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ミトロジア  作者: ビタードール
一部】二章『愛を知らない神様』
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第53話【ラスト】その1

 ラースが倒されて一週間以上経った。七つの亡霊も頭のラースが居なくなり、ほぼ壊滅状態だ。

 そして、ラースの死後そうそうにその息子ラストの討伐作戦が決行されようとしていた。


「違うそこだ!そう!いや違う!」


 今日は班授業。ジャックとルーナはいつも通りテレビゲームに夢中だ。


(問題はルーナだ。ルーナは今回のことを何も知らない。魔法領域にラストを誘い込む所までは一緒に来てもらうことになるな)


 テレビ画面がゲームオーバーになった。ジャックは怒った様子でコントローラーをぶん投げた。


「くそっ!!」

「おいおいどうした?ジャックちゃんは生理か?」


 そこに、ラックが現れてジャックとルーナの肩に手を置いた。


「触んな!」


 だが、ジャックは不機嫌のままラックの腕を振り落とし、教室を出ようとする。


「どこ行くんだよ?」

「どこでもいいだろ!」

「しゃあねえな」

「全く」


 ラックとルーナは呆れた様子でジャックに着いて来る。外に飛び出して、学園が見えなくなる所までビュンビュンと空を舞っている。


(ここまでは作戦通り。後はラストだけを魔法領域に入れるだけ)


 三人が着いた場所は、大きな水上パークで水着のお姉さんがダンスをしている場所だ。それを見て、いち早くラックが反応した。


「センスあるじゃんジャック!お前もこういう所好きなんだな!てことでお先~!」


 ラックはそう言い、水上パークの門を通り抜けた。瞬間、目の前が大きなお寺に変わり、景色も荒廃した世界になった。


「場所が変わった」

「ルーナ。説明は後だ。絶対に俺の元を離れるな」

「は?」

「奴が魔法領域に入ったから幻が解けた。今見てる世界が本当の世界だ。今頃奴は最高神達にやられてるだろうぜ」

「何の話だ?」

「ラックの正体は七つの亡霊ラストなんだ。今はこれしか言えないが、黙って言う通りにしてくれ」


 ルーナが納得した表情を見せると、寺の門がゆっくりと開いた。


(終わりました。入って来て大丈夫です)

(分かった)


 連絡係からテレパシーが届いた。ジャックはその連絡を確認し、恐る恐る寺の中に入る。中はうす暗くて良く見えないが、少しづつ状況が目に映った。


「ッ!」


 その目に映った光景は、ジャックの想定と大きく違った。何十人もの最高神が無慈悲に殺害されている。寺の銅像と合体してしまっている者、賽銭箱に体をねじ込まれてる者、殺され方はさまざまで、そのどれもが命を弄んだような殺し方だ。

 生きているのは、磔にされてるスサノオと連絡係と見られる神だけだ。


「言われた通りにテレパシーを送った!約束通り家族を解放するんだ!」


 生き残りの男が血塗れになったままラック――ラストにしがみ付いた。ラストはそれを見向きもせず、思い出したかのように手元の転移空間から女性と子供を引っ張り出した。


「解放したよ」


 だが、女性は生き残りの男の胸を突き刺し、そのまま蹴り飛ばした。


「なぜ?助けて何て頼んでないわ。さっさと死んで。私はラスト様が好きなの」


 女性は男の妻だろう。だというのに、男を軽蔑し、ラストに頬釣りしている。


「き、貴様ラスト!!」


 男はそう言って怒ったが、女の魔法でとどめを刺される。


「約束通り夫を殺しました……子供だけはどうか……」


 女がそう言ってラストの方を振り返ると、ラストによって子供が蹴り殺されていた。


「ああ!ああああああ!!この嘘つきーーー!!」


 そして、女も殺される。この僅か10秒もない出来事にジャックは心底苛立ちと気色の悪い憎悪を覚える。


「ッ……ラスト!!!」

「ありがとうプライド。君の情報がなければ俺は襲撃にあってた。おかげで登校するまえに奇襲できた」


 ラストはジャックを気にも止めず、ジャックの背後に向けて話しかける。すると、背後からゆっくりとルーナが歩いて来て、ジャックの横を通り過ぎた。


「何だと?プライド……だと?」

「おい!待てルーナ!止まれ!」


 ルーナはジャックに言われた通りに足を止めた。


「何だ?」

「お前……お前がプライドなのか。七つの亡霊最後のメンバーなのか?」

「そうだが……だとしたら何だ?」


 ラスト討伐失敗に続き、ルーナの正体がプライドだと分かった。おかげで、ジャックは酷く動揺していた。


「何でだ!何でよりによってお前がそっちに居る!」

「御託はよそう。拳で語ろうぜ……ジャック」


 ルーナ――プライドとラストが無造作に距離を縮めて来た。どう考えても勝ち目はない。ラースが手に負えない程の化け物ラストと得体の知れないプライド。二人を相手にして生き残るのはまず不可能に低い。


「逃げろジャック……」


 磔にされるスサノオがそう言っているが、逃げることも難しいだろう。


「僕の出番だね」


 そう言ってジャックの前に現れたのはポム吉だ。つまようじを剣のように握りしめ、二人に立ち向かおうとしている。


「ポム吉お前……まさか……」

「……」


 ポム吉は二人の目の前までゆっくり歩いた。ラストとプライドに見下ろされるも、全く動じていない。


「さあ!どっからでもかかってこい!」


 だが、すぐに背を向けてジャックにつまようじを向けた。どうやら裏切るようだ。


「てめえそういう奴だったか!戻って来い!」

「断る。僕は強い方の味方だよ」


 ポム吉はドヤ顔を見せるも、ラストとプライドに蹴り飛ばされ、ジャックの目の前に倒れる。


「ほわっ!」

「このこのこの!」


 そして、ジャックに蹴られる。


「茶番は終わりか?」

「茶番どころか何もかも終わりだ……このバカ吉」

「ごめん。ちょっとやってみたかったんだよね」

「だまれっ」


 絶体絶命だ。ジャックに放たれた魔法は無慈悲で、その二つ共避けれる速さと範囲じゃない。


「ほわあああああ!!」

「くそっ!」


 だが、その両方が大きな炎によって吹き飛ばされた。そして、ラストもプライドも天井を突き破って来た天使に蹴り飛ばされる。


「ぶはっ!」

「ッ!」

「お前!」


 ジャックの前に着地した天使は、真赤な服を身に着けた炎の天使――メタトロンだ。


「何だ貴様!」

「最強戦士メタトロン」

「そうか、お前が父さんをやった天使か。面白くなってきたなぁ!」


 ラストは喜び、プライドは不満そうに顔を拭う。


「なぜ助けに来た?」

「言ったろ。お前を倒すのはこの俺だ。それに、戦闘あるとこにこのメタトロンありだ」

「意味わからないが、まあいい。足引っ張るなよ」

「こっちのセリフだ」


 共闘といったところだろう。ジャックは魔法陣から出したボロの剣をメタトロンに投げ渡し、戦闘態勢に入る。


「来るぞ」

「ああ」


 ラストがジャックとメタトロンに手の平を向ける。すると、二人の体がフワッと浮かび、どんどん上空へ飛んで行った。


「何!?ラースとかいう奴が使ってた魔法そっくりだ」

「磁力魔法じゃない。これが奴が扱う重力魔法だ。ラース本人が言ってた。羽根を広げて態勢を整えろ」

「重力を反転させたってことか。この程度なら大したことないな」


 ジャックとメタトロンが羽根を広げてその場にとどまった。プライドが地面に居るのを見ると、重力が反転してるのは二人だけのようだ。


「ヒャッハー!」

「なっ!」


 上空に現れた転移空間からラストが身を乗り出し、ジャックとメタトロンを叩き落す。だが、メタトロンが炎を放ってジャックを上空へと押し上げた。


「やるじゃん」


 ジャックが蹴りを入れるも、ラストはそれを軽々受け止め、再び転移空間に逃げ込む。


「また重力魔法!しかもさっきより重いぞ!」

「しかもラストの姿は見えないのに!」


 次は、ジャックとメタトロンが引き寄せられる形で重力が働いた。その力は先程より重く、逆方向に飛ぶだけでは耐えられない。


「ひひっ!」


 更に、二人の間に転移空間が現れ、そこからラストとプライドが姿を見せる。ジャックとメタトロンは二人にいいように殴られ、再び転移空間に逃げられてしまう。


「舐めやがって」

「メタトロン。あいつら分けるぞ。どっちやりたい?」

「当然強い方だ」

「ラストだな。俺はプライドをやる。とにかく二人を離すんだ」

「命令するな」


 二人はそう言い、広い寺の奥に逃げる。だが、その出入口で待っていたかのようにラストとプライドが現れ、メタトロンを挟み撃ちにした。


「あれ?ジャックが居ないな。目を離さなかったのに」

「あいつのことだ。どっか隠れてるさ」

「そうだな」


 ラストとプライドが余裕を見せたまま攻撃を仕掛ける。しかし、人が変わったかのように素早く動くメタトロンは、プライドの足を踏み付け体を燃やし、それをラストに投げて大きな炎を放った。


「動けるじゃん。だがね!その程度の炎無意味よ!重力魔法!エルク.ラヴィタス!」


 しかし、その炎はスピードを増して戻って来る。


「居ない……」

「炎は囮だな」


 炎が建物を破壊して通過するも、そこにメタトロンの姿はない。あるのは、焼け焦げた瓦礫と神々の死体だ。


「ラスト上だ」

「わあってるよ」


 ラストが上空に手を伸ばす。すると、上から攻めようとしていたメタトロンがゆっくりと上に飛んで行った。


「近寄れない……また重力か」

「惜しいね」

「いいや、そうでもないさ」


 ラストとプライドが上を見上げてメタトロンを嘲笑う。しかし、次の瞬間二人そろって血を吐いて態勢を崩した。


「ちっ。避けたか」

「どっから現れたのかな?ジャック!」

「神器!魔標線まひょうせん!」


 ジャックがラストとプライドの足元に突如現れた。不意打ちを食らったラストはその場に膝を落とし、プライドもワイヤーで縛られる。


「今だ!」

「デス.ブレイド」


 ジャックはラストにかかと落としを食らわせ、プライドを拘束したままその場を素早く立ち去る。同時に、メタトロンの炎が身動きの取れないラストを包み込んだ。

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