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ミトロジア  作者: ビタードール
一部】一章『アマノとジャック』
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第18話【潜入】

 デモが死んだ翌日、天界新聞に載った多くの情報が神や天使を驚かせた。デモという異質で異常な存在、そのデモと神々の戦い、ゼウスに封印されていたクロノス、デモとクロノスの戦い、その二人が居た場所から飛び散った石の欠片達、どれも天地がひっくり返るくらいのビッグニュースだ。


「ほわぁ~、おはよう」


 目覚めたばかりのジャックと違い、アマノは朝の紅茶を味わい、天界新聞に目を通していた。


「おはよう」


 アマノは、新聞を見たまま「おはよう」を返し、穏やかな表情のまま、席に着いたジャックの方を見た。


「いただきます」

「ご飯食べたら神界に行くからね」

「神界?何しに行くの?」


 不思議そうにするジャックに、アマノは何も言わずに持っていた新聞を渡す。ジャックは、朝食のパンを食べながら、ゆっくりと読み込むように新聞に目を通す。


「嘘……これ昨日のこと?神々が複数でデモを倒そうとしたってこと?」

「その下も見て」

「クロノス復活……ゼウス過去の真相を話す。クロノスって大昔に神界と天界を仕切ってたあのクロノス?ゼウスの父親でそのゼウスに殺されたんじゃなかったの?」

「私もその新聞を見た時目を疑った。私やアイムを誘き寄せる為の罠かもしれないとも思った。けど、テレビでも一部映像が流れてるし、罠を張るならもっとまともな嘘がある」

「真相を確かに行くってこと?」

「そう。デモやクロノスがどうなったか不明らしいし、テレビで取り上げられていた石の欠片ってのも気になる」

「分かった」


 ジャックの眠そうだった目がやる気のある目に変わった。そして、慌てたようにパンを口に詰め込み、それをミルクで流し込む。


 *


 アマノとジャックは、黒い布を羽織り、顔を見られないように神界をうろついた。


「情報が欲しい。取り合えず王宮に行く」

「何で?」

「主神達が会議してる」

「何で知ってるの?」

「何か対策を取ったり会議をしたりする時は王宮で偉い神様が集まるの。恐らくギリシャの王宮だと思う。デモと神々が戦った場所と一番近いし、クロノスのこともあるからゼウスが中心となって話をしてると思う」

「なるほど」


 しかし、アマノ達が向かった王宮は警備が普段と同じだった。とても会議している雰囲気はない。


「してなそうじゃない?」

「警備を厳重にしたらここで会議してますって言ってるようなものだから別に変じゃないわ」


 あしらうように警備を潜る二人は、会議してそうな部屋を隅々まで見た。


「だめだ。どこも会議ぽいことはしてないよ。それどころか昨日あんなことあったのに呑気にパーティーしてる場所もあった」

「魔力探知で探すのが手っ取り早いけど、王宮は魔法や魔力が使えないようにされている」

「珍しく当てが外れたね」

「パーティーをしてる……それも、こんな異常時の後に。ねぇ、なぜパーティーをしてると思う?」

「バカだから?」

「それもあるけど、何かを隠す為だと思う。パーティーの場所は?」

「一階のホール」

「そう……なら地下が怪しいわ」


 アマノは、近くに掛かっていたドレスを見て、閃いたように小さく頷いた


 *


 黒のドレスを着たアマノとジャックは、地下への入り口を見つけて侵入していた。周りは、狭くて薄暗く、高級そうなワインガラスでいっぱいだ。


「まさかパーティー会場に地下があったと」

「神も人も隠したい場所を乱すんだよ」


 しばらく狭い場所を行くと、暗闇に差し込む光が見えた。二人は、恐る恐るその光の元へ行く。そこには、地下に居ることを忘れさせるような広々とした世界が広がっていた。すぐ目の前に海とボートがあり、少し奥に小さくて美しい街が広がっている。


「すげえ……」

「魔法で作った魔法領域のようね。でも、どっちにしろここも魔法が使えない」

「ボート、乗る?」

「罠かも。ジャックの羽根で空中を行こう。私は魔力を出せないこの空間では飛べないから」

「分かった」


 海を渡り終えて小さな街に入る。その街は、多くの建物が並んでいるが、そのほとんどが背景であり、本物かと疑うような立体絵だ。その中に、一つだけ本物の建物がある。それに気づいたアマノは、警戒しながらその建物へと侵入した。


「バレたらどうなる?」

「死刑。まあ、私もジャックもバレなくても犯罪者みたいな扱いだから存在がバレたら死刑かな」

「そう」


 小声で会話をして数十秒後、奥の部屋から声が聞こえてきた。その部屋は、廊下の一番奥にあり、部屋からだけ光が漏れている。二人は、その部屋の扉を少し開け、耳を澄ませたまま隙間に目を当てた。


「デモのことだけならまだしも、クロノスが生きていたことで市民がより困惑している」

「まさか封印が解けるとはねー。つまるところ、クロノスは封印されてからずっとゼウス君が弱まるチャンスを伺っていたんでしょ?凄い精神力の持ち主だね」

「すまない……」

「けど、結果的に良かったな。クロノスがデモと相打ちになる形で」

「死んだと確定した訳じゃないだろ。あの化け物二人だぞ」


 その部屋で話をしていたのは、五人の主神と呼ばれる神だ。全員、体のどこかを負傷しており、疲れた様子で話をしている。


「あれが……主神?」

「そう、一番奥がギリシャのゼウス、その右隣が北欧のロキ、その横がエジプトのアヌビス、またその横がインドのシヴァ、手前が日本のスサノオ。どうやら昨日の怪我完治してないようね」

「それでも他の神とオーラが全然違う……俺でも分かるくらいレベルが違う」


 息と気配を殺すアマノとジャックは、心臓の鼓動すらバレないように命がけで主神の声に耳を立てる。


「そんなことよりこの石の欠片は何だ?ロキ」


 ゼウスは、テーブルに並べられてる光輝く金と白の石に目を向ける。


「何で僕に聞くの?」

「貴様最後までデモとクロノスを見ていたんだろ?皆戦ってる中隠れやがって」

「戦う奴がバカだよ。蟻が象を倒そうとしてるのと同じ。いや、それより滑稽だったね」

「いいから説明しろ」

「全く、僕がサボったおかげで皆生きてたんだよ?最後なんて別勢力が倒れる神々に黒炎を放ったんだから。僕がすぐに天使達を呼んでなかったらどこの馬の骨かも分からない奴に殺されていた」


 ロキの一言で、ゼウの苛立っていた態度が一瞬にして謙虚な態度に変わった。


「確か二人組だよな?魔女の子じゃないのか?」

「違う。遠くだったし、よく見えなかったけど、一人は天使だったね。それにどっちも大人に見えた。魔女の子はまだしも、人間の方は子供なんでしょ?」

「それに魔界の炎だからな……。魔界の炎を扱う天使……訳が分からない」

「話が脱線してる。今は欠片のことだろ?」

「そうだったね。今ここにあるのは金と白一つづつ。現在神界や天界、魔界や下界、あちこちに散らばった欠片を捜索中。確認が取れてる欠片は計17個。同じ色の欠片はある程度近付くと強く光る。そして触れ合うとくっ付く。くっ付いた欠片は元には戻らない。金と白は近づいても光らないしくっ付かない。そして欠片一つに最高神一人分の魔力が込められている。まあ、欠片の大きさによるけど……この欠片は魔力の塊ってこと」

「この欠片はデモ.ゴルゴンの物と考えていいんだよな?」

「確定じゃない……一番可能性があるだけだよ」


 テーブルにある白と金の石の欠片、そして神々が口にしている『欠片』の情報、アマノもジャックもすぐに話を理解した。


「欠片……デモが残した物らしいけど、一体何の為?まだ分からないことが多すぎる」

「やっぱりデモは死んだのか?」


 扉の隙間からは、欠片や神々の様子が良く分からない。それでも、話の内容から神々の様子が分かる。だが、こちらから話し声が聞こえれば、向こうからこちらの気配や微かな音が聞こえててもおかしくない。


「扉の近く、誰か居る」


 スサノオが静かにそう呟くと、神々は一斉に扉の方へ目を向けた。ジャックの腕は、反射的に腕が飛び跳ねるように動き、近くの壁に手をぶつけてしまう。


「やっべ」


 スサノオ以外の神々が一斉に立ち上がり、ゆっくりと扉に近付く。魔力が制御されて、魔法が使えないこの空間では、どうあがいても逃げることは出来ない。ジャックは、思わず唾を飲み込んだ。


「ごめんアマノ」

「これは殴るしかないわ」

「殴る?」

「ええ、こんな風に」


 冷静に答えるアマノは、当然のように背後のジャックを肘で殴る。顔面に肘鉄砲を食らったジャックは、大量の鼻時が出て、目玉や頬が斬れた。


「誰だ!そこに居るのは!」


 同時に、ゼウスが声を上げて勢いよく扉を開けた。


「ひいい!すみません!どうかお許しください!私はどうなっても構いません!だからこの子だけは!」


 アマノは慌ててフードを被り、怯えた演技をしたまま血を流すジャックを抱き締めるように引き寄せた。アマノの怯えっぷりとジャックの傷に、神々も少し困惑する。


「分かったからなぜここに居るのか、何者なのか答えろ」

「私はただの奴隷です。ご主人様の命令でパーティー会場の食事の準備を手伝わせていただいてました」


 ジャックは、朦朧とする意識の中、奴隷を演じるアマノに関心している。


「じゃあなぜここに居る?」

「ご主人様がこの子を殴るので、私は耐えられなくて……それで地下まで逃げたんです。そしたらこのような場所に来て……」

「日本は奴隷制度を許してない。スサノオ以外の連れだな……一体どこの奴隷だ?」


 ゼウスがそう言って背後を見るが、シヴァやアヌビスが首を横に振る。それを見て、ゼウスがアマノを疑うような目で見始める。


「ご主人様の名前は……一体誰だ?」

「それは……」


 悪事を咎められた気持ちになったアマノは、困ったようにジャックを強く抱き抱え、服に隠している刀に手をかける。


「今微かに見えた……白髪、まさか貴様――」


 ゼウスが鋭い目でアマノを睨む。アマノも、何の迷いもなく、隠していた刀を素早く抜いた。

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