第83話.休息
華山と凛を見送った後、俺と現は空宮がスヤスヤと寝ているリビングへと戻る。テーブルに突っ伏して寝ている空宮の寝顔は非常に柔らかなもので、見ていてこちらも心休まるものだ。
「蒼姉完全に寝ちゃってるね」
現はそう言うとどこから取ってきたのか、夏でも暑くならない程度の薄手のタオルケットを空宮の背中にファサっと掛けてあげている。
「起こさないのか?」
そう聞くと現は指を立てて口元にその指を持っていくと、「静かに」と言った。
「こっち来て」
現は俺にギリギリ聞こえる程度の小声で手招きをしながら俺を呼ぶ。
「何だよ」
現の元に行くとそう聞いた。
「あのね、刻兄が蒼姉の担当だったから分かると思うけど、蒼姉相当今日頑張ってたんだよ?」
「まあ、そうだな。必死の形相で取り組んでた」
「そう。だから多分かなり体力も削ってるの」
「うん」
「だから、ちょっとだけでもいいから休ませてあげて?蒼姉も人間だから疲れる時は疲れるんだよ」
現の普段の様子からはあまり想像つかないような、少し母性すらも感じさせるような表情でそう俺に言う。
(妹から母性を感じるというこの現実は一体どうしようかしら)
そんな事を思いながら、ゆっくり寝ている空宮の方へと目をやった。
「まあ、確かにそうだな。少しは休ませてやるか」
「うん、そうしてあげて」
そうとだけやり取りを交わすと、空宮のいる所を避けながらテーブルの上を片付けていく。片付けていく中で空宮の可愛らしい形をした付箋や、メモ帳があったのでそれは一時的に別の所に避難させた。
「うふふ」
「え、何気持ち悪い」
終わらせた課題を急に持ち上げて、それを見ながら笑う現を見て、思わずそう言ってしまう。
「き、気持ち悪いだなんて、それを実の妹に言うだなんて酷いじゃない!」
「いや、だって事実だし」
現はプンスカと頬を膨らませながらそう怒る。
「まぁ、いいや。刻兄にはやっとのことで夏休みの課題を終わらせた私の喜びが分からないみたいだしね」
現は半分開き直ったような態度でそう言った。
やっとのことでなどと言っているが、多分華山と凛の尽力がかなり大きい気がする。あの2人は本当に優秀だから。特に凛に関しては英語は華山以上だしな。帰国子女だし英語が得意なのは当たり前なのかもしれないけが、定期テストでは毎回驚異の満点を取ってくるし。
そんな風に思いながらもそれを口にはしない。それを言えばなんだか現に怒られそうだし。
✲✲✲
夏休みの課題を終わらせようの会が終わってから数十分経った頃、テーブルの方からかたりと音が聞こえてくる。
「ん?」
俺は音の鳴ったテーブルの方を覗き込むように見た。
あぁ、空宮が顔の向き変えただけなのね。
音の原因だけ分かると、俺はまたスマホを見始めた。
第83話終わりましたね。まさかの今回空宮は1秒も起きませんでした。刻達と同じ空間にいるのに、セリフが皆無という寂しい回です。次回は起きるかな?
さてと、次回は8日です。お楽しみに!
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