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第97話.賭け

 食堂での昼飯を終え俺達は自分のクラスへと戻った。

 昼休みのトータル時間は40分。そのうちの約半分を昼飯で費やした訳だが、それでもまだ20分もある。つまりは暇ということだ。

 次の授業の準備をするにしても、教科書を机の上に置いてしまえばそれで終わり。机に突っ伏して寝ようにも、灯崎(ともさき)がウザい絡み方をしてくるし、特に誰かと話す話題がある訳でもない。


「あかん、暇や……」


 珍しくコッテコテの関西弁を口にしながら窓の外を見た。

 俺達のいる教室は本校舎の四階にあるため景色はまぁそこそこ良い。本当は一年生の教室がある五階の方が景色自体はいいのだけれども。それでもここから見える景色は綺麗だ。

 神戸の街の奥の方を見れば海が広がり、ポートアイランドや、六甲アイランド、それに天気が良ければ大阪のあべのハルカスまで見えてしまう。

 それに廊下サイドの窓からは、中庭と他の校舎の奥に摩耶山も見えている。この学校の由来はこの山と海に挟まれた地形に建っていることから付いた名前らしい。

 そんな感じで一人寂しくこの学校の豆知識を紹介しながら暇つぶしをしていた。

 しばらくすると学校に独特なチャイムの音が鳴り響く。



✲✲✲



 大して面白くもない授業を半分聞き流しながら、午後の5時間目から7時間目の授業を受け終えた後、俺はググッと背中を伸ばす。伸ばした際に相当筋肉と骨が凝り固まっていたのかは分からないが、バキバキっとそれなりの音量でなった。


「凄い音だね」


 隣の席にいる凛は大きな目を丸くして、驚いたような表情を浮かべながらこちらを向いてそう言う。


「確かに凄い音だったな。俺も少し驚いてる」

「え〜?そうは見えないな〜」


 凛は「ふふっ」と笑いながらそう言った。


(そんなに見えない?意外と驚いてるんだけどな?)


 そんな事を思っていると凛は何かを思い出したかのように勢いよく立ち上がった。


「どうした?」

「刻くん忘れてたよ!」

「何を?」


 凛の言葉は主語と動詞しかなく、結局何を忘れたのかという一番大事な部分が一つも分からない。


「ほら、あれだよあれ!」


 凛は唐突に思い出したことによる反動なのか、天然を発動させたのかは分からないが、極端に語彙力が乏しくなり手をワタワタとさせながら、何かを表現しようとしていた。


「え、えーと……」


 凛はついに黙り込んでしまう。


(助け舟だそうかな)


 凛が思い出すってことは絶対に凛関係の話で、それプラスこの慌てようからするとそれなりに大事と。あとは、テストがここ1ヶ月の間にある訳でもないのでテストの線は潰れる。あと残ってるのは……あれか。


「文化祭の出店?」

「そうっ!!」


 俺がそう言うと凛はすごく嬉しそうな顔で俺の事を指さした。


(指差しはいけませんよ?分かりましたか。分かったならよし、許す)


 俺は1人で脳内寸劇を繰り広げながら、凛に結局何が言いたかったのかを話すように促す。


「ほら、出店案を募集するさ意見箱設置したでしょ?あれに、何個か案入ってないかなーって思って」


 それを聞いた俺は少し頭を抱えてしまった。


「あのなぁ?意見箱設置したの今日の朝だぞ?そんなポンポン案が入ってたら誰も苦労しねぇよ」


 俺がそう言うと凛はプクッと頬を膨らませた。


「分かんないよ?もしかしたら、みんな楽しみでいっぱい案考えてたかもだし」

「そうかぁ?」

「そうだよ!絶対にそう!」


 今日の凛はどこか前のめりで勢いが凄い。

 俺の方が押し負けてしまいそうだ。

 何とか押し負けないように一つ策を講じてみる。成功すればこちらに利がって、失敗しても大した損害の無い作。


「よし、じゃあ一つ賭けをしよう」


 俺がそう言うと凛は小首を傾げた。


「何簡単なことさ」


 俺は少し演技じみた言い方で賭けの内容を説明し始めた。


「ルールは簡単。意見箱に5個以上の案があれば凛の勝ち。逆に俺の場合は案が5未満だったら俺の勝ちだ。ちなみに俺と凛が先に入れていた案はカウントしないことにする。どうだ?」


 俺がそう聞くと凛は特に考える素振りも見せずに大きく頷く。


「分かったそれなら良いよ!でも、何を賭けて戦うの?」


 凛は当然気になるであろう賭けの対象について説明を求めてくる。

 俺は特にそこら辺を考えていた訳ではないので、5秒ほど適当に考えて思いついたものを答えることにした。


「負けた方は買った方に食堂のメロンパンを奢る。これでどうだ?」

「あぁ、それいいね!それなら交渉成立だよ!」


 凛はそう言うと楽しそうに笑う。


「さぁ、じゃあ意見箱を取ってくるね」


 凛は教室の前方まで小走りで向かい、お手製の意見箱を両手で大事そうに抱えながら戻ってきた。

 凛は大事そうに抱えてきたそれをことりと机の上に置くとこちらを向く。


「じゃあ、開けるよ?」


 そう言って凛は箱に手を伸ばす。


 ここからが(メロンパン)を賭けたデスゲームの始まりだ。


第97話終わりましたね。今回メロンパンがかけの対象となりましたけど、皆さんは好きな菓子パンとかありますか?僕はメロンパンも好きですけど、やっぱりクリームパンですかね?美味しいですから。

さてと次回は、5日です。お楽しみに!

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