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第90話.撮影会

 一日の授業を終えて今は放課後。

 俺達は部活動に勤しんでいた。だが今日は珍しく凛がいない。


「ねぇ、何で今日凛いないの?」


 肩をトントンっと叩きながら空宮が聞いてくる。

 そして、俺は空宮の方を向きながら、凛から予め言われておいた理由を話した。


「あれだよ、凛のやつ今日出店長に立候補してたろ?それで一応その集まりとかがあるから、そっちの方に出席してんの」

「あー、そういう事ね」


 空宮は納得したようにこくこくと頷いている。


「凛さんは出店長になられたんですか?」


 空宮と凛について話していると、部活の準備をしていた華山が後ろからそう聞いてきた。


「そうだよ〜。凛ねビシって手を挙げたかと思えば、いきなり立候補するんだもん。それで先生に理由聞かれたら、何か楽しそうだから〜、って言ったんだよ!それが面白くてね私思わず笑っちゃった」

「ふふっ、確かに凛さんらしいですね」

「でしょ〜」


 華山と空宮は楽しそうに凛の事を話しながら、部活の準備を再開し始めた。

 俺は二人のその様子を見た後に、部室のある交流棟を出るためにカメラを持って階段に向かい始める。

 隣の校舎からは吹奏楽部の演奏する音楽が聞こえていてとても心地良い。そしてグラウンドの方からは野球部がボールをバットで打つ音がいい感じに響いてくる。

 だが、それとは反対にこの校舎からは俺の足音と、微かに聞こえる空宮達の話し声以外は特に何も聞こえない。

 それはどこか異世界のような空気で、部室を中心として時間が止まってしまったのではないのかと思うような感覚がある。


「ふあぁ……」


 昨日の夜遅くまで起きていたので思わずあくびが出てしまった。



✲✲✲



 今日は文化祭関連で華山先生から依頼された仕事に向かっていた。その仕事の内容というのが……。


「もうそろそろ文化祭があるでしょ?それで学校外からも人がいっぱい来るからさ、その時に配るパンフレットとか、学校紹介に使う写真の素材が欲しいんだよね。だからそれを撮ってきてはくれないかい」

「了解です」


 そう返すと、華山先生は満足そうに頷いた。


「助かるよ。あ、そうだ、ちなみにだけどこのパンフレットの写真次第で中学生がここを第一志望にする確率が大きく変わってくるかもしれないから、そこは頼んだよ?」

「り、了解です……」


 最後の最後で俺は先生から欲しくなかったプレッシャーを貰ってこの依頼を正式に引き受けた、というわけだ。

 そして、俺は凛を除いた3人で話し合って決めた写真をとる担当場所に向かっている。


「おー!なんで鏡坂がいるんだ?もしかして、バレー部に入っちゃう!?」


 こんな風に馬鹿そうな大声で俺に話しかけてくるのは、一年の時から同じクラスの灯崎(ともさき)だ。無駄にでかいその身長のせいで俺は何故か小さく見えてしまう。


(なんだか知らないがムカついたから許さん)


「別にバレーに興味は無い」

「えぇー!?お前センスあったのにー!?もったいないな」


 灯崎は大袈裟にそう言うとガックリ肩を落とす。


(こいつ一応バレー部の部長だよな?こんなやつで部活は回ってるの?)


 そう思ってしまったが、一つあることを思い出した。

 そう、それは灯崎の制御役を担っているあいつ。冷静という言葉が一番似合う男だ。

 その名も……、


「おい灯崎、鏡坂のやつお前の相手面倒くさがってるから、そろそろ抑えとけ」

「えぇー!?いやまぁ、大地がそう言うんだったらそうするけどさ」


 上木大地。

 灯崎とは反対に、身長が高いわけではない。そう言っても俺と同じかそれ以上ではあるのだけど。

 それと、こいつが灯崎を抑えれる一番の理由としては、灯崎の部長というポジションに対して、副部長というポジションが大きいだろうな。


(って、上木についての話じゃないんだよ)


 自分が体育館に来た本当の理由を思い出すと、そのことについて話し始めた。


「灯崎無視しといて、上木にだけは詳しい話をしとくわ」


 そう言うと灯崎はまた「えぇっ!?」と言いながら騒ぐが、上木がそれを抑えて、練習に押し返してしまう。


「で、話って何?」


 腕を組みながら聞いてきた上木からは、なんとも頼りがいのある雰囲気が漂っている。


「じゃあ、詳しくかつ簡潔に話すぞ」

「頼む」

「文化祭の時に配る学校紹介のパンフレットに使う写真を華山先生に撮ってくれと頼まれてな。それで部活動の様子を撮らせてくれってことだよ」


 上木はこくりと頷きこちらを見た。


「分かった。練習の邪魔にならない程度にならいくらでも撮ってくれて構わない」

「お、ありがとう」


 早速撮影に取り掛かろうとすると、上木が「あっ」と言って俺を引き止めた。


「どうした?」

「一つお願い。多分写真を撮る上で一番()えるのは認めたくはないが、たぶん灯崎だ。あいつのスパイクって何気に全国で通用するレベルだし。だけど、撮られてるって意識して打つと多分力んで肩とか痛めかねないから、そこだけはバレないようにお願いな」

「分かった」


 そうとだけ言うと今度こそ撮影を開始する。


第90話終わりましたね。これを書いている時に僕は無性に一蘭に行きたくなりました。でも、そんな時間は無いのです。辛い現実・・・。

さてと次回は、22日です。お楽しみに!

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