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第94話.意外な事実

 ゆっくりと目に電球の光が差し込んでくる。

 眩しい光を手で遮って目の上に影を作りながら、まぶたを完全に開いた。

 少し重い体を勢いだけで一気に起こすと、俺はソファに座り直す。俺はそのまま無造作に置かれている自分のスマホを手に取ると、電源をつけて時間を確認した。

 ホーム画面の時間が示しているのは19:35という数字。

 それなりの時間寝ていた思っていたのだが、凛にスタンプを送った時の時間から逆算してみると、30分程しか経っていないという事になる。

 その事実に少しだけ驚きながらも、目を覚ますために軽く伸びをした。


「んー……っは」


 背中などの筋肉を一通り伸ばし終えると、俺は一度自室に戻る。

 部屋に戻る途中に妹の(うつみ)が「ただいまー」と言いながら玄関の扉を開ける音がしたので、俺は「おかえり」とだけ声をかけていった。

 二階にある自室に入ると、俺は埃が被らないようにかけられた布をのけて、その下にあるノートパソコンを取り出す。俺はそのノートパソコンを開いて電源をつけるとWordを開いた。


「よし、やりますか」


 ボソッと一人自身に喝を入れると早速作業に取り掛かる。



✲✲✲



「もう!刻くん何で昨日の夜LINEを返してくれなかったのさ!刻くんからスタンプが来た後に、僕も色々とメッセージとかスタンプ送ったのに、既読すらつかないから寂しかったんだよ!?」


 朝早くに学校に行き、教室に入ると開口一番に俺は凛にそう言われた。


(おぉ、寝不足の頭に響くからもう少し声の音量下げようね?)


 そう思いながらも何とか耐えて、カバンからゴソゴソとファイルを取りだした。

 その様子を見ていた凛は頭の上にクエスチョンマークを浮かべながら訝しげにこちらを見ている。


「これ作ってたから返信してる時間がなかったんだよ」

「これって……」


 そう言って取り出したのはクラスの人数分コピーされた紙。

 それを凛に手渡すと、凛はその紙に書いてある文字を読んでいき段々と納得したような顔になっていった。


「なるほど。出店の案を意見箱方式で集めるんだね!」

「そういうこと」


 凛に渡した紙にはこう書かれている。


[文化祭、クラスでやりたい出店案募集!]

※案のある人はこの紙の下にある空欄にその案を記入して、黒板横に設置してある箱に入れてください。


 こう書いておけば気付いた人間や、何となく興味を持った人間が勝手に案を考えて入れてくれる。さらには一つしかない場合は即それに決定することも可能だ。

 もしかしたらこれに気付かない人がいるかもしれないが、気付かないやつは文化祭に興味無しという判定を下しても大丈夫だろう。それに大体のやつは、他の気付いたクラスメイトから教えてもらえるだろうし。


 俺は一人この方法の合理性などやメリットなどを並べ追えると凛の方に目をやった。

 見てみると凛は何故か目をきらきらさせながら、その紙にシャーペンを走らせている。


「何書いてんだ?」


 そう聞くと凛は満面の笑みを浮かべながらこちらを見る。

 こうやって、不意に見せる笑顔にどうしても俺は弱い。ただただ弱い。


「えーっとね、それはまだ内緒」


 凛は指を立て唇に当てるような仕草をするとそう言った。

 その様子はどこか幼いようで大人びているという、曖昧で矛盾な空気を纏わせながらも、どこか幽玄的な風貌だ。


「あっそ」


 俺は凛のその様子に見とれてしまわないうちにさっさと目を逸らしたかったので、素っ気なくそう言って俺も用紙に案を記入し始めた。



✲✲✲



 俺達は午前中の授業を全て終えると、各々昼休みに入っていく。俺はいつも通り食堂か購買で買うので財布を持って教室の外に出た。

 教室から出て数歩歩いた頃に後ろからタッタッタッとテンポのいい軽めの足音が聞こえてくる。


「刻ー、一緒に食堂行こーっ!!」


 そう言ってその足音の主は俺の両肩をバッと掴んでくる。


「別にいいけど、空宮お前いつも弁当じゃなかったっけ?」


 足音の主である空宮は俺がそう言うと「あはは〜」と笑いながら頭をかいた。


(何かあったのかな?)


 俺が少し気になっていると空宮は喋り始める。


「実はさ今日寝坊しちゃって、お弁当作る時間なかったんだ〜」

「へー……え?」


 俺はサラッと空宮の口から発せられた衝撃の事実に思わず言葉を失ってしまった。


「どうしたの刻?」


 心配そうに俺の顔を見てくる空宮。

 空宮の大きな瞳が俺に視界に入ったのと同時に何とか俺は言葉を発することができるようになる。


「空宮お前、料理できたのか!?」


 俺があまりにも至極驚いた様子でそういったためだろうか、空宮はぷくっと昨日の帰りのように頬を大きく膨らませて、少しプンスカしている。


「失礼な!私だってお弁当くらいなら全然余裕で作れるよ!なんなら晩ご飯だってたまに作ってるよ!」

「え、まじ?」

「まじだよ!」


 俺達はそんな話をしながら階段を降りていく。

 周りにいた生徒は俺達の会話がうるさかったのか、空宮の可愛いと十分言える顔が気になったのかは知らないが、やたらと視線がこちらに向いている。


「何か見られてる?」


 そう聞いてきたので俺はこくりと頷き返した。


「まぁ、気にすることでもないだろ」

「かなー」


 俺達がそんなやり取りを交わしていると一階に着いたので、別校舎に存在している食堂へと歩みを進めた。

 ふぅ、お腹がなりそうだぜ。


第94話終わりましたね。いやーそれにしても今回空宮が料理できると判明しましたけど、驚きですよね。意外とそういうのが苦手なおっちょこちょい的な感じだと思っていたんですけどね。家庭的でした。

さてと次回は、30日です。お楽しみに!

ぜひブックマークと☆をしていってくださいね!

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