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第87話.課題さん

「えー、長い夏休みが終わってまたこうして皆さんと……」


 体育館にて全校生徒集合して始業式の名物、やたらと長い校長先生の話を聞いていた。内容云々はテストに出るわけでもなんでもないので、全て聞き流す。

 それにしても暑い。

 夏休みが終わっても暑いのは相変わらずで、半袖のポロシャツでないと死んでしまいそうだ。この学校には合服という概念がないので、どの季節でも好きな服装で登校できるのがありがたいところだが、それでもこの暑さは堪える。もう一段階涼しい服を用意して貰えないか真剣に抗議したい。

 夏の暑さに頭をやられそうにながら、なんとか始業式を耐え忍んだ。


「これにて始業式を終わります。生徒の皆さんはこの後は各自教室にてHRを受けてください」


 進行係の教師がマイクを使ってそう指示を出した。

 周りの生徒はゾロゾロと気だるそうに立ち上がると、各々のペースで教室に帰っていく。


「やぁ刻くん!」


 後ろから明るい声が聞こえたかと思うとトンっと肩を叩かれる。


「おう凛」


 声の主は凛。これだけ滅入ってしまいそうな暑さにも関わらず、凛の爽やかさからは暑いという感情が見えることはなかった。


「今日も暑いね〜」

「だな」


 俺と凛は横に2人並びながら歩く。

 どうやら見えなかっただけで暑いとは思っていたらしい。

 俺はテクテクと先を行く凛に置いて行かれないように、着いて行った。


「今日は何するんだろーね」

「さぁ?」


 そんな会話をしながら本校舎の四階まで階段を上る。

 三階に着くとこの階に教室がある3年生がいなくなって、多少は登りやすくなるが、それでも1年生がまだいるため思うように進めない。


「なぁ、あの、ハーフっぽい先輩めっちゃ綺麗だよな」

「だよな。俺も思った」


 後ろから1年生の男子2人組がおそらく、というかほぼ確実に凛の事を指して話している。

 その会話を聞いた後に凛の方を見てみると、少しムスッとしたような表情をしていた。


「どうしたんだ?」

「ん?んー、ちょっとね……」


 凛は少しだけ間を空けると話し始める。


「今後ろで僕の事話してる後輩くん達がいたじゃない?」

「うん、確かにいたな」


 俺にも聞こえていたのだから、隣にいた凛に聞こえていても何も不思議ではないだろう。だが、それの何がムスッとしている顔と関係があるのだろうか。

 そこに少し疑問を感じながらも、凛が続きを話してくれるのを待つ。


「あの後輩くん達僕の事を綺麗とか言ってたでしょ?」

「言ってたけど」

「僕あーいう事を、自分のいないとこで言われたりするのあんまり好きじゃないんだよね」

「うん……うん?」


 俺は少しだけ何を言っているのか分からなくなる。


(別に悪口を言われる訳ではないから、いいんじゃないのか?)


 そんな風に思っていると、凛は俺の考えている事を察したかのように話を続けてくれた。


「確かに悪口じゃないからいいんじゃんって刻くんは思うかもしれないけどさ、綺麗〜とか可愛いとかいう褒め言葉はやっぱり本人に直接言ってあげた方がいいと思わない?」

「あー、そういう事なら分からないでもないけど」


 俺は凛の意見に納得せざるをえない。


「そう!だから、僕も直接言って欲しいんだよ。そっちの方が嬉しいし」

「なるほどね」


 そう言うと凛は「うん」とだけ言って、階段を上っていく。



✲✲✲



「はい、じゃあ後ろから夏休みの課題集めてきて」


 羽挟先生の声で俺達は動き出した。


「忘れた課題があったら明日までに持ってこいよ~。それ以降は先生助けてやれないからな」


 先生のそんな優しさに触れながら、俺達はどんどん課題を集めて行った。


「あぁっ!?数学と英語の課題忘れたっ!」


 教室の中央の方でショックそうな男子生徒の声が響く。

 見てみるとその声の主は灯崎(ともさき)赤人(せきと)。無駄に高い高身長で、立ち上がると嫌ってほど目立っている。


「何?」

「ひいっ!」


 灯崎が課題を忘れたことを大声で言うと、前で課題回収を手伝っていた先生が芯の通った声でそう言った。

 忘れてない人間からしたら大して怖くもないトーンだが、英語担当の先生であるため、その教科の課題を忘れた灯崎は恐怖しか感じていないだろう。


「だ、大地ぃ助けて」


 灯崎はそう言うと同じバレー部の上木大地に助けを求めに行く。


「いや、知らんし」


 だが無情にも上木からの救いの手は差し伸べられなかった。

 俺は2人のそのやり取りを見ながらくすくすと笑っていると、ドタドタとした足音がこちらに近付いてくる。


「鏡坂ー!助けてぇ!!」

「頑張れ〜」


 近付いてきた灯崎を上木を見習って一蹴してやる。


(忘れるのが悪いんだよ)


「まじかよ……」


 俺が一蹴した後にあまりにも落ち込むものだから、俺は少しだけ助け舟を出してやることにした。


「さっき先生が明日までなら待つって言ってたから、明日持ってくればいいだろ」

「そ、そうだよなっ!」


 灯崎パァーっと顔を明るくすると席に戻る。

 こいつはこういう所があるから、憎めない。


第87話終わりましたね。そして夏休み編もやっと終わるという。やっと文化祭とか書けるぜーい!

さてと次回は16日です。お楽しみに!

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