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第85話.微笑み

「じゃあ、もうそろそろ私も帰ろうかな」


 空宮はコーヒーを飲み終えてそう言うと、スっと立ち上がる。


「別にもうちょっとゆっくりしていってもいいんだぞ?」

「んーん、大丈夫。私結構寝てたしさ、体力満タン!」


 そう聞くと空宮はそう言った。


(体力満タン!って言ってるけど、首とか背中痛めたりしてない?寝てる時不安定な姿勢だったし、本当に大丈夫か?)


 少し心配に思いながらも、空宮を止める資格は自分には特にないので、口出しすることはしない。


「さーてと、課題も全部バッグに入れ終わったことだし、本格的に帰ろうかな」


 空宮はそう言うと、肩に持参していたトートバッグを掛ける。


「あれ?蒼姉帰っちゃうの?」


 先程まで自室の片付けに勤しんでいた(うつみ)が、リビングのドアをガチャりと開けながら入ってきた。


「うん、帰るよ〜」

「もう少しいればいいのに」


 (うつみ)はそう言うと不満そうに頬をプクッと膨らませた。


「いつでも来れるし、今日はここまででいいの」

「でも、せっかく遊びに来てくれたから、もうちょっと一緒にいたいじゃん」

「もしかして(うつみ)ちゃんは、私と離れるのが寂しいのかな〜?」


 空宮は珍しく(うつみ)に対して意地悪口調でそう言った。


「べ、別にそんなんじゃないし!」

「ツンデレかよ」


 そうツッコミを入れると(うつみ)は、次に俺に食ってかかってきた。


「ツンデレじゃない!それと、蒼姉が帰って寂しがるのは刻兄なの!」

「はぁ?」


 (うつみ)はだんだん違う方向に会話を発展させていった。

 ヘイトをこちらに向けるのはいかがなものなのだろうか?

 おふざけでそんな事を考えていると、クイクイっと服の裾を引っ張られる。


「ねぇ刻。今、(うつみ)ちゃんが言った事って……本当?」


 空宮は少しだけ頬に熱を帯びさせながらそう聞いてきた。


(うつみ)が言った事って?」


 そう聞き返すと、空宮は先程よりも数段増しで顔を赤くさせた。


「え、えっと……」


 空宮はそのまま口ごもってしまう。

 何かよからぬ事を口走ってしまったのだろうかと不安に思っていると、空宮の変わりに(うつみ)が口を開いた。


「刻兄の鈍感野郎。そんなんだからモテないんだよ」

「え、なんで急に俺は罵倒されてるの?」

「さーね?自分で考えたら〜」


 (うつみ)はそうとだけ言うとどこかに行ってしまう。


(ちょっと?結局俺の聞きたい事がまだ聞けてないんですけど?)


 俺はそう思いながらも、行ってしまったものは仕方ないと割り切ってしまうことにした。


「それで、空宮さっきの話だけど何の事だ?」


 そうもう一度聞くと、空宮は吹っ切れたような顔つきになり話し始めた。


「だから、私が帰ったら刻が寂しがるのかってこと!」


 空宮は吹っ切れたはいいものの顔が赤いのは相変わらずで、その熱がこちらまで伝わってくるようだった。


「えっと、別に寂しくはないけど?」

「そ、そっか。そうだよね……」


 俺がそう言うと空宮は少し悲しそうに目を伏せながら、小さく頷く。

 何か勘違いしてるっぽいから、これだけは言っておいてあげないとな。


「空宮」

「何?」


 俺が名前を呼ぶと、空宮は頬と一緒に目も少し赤くしている。


「別に寂しくないってのはな、お前の事がどうでもいいってことだからじゃないぞ?」

「じゃあどういう事?」

「いつでも会えるくらいずっと近くにいるから、ずっとお前の隣に立てている感じがするから、だから寂しくないんだよ。だから、絶対にお前の事がどうでもいいってことはない」


 これが俺の嘘偽りのない真意。

 いざ口にしてみると小っ恥ずかしくて、俺の頬にも熱を帯び始めた。

 俺らしくもない。


「ふふっ」


 言い終えた後しばらくの間を置いた後に空宮は少し抑えながらも笑い始めた。


「な、なんだよ」


 そう聞くと空宮は可愛らしい笑顔を俺に向けたまま話し始めた。


「いーや、何でもない。私だけの秘密!」

「何だよそれ」


 その緩い空気がしばらく俺達の間に流れた。


第85話終わりましたね。今回の空宮、書いといてなんですけど、中々に良くないですかね?結構好きな感じで書けたんですけど。そんなこともないですかね?まあ、いいか。

さてと、次回は12日です。お楽しみに!

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