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今日から学校と仕事、始まります。②莞

今日は家に誰もいないから

作者: 孤独

青春は一度きりであり、人生も一度きり。

セーブもなく、巻き戻しもなく、進んでいくだけだ。

このままか。そうでないか。

教育を受けられる立場であるならば、嫌でも数年の事で変われるハッピーなこと。

1人の男子高校生は教室でぼやく。


「欲求不満だ」


……ああ、承認欲求とか睡眠欲、食欲だ。そーいうところだね。


「女現れねぇかな~」


いけません。ここは健全な学校でそんな破廉恥な発言。

彼女なんて可愛らしい言葉も使わず、その煩悩を呟く。相場竜彦は周囲が少し退いている事も気付かず、星が見えるくらいの確率でタダじゃない彼女が現れないかと思った。

こうして、女子がいてくれる空間がホントに貴重なものかな。

まだそんな年でも人生でもないけれど、そーいう危機感は大事で大切で、後々に分かってくれること。


「あ~~、いねぇもんか。可愛い大人のお姉さん」


さっきの言葉を忘れているのか。それ彼女じゃない、別の何かを探している予感。

まったく。

家でやれよ。

そんな気持ちが伝わったのか。勇気あり過ぎるだろうと、1人の女子がそんな相場に声をかけた。


「なになに?お困りなの、相場」

「嶋村。そんなところだ」


とても軽く話しかけられたから、少し気楽になれた。男友達とは違うなにかだ。けど、男だけでやった方がいいもんだ。


「まー、気にすんな」

「相場は毎日シャキってしてないじゃん。いつも通り」

「余計なお世話だ。嶋村みたいに動画作りに情熱燃やすような事ねぇーんだ」

「相談に乗ってあげようか」

「?え、お前が?いいよ。お前普通くらいじゃん」

「それは褒めてるって事でいいんだね」


ある日にアイドルとバッタリ会うだの、そーいう天文学的な事と自分がイケメンとかモテ要素があるとかいう話でもなく


「私の家に来てみない。今日は家に誰もいないから」


そんな事を言われる事もまた、相場の容姿から言って稀な事だ。

相手の方から誘われたのって初めてじゃないか?

なんの冗談だと思いつつ、流されていく選択をとった相場。


◇        ◇



学校から自転車を漕いで20分ほど。5階建ての都営マンションの4階。


ガチャッ


「入っていいよー」

「おじゃましまーす」


女子の家にご招待された相場。できるなら、もっと可愛い子の家に案内をしてもらいたかったが。しかし、こんなことが青春にあるなんて、素晴らしい事じゃないか。

誰もいない女子の家を訪れる、クラスメイトの男子。悪くない。

不思議と緊張する。慣れちゃいないのに、靴を揃えだす。


「思ったより汚くて悪いわね」

「そーか?俺の家、もっと汚ぇぞ」


思ったよりか、嶋村の家は自分よりか大変には感じる相場だった。


「この部屋で待ってて」

「お、おう……って、ここ。お前の部屋?」

「そうよ。兄と一緒」


そーいえば、相場自身。なんでこーいう事になってんだって、急に思い出した。

確か。そう。女でもやってこないかなーって、1人でぼやいていたら、クラスメイトの女子が家に来ない?とか誘われたから来たのだ。

え?マジで?いいの?俺、ぶっちゃっけ嶋村にそんな気ないけど


「相談に乗ってあげるにしても、飲み物と菓子出してあげるねー」


なんの相談に応えるつもりですか、嶋村さん!?


急に緊張した顔になる。

どうせ、家の手前で追い返されるとか。冗談だよって思っていた。

これ冗談じゃねぇのか。


「麦茶とハッピーターンだけどさ」

「お、……し、嶋村。とりあえず、お前」

「なに。不満?それとも欲求の方?」

「いやいや!俺の気持ちは後者だが、あいにくその。遊びはまだいいぞ。同じクラスの舟と御子柴の関係と違って、俺は真面目な方だ。無理は良くない」


想像しただけに。決して、望まれているような胸はしていないし、尻のラインも綺麗じゃない。顔だけはちょっと可愛いくらいの女子だ。

そんなちょっとした反応だったけれど、嶋村には気付かれて、可愛くニンマリ。


「出して欲しい?」

「いや……」

「見せて欲しいものとか、ある?」

「!」


そんな誘惑的な言葉。一段と制服姿が可愛くなりそうな雰囲気だが、逆にそれで相場は冷静になる。

やっぱり嶋村は可愛くない女だ。

クラスメイトの嶋村だ。


「……落ち着いた。俺はやっぱり嶋村より大きい胸で可愛い子が良い」

「本人に向かって、失礼じゃない」


緊張が解けた。

やっぱりこーいう初々しさは、ホントの彼女ができてからでいい。こーいうのは働いた金でやろう。そうするべきだ。

そんな意味も込めた言葉で、嶋村の方もおちょくりを止めて、ちょっと真剣な声で


「まぁいいわ。見せてあげる……っていうか、あげるわ」

「ふぁ!?」


相場で楽しんだので、嶋村もそれで十分な顔になった。


「出してあげるわよ。お求めの可愛い大人のお姉さん」

「いや!脱ぐな脱ぐな!お前、Fカップはどー考えてもないだろ!」

「脱いでないし。失礼過ぎ」


嶋村は部屋の押入れを開ける。それだけで相場がパニックになって、先ほどの言葉も踏まえて


「ま、間違えた!お前のブラジャーとか、パンツとかはいらん!」

「あげるわけないでしょ。キモイ」


収納ケースに入れられた中で変な袋に入ったものを取り出した。

袋の中身はなんじゃろな。そーいう思考時間も許さず


ドサッ


「わーーーー」


ひっくり返され、相場は目にする。

嶋村のあれとかこれとか。そーいうものをもらってくれと……



「……え」

「兄がたまに使ってるエロ本なんだけど、あんたにあげるわよ。お好みのお姉さん系の奴もあるはずよ」

「おおーーーーーっ。兄貴のエロ本を知人に渡す妹がいるのかよ!?これ18禁じゃん!」

「意味違うけど、処理に困ってたから。人にあげた方が良いと思ってね、リサイクル精神」


妹の目の前でエロ本を選ぶとか勇気いるっつーの。



「こーいうエロ本を捨ててくれないと、私のBL本が納められなくて困っていたのよ」

「これで困るのは俺とお前のお兄ちゃんだ!!」


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