欠片三つとデモの刀。


「本日上位六名は天.シックスとなりますが、天.シックス結成の式は後日ということになります。それでは、ゼウス様より上位三名の表彰です」


 アイムもメタトロンも傷が完治しており、切れた腕も元通りになっていた。二人共疲れた目をしていて、気だるそうにしているが、先程のように攻撃する素振りは見られない。三位のサタンがトロフィーを受け取り、二位のメタトロンもトロフィーを受け取る。三位は銅色、二位は銅色の天使が飾られたトロフィーで、神秘的な感触と色合いをしている。


「今回、優勝したアーニー選手にはあの伝説の邪神、デモ.ゴルゴンが残した刀と欠片三つが与えられます」


 実況がそう言うと、ゼウスは天使から欠片が繋がれたネックレスとデモの刀を受け取る。


「大胆で爽快感ある素晴らしい戦いの数々、とても楽しませて貰った。天.シックス最強として、これからもよろしく頼むぞ」

「あり難きお言葉」


 アイムは、警戒した手で恐る恐る刀と欠片を受け取る。だが、アイムの想定とは裏腹に、呆気なく欠片と刀が手元に入った。


(嘘だろ……最高神一人分の魔力がある欠片だぞ?デモの謎を解くカギだぞ?こうもあっさりと渡すか?顔の見えないこの俺に)


 刀と欠片を受け取ったアイムは、拍子抜け過ぎて逆に動揺していた。ゼウスの笑顔が、何かを企む表情にしか見えなくなっていた。


「すげえ!おめでとう!よっ!天使最強を倒した男!」


 そんなアイムに向かって、拍手と喝采を送ったのは、奇石団のリーダーであるマモンだった。ゼウスの少し後ろの壁に寄り添い、ニコニコと笑っている。


「貴様いつの間に!?」

「奇石団の悪魔?」


 皆がマモンに気付いた瞬間、ゼウスの周りに居た天使達が一斉にマモンを囲って神器を向けた。


「俺が今持っている欠片二つ……ギラギラと光っている。そう、今そこの優勝したお前の欠片と共鳴しているんだ。同じ色の欠片は距離が近くなると共鳴して光を放つ……眩しいくらいだよ」


 マモンは、体から放った魔力だけで周りの天使達を吹き飛ばし、黒い羽根から出した複数の光で天使達を撃ち殺す。


「皆離れろ!奴は欠片を所持している!最高神以外は下がれ!」

「ところで優勝者の君、欠片が眩しすぎて目の前が見えなくなったのかな?手に持っていた物はどおした?」


 アイムの手元から、欠片のネックレスとデモの刀がなくなっていた。マモンや欠片の光に気を取られていて、失っていたことに気付かなかったのだ。


「刀は!?欠片も!?」


 そんなアイムの目の前を優雅に通り過ぎたメタトロンは、眩しい光を放っている。その光と手元に持っている刀を見て、アイムは怒りではち切れた。


「てめえ!返せ!」


 だが、メタトロンは軽やかに身を交わして、マモンの隣に逃げるように身を置いた。それを見たゼウスが、唾を飲み込んで口を震わせた。


「めっ、メタトロン……まさかお主……」


 そんなゼウスを気にも止めないメタトロンは、マモンに欠片二つとデモの刀を渡す。


「俺の前で不機嫌はやめろよ。すぐにその不機嫌を拭わせてやるから」

「うっせえな。好きに不機嫌させろ。こっちはあんたと違って動いてやってるんだからよ」

「チビの癖に態度でけえな」

「てめえがデカすぎだけだろ」


 流暢に会話をする二人、それを見て周りの不安と動揺が確信へと変わっていく。


「メタトロン!貴様まさか!奇石団の天使二人の一人は……お前なのか!」


 ゼウスは、怒りと焦りを交えて体を一歩前に出す。メタトロンは、それを横目で見て、鬱陶しそうに溜息をついた。


「だったらなんだよ」

「なっ!あんなに神に忠実だった貴様が!なぜ!?人間だった頃から善行を続け、最も信仰心の強かったお前がなぜ神々を滅ぼそうとするそちらについている!?」

「それが理由だ」

「どっ……どういうことだ?」


 ゼウスの焦りが加速するのと反対に、メタトロンの冷酷な目付きと冷たい殺気が鋭くなる。


「確かに人間だった頃の俺は神を誰よりも信仰し、誰よりも善行を行い続けた。それが正しさだと信じていたからな。けど天使になって実際の神を前にしてガッカリしたよ。人間と変わらない欲深さ、愚かさ。力がある分人間より質が悪い。神なんて居なかった……お前らは神だと思い込んでいるただの人間だ。だから神の居ない世界を創る」

「なっ……くっ……。おっ、お前の言い分は分かった。だが、我々の敵に回るってことは、あの頃に戻るということだぞ?忘れたのか……人間だった時、貧しくて苦しい生活を。お前に待っている未来は死だけになるんだ。それでいいなら好きにしろ。だが、もしこちらに戻って来るなら、お前の言葉に耳を傾けるし、お前が気に入らないこの世界の改善をも共に向き合う」


 ゼウスがそう言って手を差し伸べると、メタトロンの目がより鋭くなって困ったように目を逸らした。そして、その鋭い目でマモンの方を向き、マモンの心臓を自身の剣で突き刺した。


「お前……なにやって……」

「デス.ブレイド」


 メタトロンの炎がマモンを一瞬にして焼き尽くしてしまう。そして、少し泣きそうな表情でゼウスに近寄って行き、震えた手をゆっくと伸ばした。


「ちょっと迷っていたんです。俺、本当にこれでいいのか……けど、もし許してくれるのなら、再び神々の可能性を見ていきいです」

「メタトロン……」


 怪しいくらい態度が一変したメタトロンは、ぽたぽたと垂れる涙を脱い、ゆっくりと両手でゼウスの手を握る。そして、子供のようにゼウスに抱き着いた。


「良かった……儂の知ってるお前だ……息子同然に可愛がってきたお前だ」

「俺も……父親同然に憎んできたバカそっくりで吐き気がするよ」


 メタトロンの体が一瞬にして燃え、ゼウスにもその炎が秒で移る。


「がはっ!?」


 更に、遠くから飛んできた剣がゼウスの顔に突き刺さる。メタトロンは、その剣を引き抜き、焼け焦げていくゼウスを蹴り飛ばした。その少し後ろで、歪む空気から現れるようにマモンが姿を見せる。


「「はははははっ!」」


 マモンとメタトロンは同時に笑い、ハイタッチをして子供のように宙を一回転した。周りの空気も、天地がひっくり返ったようにガラリと変わる。


「やっぱ俺の言う通りだったろ!」

「流石天使最強だな。長年の付き合いと経験を利用した作戦、最高に最低だったぜ」

「神々ってのは傲慢だから良いことは信じて疑わないんだよ」

「泣く演技も最高だったな。流石に笑いそうになった」

「俺も、泣きながら笑う所だった」

「「ぎゃははははは!」」


 この短時間で驚くようなことが起きすぎて、アイムは見ていることしかできなかった。欠片や刀を奪いたくて仕方なかったが、欠片を保持するマモンとメタトロンの前に一歩も足が動かなかった。強さとは別の恐怖があり、初っ端からゼウスを騙すコンビネーションを見せつけられて尚動けなくなってる。


 サタンも同じだった。迂闊に動けば自分が死ぬことを理解していたからこそ、現状は観察をすることしか出来ない。マモンという悪魔とメタトロンという天使、二人が奇石団だと判明してから流れが二人に来ていることを直感で分かっている。


「ゼウス様!」

「ゼウス様を神界の治療室に!最高神は集まって奇石団の確保へ!他の者は観客と共に避難しろ!」


 会場が一気にざわめく。転移で次々と非難する者、奇石団を確保しにきた最高神、興味本位で逃げようとしない者、皆がそれぞれ一斉に動いた。


「選手も避難しろ!」


 神がアイムとサタンにそう言ったが、デモの刀を取られたままのアイムは素直にそれを聞くことが出来ない。


「分かった」

「待って下さい。俺の刀と欠片は?」

「そんなこと言ってる場合か!早く非難しろ!」

「くそっ」


 サタンは内心ガックリしたが、気持ちを割り切ってその場から離れ、アイムは悔しそうにして少しだけ距離を取った。


(いくら欠片を持っていてもこの数の最高神相手に勝てない。恐らく奴らは転移で逃げる。せめてデモの刀だけでも……回収したいのに……)


 *


 マモンとメタトロンは、最高神達に囲まれている状況で一切の動揺も逃げる素振りも見せない。それどころか、マモンは不敵な笑みを見せて手元にある欠片四つを見せびらかすようにしている。


「欠片があるとは言え、この数を相手して勝てると思っているのか?」

「まさか……メタトロンは試合の疲労があるだろうし、たった二人でどうこうできると思ってないよ」

「ならなぜ笑っている?」

「なぜって?これが答えだ」


 マモンの元に大きな魔法陣が出現し、その魔法陣に一滴の血を流す。魔法陣は七色に光り、水色になって少しずつ液体になった。


「召喚魔法……レヴィアタン」


 魔法陣から闘技場からはみ出る大きさの化け物が出現する。その化け物は大量の海水と共に現れ、竜と蛇の中間のような見た目をしている。その化け物が出現した風圧だけで、周りの神々が吹き飛ぶ程の大きさがある。


「こいつは!?」

「嫉妬の悪魔、魔神レヴァイアサンの子孫だ。まだ赤子だが、この化け物を相手に人手不足の神様方はどうするのかな?」


 更に、マモンの元にゆっくりと二人の天使が現れる。一人は白い髪と猫のような目をした水のようにお淑やかな女で、もう一人はメタトロンとそっくりな顔立ちの氷のような目をした女だ。


「メタトロンがそっち側というなら、妹のサンダルフォンもそちらなのは必然的か……」

「もう一人の天使も奇石団だな?」


 神々は化け物を警戒しながら、二人の天使を観察する。どうやら、メタトロンと瓜二つの天使は実の妹サンダルフォンのようだ。


「こいつは天使じゃない。こう見えて悪魔だ」

「団長、神々に仕掛けられる前に――」

「分かってるよ」


 マモンは、天使二人に欠片を一つずつ渡し、残りの二つをまじまじと見つめた。そして、その一つを化け物の口に放り込んだ。


「欠片でパワーアップ。さあ、全面戦争といこうじゃねえか」


 奇石団が現れたことで、大会が奇石団と神々の戦争へと変わる。

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