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ミトロジア  作者: ビタードール
一部】二章『愛を知らない神様』
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第45話【決着の行方】

 エンヴィーは長い長い夢の中に居た。産声を上げて産まれた日から、クルー二ャに殺される日までの夢だ。一瞬のことだったが、とても長い夢だった。それがとても幸せで、とても心地よかった。


「アマノ……」


 エンヴィーは先程のジャックとの戦いで体がボロボロだ。片足と片腕を失っており、魔力もそこを尽きている。そんな状況で、海を見るアメノを思い出していた。


「死んだら会えるのかな」


 そして、ゆっくりと目の前に居るジャックを見下ろす。ジャックも同じように魔力の底を尽いていて、顔半分が潰れかけている。それでも、お互いしっかりと立っており、静かに最後の呼吸を整えていた。


「……これで、決まる」


 遠くから見てるカーマが、地に這いつくばった状態で息を飲み込んだ。カーマも重症だが、痛みなど忘れてしまう程の緊迫感だ。魔力が一切ないのにも関わらず、魔力に似た何かがぶつかりあってるのを肌で感じる。それも静かでありながら、重たくて深い。


(お互い射程距離内だ。だが、体格差とリーチが圧倒的。エンヴィーの方が一瞬早い……どうする気だ。ジャック)


 カーマの目から見てもはっきりしていることだ。射程内だとしても、倍以上の体格差と手足の長さ。普通に考えれば、ジャックが先に拳を当てることは出来ない。


「「……」」


 血と汗が流れ落ちる音が聞こえるくらい静まり返った。


「ッ!」


 決着の時は突然だ。仕掛けたのはジャックで、拳をエンヴィーの腹目掛けて振るう。だが、当然それに合わせてエンヴィーがジャックの頭目掛けて拳を振るった。


「カウンターか!確実にやる為に被せてきやがった!奴の方が早い!」


 カーマもエンヴィー同様にジャックの敗北を悟った。しかし、ジャックはそれを待っていたように拳を交わし、腕を掴んで投げの体勢に入った。


「こいつ!?最初から投げを仕掛けるつもりであえてカウンターを誘いやがった!奴の片足は負傷して不安定!行ける!」


 ジャックはそのまま足腰に力を入れ、羽根を地面に突き刺して土台を強くする。後は大男のエンヴィーを背負い投げするだけだ!


「俺を投げるか!やってみろおお!」

「うおおおおおお!!」

「ふん!」


 だが、エンヴィーはもう片方の手を地面に付けて堪えている。地面が割れる程の攻防だが、お互いに最後の一振りだ。もう決着が着く。


「がはっ!」

「ふん。俺の勝ちだな、ジャック」


 限界が先に来たのはジャックだ。血を吐いて力が緩まってしまう。おかげで、エンヴィーも一瞬だけバランスを崩す。しかし、ジャックはニヤッと笑って瞬間的に力を発揮した。腕相撲の技術と同じで、瞬発力を利用した作戦だ。


「なっ!こいつわざと!」

「これで最後だ!」

「なっ!」


 足の代わりにしていた棍棒が砕けたことで、エンヴィーの体がふわっと浮いた。そして、そのままジャックに背負い投げをされ、近くに突き刺さっているカーマの神器に背から倒れてしまう。


「がはっ!!」


 神器はエンヴィーの胸を貫いており、エンヴィーからは血と黒い闇が暴れるように吹き出し、あっけなく弱まりその場に倒れた。


「……はあはあ、俺の勝ちだ!エンヴィー!」


 ジャックはそう言ってその場に倒れた。それを見守っていたカーマは、少し嬉しそうにして足を引きずり、ジャックの元へ駆け寄る。


「やった。こいつ、やりやがった。あの高御産巣日を……エンヴィーを倒した」


 カーマは倒れたジャックの体を起こし、少し興奮した様子で拳をグッと握って素直に喜ぶ。しかし、ふと近くのエンヴィーに目がいき、エンヴィーにまだ微かに息があることに気が付く。


「……はあ、はあ、アマノ……アマノ……」


 エンヴィーは血がどくどくと流れていて、今にも死にそうだ。だが、息を切らしながらも懐からタバコと飲みかけの酒を取り出し、震えた手で火をつけたタバコを口に咥えた。


「ごほっ……あんたには、あんたには会えないだろう」


 一人でぶつぶつと枯れた声で喋っている。そんなエンヴィーの前にカーマが現れ、冷たい目で鋭く見下ろしている。それもそうだろう。カーマにとってエンヴィーは、両親の仇なのだから。


「アマノだと?なぜアマノの名を呼んだ?大英雄アマノの名を……」

「……」

「答えろエンヴィー!」


 エンヴィーは怒鳴り怒るカーマをやっと横目で見た。


「もうエンヴィーでない。俺は高御産巣日」

「そんなこと聞いてない。早く答えなければ頭裂いて殺す」

「好きにやれ。俺にとって死も恵み」


 エンヴィーは穏やかな表情で酒を頭から被った。その酒はタバコの火を消し、同時にエンヴィーの命の灯火も綺麗さっぱり消した。


「……クソがっ」


 カーマはエンヴィーの死を感じて、苛立ちを思い出したようにエンヴィーの頭を踏み潰した。


 * 


 ジャックが目を覚ますと、病棟のベットの上に居た。疲れと痛みはあるが、体の傷は完璧に治療されており、後遺症も残っていないようだ。


「……」


 しかし、目覚めは最悪だ。なぜなら、同じベットの中にセーレとアウトリュウスが居て、ジャックを挟んでいちゃついている。更に、ベットの上にはベルが居てお見舞いの果物を食べている。


「邪魔だお前ら」

「あ、起きたジャック」

「ジャック〜、今回も流石だったね〜」


 皆がジャックを可愛がる。アウトリュウスとセーレに強く抱き締められ、ベルに上から布団越しに抱き締められる。だが、ジャックはそれを邪険に扱い、魔力で軽く吹き飛ばす。


「酷いな〜。まあいいや、こっちにちょっかい出そ」


 吹き飛ばされたアウトリュウスは、そのまま隣のベットに眠るカーマに飛びつき、ベットの中に潜り込む。しかし、カーマは目を瞑ったままアウトリュウスを殴る。


「あんま怪我人で遊ぶなよ。労わってやれ」


 そこにルーナが果物を持ってお見舞いに来た。そのまま果物を神技の如く一瞬にして剥き終え、それをフォークで刺し、カーマの口元へ持っていく。


「ほら、偏屈神様、あ〜んだ」

「殴られてえのかお前」

「やっぱ女の子がいいか?おいベル、変わってくれ。セーレでもいい」


 ルーナは少しふざけた様子でベルの方を見て、クスッと笑った。


「え〜、私より適任がそこに居るよ。男好きの乙女がさ」


 それに乗るように、ベルもクスクス笑いながらアウトリュウスのことを見る。アウトリュウスは果物を食べ、それを強引にカーマに口移しした。当然、カーマはブチギレる。


「ッ!ぺっ!てめえ殺すぞ!!このホモ野郎!」

「え?やる?いいぜカーマ。どうする?攻めはどっちだ?」


 頬赤くして息を乱すアウトリュウスは、興奮した様子でカーマのあちこちを触る。


「てめえ!」

「逃がさないぜ!」

「やめろおおお!!」


 最初はクスクス笑っていたルーナやベルだが、アウトリュウスの行動に次第に引いたように一歩二歩身を引いた。ジャックは勿論、相棒のセーレすらもドン引きしている。


「男同士でキモいよ」

「誰か助けろおおお!」


 *


 エンヴィーが出した被害はジャックの想像以上だった。学園は崩壊、そこに居た神々は半数近くが怪我を負い、三十二名の死者を出した。学園の復興は魔法ですぐに済むだろうが、七つの亡霊が攻めて来たこともあり、一ヶ月休校となった。


「流石お兄ちゃん!また強くなってる?」

「当然だ。俺はもう負けない。この世の王になるのだからな」


 ジャックは再びメタトロンと修行に明け暮れていた。妹のサンダルフォンを演じるのは大変だが、メタトロンとの修行が一番強くなれるのを知っている。

 最初こそプライドが邪魔していたが、今はそんなこと気にしてる場合ではないと割り切っている。


(流石メタトロンだ。ここ数ヶ月で使える魔法が増えてるし、それをほぼ完璧に扱えてる。こいつの武器は、アイムのようなフィジカルやマモンのような経験ではない。技術と圧倒的な戦闘センスだ。力やスピード自体は先月戦ったエンヴィーの方があるだろう。しかし、こいつなら単体でエンヴィーを倒す気がする)


 ジャックはメタトロンとの修行でメタトロンの強さを痛感していた。一年前と明らかに成長しているし、強さの種類も増えている。


「ボケっとすんな。まだまだだぞサンダルフォン。お前は魔法に頼っていたせいか、力の扱いが下手だ」

「お兄ちゃんが上手すぎるんだよ」


 メタトロンはそう言い、炎をジャックに当てる。ジャックはその炎を受けて、少し驚いたように瞳をパチパチさせる。


「分かったか?」

「うん。当たる瞬間に魔力が膨れ上がった。体から離れてるのに魔力が動いた」

「ボクサーが拳の当たる瞬間に力を入れるように魔法も同じ力の使い方が可能だ。主神クラスの奴はこれを無意識に使う者がほとんどだ」

「これが力の扱い?」

「その片鱗だ。魔力や魔法の使い道は無限だ。弱い魔法でも魔力コントロールによって強力になるし、強い魔法も魔力コントロールが下手なら大したことない。俺のデス.ブレイド、習得難易度は大したことないが、そこら辺の奴らが扱う最上位魔法の火魔法より圧倒的に強い。さぁ、なぜ?」

「魔力コントロールと経験の差」

「正解だが、それを総じて熟練度だな」

「そういえば、最近戦った奴が魔力を乱されてる状態で魔法を撃ててた」

「あぁ、それこそ魔力コントロールが上手い証拠だ。お前もそういう訓練をしたらどうだ?魔力を乱された状態で魔法を扱う訓練だ」

「それ、強くなれる?」

「当然だ。俺もやってるが、最初はイラついて仕方ないぞ。おかげでお前に貰ったサッカーボールを蹴り壊したからな」

「はっ、ははっ」


 *


 一ヶ月後、学校が再開した。そして、学校再開から一週間後、エンヴィー襲来で中断された学園祭が行われた。

『MONSTER』や『20世紀少年』の作者で知られる浦沢直樹先生を知っていますか?

彼は、有名な漫画家です。

私は浦沢直樹の作品が好きで、特に『MONSTER』が好きです。

浦沢直樹は、心の中でのセリフ...つまりモノローグを極力使わないようにしてるらしいです。

キャラの考えを必要以上に出さず、表情や言動でそれを表現するんです。


私はこの考えにハッとさせられました。

私はついついモノローグを使いがちです。キャラの思ってることを全部文字にしてしまいがちなんです。

でも、それを極力使わないように意識したら、キャラの表情や言動でどれだけ心の中を読者に想像させれるか考えるんです。

これが凄い難しい。

この先、全くモノローグを使わないキャラを何人か考えてます。それまでに、その技術を高めたいものです。

一章の2部では、ラースがそういうキャラになってくると思います。彼は一言で言えるようなキャラにしてません。その為、過去があっても心の中で何か話すことはほとんどありません。

だがらこそ、読者はそういうキャラについて色々な捉え方をし、楽しんでくれるんだと思います。

そう。私は小説や漫画において、キャラの思ってることを全部書いてはいけないことを浦沢直樹から学びました。

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