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第98話.メロンパン

 凛は意見箱の蓋をパカりと開けると、箱の中に手をガサガサと突っ込んだ。中からは凛の手と紙が擦れる音がしている。つまりは意見箱に入っている紙は少なくとも、俺達の分は除いても一枚以上は入っていることになる。


「まずは僕達の入れた紙を取り出さなきゃだね」


 凛はそう言うとガサガサっと適当に漁りながら、俺と凛の名前が書いてある紙を取り出してきた。


「よしっ、見つけた。じゃあ刻くん、準備はいいかい?」


 凛は俺に最終的な決定権を求めてくるような目でこちらを見てくる。


(そんなに見られると少し照れる)


 とか何とか内心で少しふざけつつ俺は口を開いた。


「準備はとっくに出来てる」


 凛は発音良く「OK」と返答すると、一気に机の上に入っていた紙をばら撒いた。


「じゃあ数えていくね」

「いいぞ」


 そう言ってから凛は「一枚、二枚」と丁寧に言いながら数え始めた。

 この賭けにおいて俺の勝利条件は入っていた紙の枚数が俺と凛のを除いて五未満であること。つまりは、五以上であると俺の負けにもなってしまうわけだ。


(当たり前か)


 しばらくそんな事を考えながら、凛の手をじっと見つめる。

 凛の手は白い肌が特徴的で、簡単に折れてしまうのではないのかと思うぐらいに、華奢で細い。


「刻くん?」


 思わず凛の手についての感想をタラタラと頭の中で述べていると、凛が心配そうに俺の顔を見てきた。


「ん?あ、別に何でもない」


 そう言うと、凛は「そう?」とだけ言って数え終えたらしい紙をトントンっと机の上でまとめた。


(あれ、結果は?)


 心の声が通じたのか何なのかは分からないが、凛は口を開き結果を教えましょう!みたいな雰囲気を醸し出し始める。


「コホンっ!では結果発表をします。結果は……」


 ゴクリと固唾を飲み込みながら凛の次の言葉を待った。

 負けたらメロンパン奢り。買ったらメロンパンゲット!


(運命の分かれ道!)


「八票入っていたので僕の勝ちです」

「へ?」

「だから、僕の勝ちです」

「……嘘」

「……本当」


 凛の言った数字があまりにも信じられずにいた。八票と言うのはつまりは俺が賭けにおいてボロ負けしていることを指す。元々どうせ大した人数投案していないだろうと思い、少しでも凛が勝つ可能性があるようにするために五票を基準にしたのだが。八票て……。


(もう少し基準高く設定しとくべきだったな。七票ぐらいにさ。いやまぁ高い基準にしても負けてんだけどね?)


 と、1人言い訳タイムを過ごした後に凛の方に目をちらりとやった。凛はムフンと、誇らしげで満足そうな顔を浮かべながらこちらを見ている。


「はぁ……俺の負けだよ。メロンパン奢るから今から食堂行くぞ」

「ホントに!?やったぁ!」


 そう言うと凛は子供のように無邪気に喜んだ。

 そういうのを見せられると、もう一個サービスで買ってあげたくなってしまう。っていかんいかん!そんな事してたら、財布からお金が消えてしまうわ!



✲✲✲



「260円です」


 食堂のお姉さんにそう言われて財布から300円を出した。俺はお釣りの40円だけを受け取ると、メロンパンを両手に一つずつ持ち、片方を後ろで待っている凛に手渡した。


「はい、メロンパン」

「ありがとう刻くん!」


 凛はそう言うと満面の笑みを浮かべる。


「じゃあ、いただきまーす」

「おう、食え食え」


 凛は口を開けてパクリと大きなメロンパンにかぶりつく。

 その様子を正面から見ていたが、メロンパンが大きすぎるのか、凛の顔が小さすぎるのかは分からないが、凛の顔はメロンパンに隠れてしまっていた。


「おいひぃよ」


 凛はモゴモゴと口を動かしながら俺に感想を伝えてくる。


「飲み込んでから喋れ」


 そうとだけ言うと、ガブリと俺もメロンパンにかぶりついた。


「席に座って食べようか?」


 しばらくその場で食べていると、凛がそういう提案をしてくる。

 まぁ確かに買ったその場で延々と食べるのもなんか疲れるしな。

 こくりと首肯すると近くにあった空いてる席に座った。


(ここって今日空宮と一緒に昼飯食った席だな)


 今日あった出来事と今起きているこの状況を照らし合わせながら、またガブリとかぶりつく。


「そういえば意見箱に入ってた案ってどんなのがあったんだ?」


 唐突に気になってその事を凛に聞いた。

 何せ俺はあの紙を一枚も見ていないからな。どんな案があったのかは全く知らない。

 凛は少し思い出すような仕草をした後答えてくれる。


「そうだねぇ、無難なとこで行くとメイド喫茶とかクレープ屋とかがあったかな?あとはお化け屋敷」

「ほう、だいぶジャンルが違うところで別れたんだな」

「そうだね」


 そう言うとまた一口メロンパンを食べる。


「ちなみに凛はなんて書いたんだ?」

「うん?僕?」

「そう」

「僕はねメイド喫茶って書いたよ。ほら、漫画とかでもメイド喫茶してたし。なんか楽しそうだったから」


 その言葉に思わず納得してしまった。何せ凛は楽しそうだから、ただそれだけの理由で物事を決めてしまうだけの強さがあるから。実際それだけの理由で出店長にも立候補してるわけだし。


「刻くんは?」


 そう聞かれて自分が何と書いたのかを思い出す。


「俺は凛のやりたい事って書いたかな」

「へ?」


第98話終わりましたね。最後は刻が何かよく分からないことを言って終わりましたが、その真意は次回分かりますのでご安心を。多分文字数にして50文字程度で真意は語られます!

さてと次回は、7日です。お楽しみに!

それとブックマークと☆もお願いしますね!

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