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ミトロジア  作者: ビタードール
一部】二章『愛を知らない神様』
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第46話【学園祭のやり直し】前編

 エンヴィー襲来から一ヶ月以上が経ち、神々は能天気に学園祭のやり直しを行なっていた。


「やはり客は少ないな」

「そりゃそうだ。エンヴィーのおかげで、神々に七つの亡霊の恐怖が植え込まれている。奴らは神が集まるところにやって来るからな」

「まあ、少ない方がやりやすい」


 学園祭の客は、前回と比べて半数以上減少している。それでも、ジャック達のやることは変わらない。前回同様メイド服を着て、それぞれの配置についてメイドバーの準備をする。


「カーマ無理すんな。片足ダメになったんだろ?座ってていいんだぜ」


 カーマはエンヴィーとの戦いで片足の機能を失ってしまった。普段は杖をついて歩いてるようだが、今回は少し足を浮かせて宙を進んでいる。


「飛べば問題ない。俺に構うな」

「復讐を達成したってのにー、穏やかじゃないな〜。いつも通りのカーマだ」

「黙れ。客が来るぞ」


 ジャックはまたもや受付だ。少し羨ましそうにカウンターで客の相手をするルーナ、カーマ、ベルの三人を見ている。アウトリュウスやセーレは料理担当だが、時々話に混ざっている。

 それがジャックから遠くの存在に見える。


「……客の相手、やるか?」


 それを横目で気付いたカーマが、ジャックの方へやって来て目を逸らしながら言いずらそうに言った。それに対し、ジャックも少し不安そうに頷く。


「受付任せた」

「まかしぇろ!」


 カーマは受付をポム吉に任せて、ジャックをカウンター越しの客の前に立たせる。


「新人メイドのジャックちゃんでーす!ほらほら、皆歓迎の拍手!」

「わー!待ってました!」

「よっ!クラス一の可愛いメイド!


 カーマは切り替えるように接客モードに入り、緊張してるジャックの背を押す。すると、カウンターに座ってる三人の客とルーナとベルが大袈裟に拍手をしてジャックを迎え入れた。


「どうも……よろしく」

「カーマちゃんナイスだよ。俺英雄ジャックと話したかったんだよ〜。受付に居るから話しかけずらかったんだ」

「もっと褒めていいんですよ」

「ハハッ。また調子に乗って」

「お客さん程じゃないですよ」

「おいおい、俺のどこが調子乗ってんだよ」

「はははっ!」


 カーマはジャックの目から見ても上手く客の相手をしている。キャラは全然違うが、それこそ割り切ってる証拠だろう。


「誰かお酒くれる?」

「少々お待ち」


 カーマは他のお客に頼まれてお酒を取りに行こうと、カウンターから出ようとする。その時、足を止めてジャックの耳元で呟く。


「そいつ、例のホモの客……今アウトリュウス連れて来るから、それまで耐えろ」

「え!ちょっと!」


 カーマはそのまま逃げるように厨房へと消える。ジャックは恐る恐る客の方を向き、不器用にニコッと笑った。


「英雄ジャックよろしく。俺君のファンだよ。この前も大活躍だったね」

「ありがとう。けど、この前はカーマの手柄です」

「そうなのかい?カーマちゃんはジャックのおかげって言ってたよ?」

「建前ですよ。きっと」

「そうか……」

「そうです」


 話題が終わった。少しの沈黙が走ってしまい、ジャックは焦りと不安を覚え気まずくなる。


「そういえば、君を見た時からしたかったことがあるんだ」


 だが、客はすぐに思い出したかのように微笑んだ。


「したかったこと?」

「手、出して」

「え?手ですか?」

「うん。早く早く」


 カーマの先程の『ホモのお客』発言もあり、ジャックは少し戸惑ってしまう。しかし、客がジャックの手を取ったことで、その戸惑いが恐怖になる。


「な、何を?」

「占いだよ」

「占い?」

「俺は占い師だからね。英雄様がどんな手相をしてるのか見たかった」

「あ、そういう……こと」


 一安心だ。だが、それとは別に占いがどういうもので、どんな結果が出るのかが気になる。


「ムムッ!」

「何か、わかりました?」

「友情運が絶望的だね」

「友達関係ということですか?」

「うん。これから色々な神や天使に騙され裏切られるかもしれない」

「マジですか……」

「マジだね。けど、幸運なことに親友と呼べる存在にも出会えると出ている」

「ッ!本当、ですか?」

「君が受け身にならなければね。あまり好き嫌いしないで、色んな神に話しかけたらいい。特に身の回りのクラスメイトとかには」

「あ、ありがとう。そうしてみます」


 ジャックの占いが終わったと同時に、アウトリュウスが酒を持ってカウンターにやって来た。


「あ!イケメンのおじさん来てくれたの?!?」

「おー!アウトリュウスちゃん!相変わらず可愛いね」

「おじさんもね」


 占い師の客とアウトリュウスは、お互いに頬赤くして挨拶を交わす。それを見て、その場の全員が顔を引きつる。


 * 


 薄暗い城の中、ラースはぐったりした様子で椅子に座ってる。恐らくラトニーの物だと思われるブラジャーを目隠しのように被っており、左手の指には煙の出てるタバコが挟まれてる。


「父さんって、タバコ吸うっけ?」


 そこに、どこからかぬらりくらりとラストが現れ、ラースからブラジャーとタバコを取り上げ、ブラジャーを被ってタバコを吸った。


「吸わない」

「じゃあなぜ?」

「戒めだ」

「……父さんってさ、一体何がしたくて神々を滅ぼすの?」


 タバコの話題を無視し、自分のペースで話を変えるラスト。そんなラストは、声や表情こそ穏やかだが、目は獲物を狙う時の蛇のようだ。


「いつも言ってるだろ。最初の神、天之御中主が犯した罪を俺が背負う為。それと、神のあるべき存在がそれだから。それと……」

「そのあやふやな答えを聞いててさ、いつも思ってた。本当はただ暴れたいだけなんじゃないかって」

「……」


 ラースは必要以上にラストに突っかからない。ラストが全て話すのを静かに待っているように見える。


「俺と同じでただ楽しいから、過程を楽しむ為に目標を作ってる。そう思ってた」

「……」

「けど最近は、それすらも違うような気がしてきた。いや、父さんが言った目標も俺が予想していた目標も半分正解なんだろう。全部が半分正解だ。けど、目標の核は別にある気がする」

「何が言いたい?」

「父さんの記憶、全て見せてよ」


 空気が止まる。ラストの悪魔のような鋭い目は、やはり爽やかな表情と顔には似合わない。一方ラースは、この言葉を予想していたかのように(やはりか)という表情を浮かべている。


「……見せない、と言ったら?」

「殺すよ」


 即答だった。ラストは父と話す息子のような表情だが、その体から溢れる物は獲物を捉えるような殺気に近い。


「……」

「一度、父さんとハグした時ちょっと覗いたけど、やはり最近の記憶がちょっと見えるだけだった。謎を知るには過去まで遡る必要がある。寝てる状態や死体は無意識状態だから記憶は見れない。だから今、この場で見せてほしい」

「何の為に?」

「好奇心さ。父さん程の悪党は見たことない。俺もかなりの悪党だって自覚あるけどさ、俺から見たら父さんは何か異質で、そこら辺の悪党とは違う。大小では図れないから興味があるんだ。俺以上の悪意に」

「俺もお前に対して同じことを思ってた」

「知ってる」

「記憶は見せない。俺の前から消えるんだ」

「じゃあ、父さんはこの世から消えるね」


 瞬間、ラースとラストの拳が交わり、二人の足場が破壊された。


「はははっ!やっぱ父さんは強い!」

「なぜ今までこうしなかったかな。今頃俺を遊び相手に選びやがって」

「好きな物は残しておくのがこのラストさ。それに、もう父さんには用はない。俺達の組織は崩壊寸前。残ってるのは父さんとプライドだけ。プライドもあまり積極的ではないし、ここ一年の付き合いだ。裏切ってもおかしくないよ。つまりさ、もう父さんしか居ないんだよ」

「それで戦いを挑んだか?」

「戦い?これは喧嘩だよ。楽しい親子喧嘩。一方的な狩にならないよう本気を出してくれよ」

「……来い。ラスト」


 ラストは言われた通りにラースに向かって行く。床を蹴り、宙を低空飛行で進むラストは、とても嬉しそうだ。だが、ラースは冷静に手の平を向け、見えない力でラストを吹き飛ばした。

 ラストもそれが分かっていたかのように、ラトニーが使用してた転移空間を背後に出し、そのまま姿を消す。そして、すぐにラースの上から現れて踵落としを披露する。

 ラースもそれを間一髪で交わして、魔法陣から取り出した銀の短剣でラストの首を狙う。


「惜しいね」

「……」


 ラストはその短剣を指で摘み、そのナイフの上に逆立ちしている。そして、そのまま短剣を奪って、短剣をラースの首元に当てた。


「まだやる?」

「……これ以上やれば、お前も死ぬぞ」

「へえ。試してみよっか?」

「……」

「ふふっ」


 沈黙と静寂が続いたが、ラストが飽きたように短剣を手放し、先程ラースが座っていた王座に座った。


「なーんてね。もうちょっと泳いでくれた方が面白そうだ」

「この短剣……」

「ッ?」

「この短剣は、俺の母の物だった」

「え?何いきなり?だから?」


 ラースの突然の話に、ラストも困惑の様子を見せる。


「母は王女で、皆に嫌われていたよ。父すらも怯える程厳しい神だったからな」

「何が言いたいの?」

「俺が三歳になったばかりのこと。俺は、この短剣で母を刺殺した」


 初めてラストと目を合わせたラースは、その目でラストを少し警戒させた。


(この目……目を合わせてるのに、真上から俺の全体を舐め和すようの見ているようだ。本当に気色の悪い人だよ)


 飄々とするラストも、静かなラースには警戒する。それは、得体が知れなくて今まで会ったことのないタイプだからだ。


「それが、目標と関係あったりする?」

「どうだろうな」

「ま〜た誤魔化しやがったよ」

「……もう寝る時間だ。おやすみラスト」


 ラースは何も悟られないような態度で、おやすみを告げて二階へと登って行く。


「英雄ジャック、俺がやってあげようか?大サービス、報酬も見返りも要らないよ」


 その言葉は、ラースの足を止めた。


「いや、このラースが直々に始末しに行く」

「ほお〜」

「奴は家族の仇であり、乗り越えるべき試練だからな」


 とうとう、七つの亡霊の頭であるラースがジャックを襲おうとしていた。

今まで一日1話投稿してたのに、昨日ミスで全話投稿しちゃいました。ショックです。泣ける


なので、少し修正入るかもしれませんが、今出てる1部2部を楽しんでくれたら嬉しいです。

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