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第81話.組み合わせ

「よいしょっと」


 ドサドサッと(うつみ)はリビングの机の上に、夏休みの宿題を置く。よくよく見てみれば英語から国語に数学、さらには物理に生物と教科数もかなり多い。


「なぁ、これ全部?」


 横で現が宿題を置く様子を見ていた俺はそう聞いた。


「うん、これ全部。刻兄とやった宿題もこれの一部だっただけだからね、実際はほとんど手をつけていない状態なのです!」


 現は「えっへん!」となぜか自慢げに胸を逸らしながらそう言った。


(おいおい……俺とやったのがこの宿題の一部か。しかも、ほとんど手をつけてないって……やばいな)


 そう切実にそう思う。


「もうそろそろかな〜?」


 リビングの壁に掛けてある時計を見ながらそう言う。俺も現にならって、同じように時計を見た。


(えーと、今は9時45分か。ということは、予定ではあと15分)


 頭の中で時間の計算をしながら、今日の予定も同時に振り返っておく。

 先日のプールの帰りに凛が言い出した、宿題手伝おうか発言。そしてそれが実行される日時が、今日の10時俺達の家でということだ。


(空宮は家が元々近いからいいとして、問題は手伝いに来てくれる華山と凛がここにたどり着くかどうかだよな)


(一応URLで俺の家の住所をLINEを使って送りはしたものの、なにせこの地域は似たような形の家が多いからな、迷いかねん)


 1人そんな事で不安になっていると、不意にジーパンのポケットに入れて置いたスマホのバイブが揺れる。


「ん?」


 サッと取り出すと流れるようにホーム画面のロックを解き、LINEを開いた。


「あ、現ー」


 キッチンの方に気付かないうちに移動していた現に声をかける。


「何〜?」


 そう言って現は片手に紅茶を持ちながら、トテトテとゆっくり歩いてくる。


「今、空宮から連絡きた。駅にいる凛達を迎えに行ってから来るってさ」

「おっけー」


 現は紅茶を持っていないもう片方の手の指で、丸を作るとそう言った。



✲✲✲



 空宮からのLINEが来てから20分程で、俺達の家のインターホンが鳴り響いた。

 その音を聞いた現は電光石火の如く、とまではいかないものの、それなりのスピードで玄関に駆け出している。

 ガチャりと玄関の扉特有の音がした後に賑やかな女子4人の声が聞こえてくる。


「あ、おはよー刻くん!」


 女子の声の一つが俺に向けられると、一気にその声の持ち主が飛んでくる。

 そう文字通り飛んできました。正確には飛びつくように抱きつくってのが一番近いかもだけど。


「り、凛苦しい」


(どこが苦しいのかって?俺と凛の身長差的に、だいたい鳩尾より下あたりかな?そこにものすっごい柔らかい二つの丸みを帯びた物体が当たってます。それが思ってたよりも苦しいの)


「あぁ、ごめんね?」


 凛はパッと俺の背中の後ろで結ばれていた手を解くと、今度は凛の腰の辺りで結ぶ。

 見た目的には体育の時とかにする休めの姿勢が一番近い。


「にしても本当に来てくれたのな」


 来てくれた華山と凛の2人を交互に見ながらそう言った。

 そして、それを聞いた凛は胸に拳を作った手をトンと当てながら喋り始める。


「当たり前じゃないか!僕が言い出したことなんだから、来るに決まってるよ!」

「それは、確かに」

「でしょ?」


 俺と凛はそんな風に話しながらお互いに笑い合う。


 しばらくすると、その様子を見ていた空宮がパンっと両手を叩き俺達の注目を集める。


「さあ、お喋りはそこまでだよー!ここからはわくわくっ!ドキドキっ!宿題攻略ターイム!だからね」


 空宮は謎のテンションで謎の題名を言った。

 なんか早くも壊れ始めてるな。


「まぁ、話をしてても時間が無駄に過ぎるだけだし、さっさと終わらせるか」


 そう言うと皆こくりと頷き各々準備に取り掛かる。

 (うつみ)と空宮は終わっていない宿題を出し、俺達宿題終わってる組は、自分の既に完成している宿題ノートを開いた。


「さてと、あとは誰がどちらのフォローに着くのかって話だけど、空宮の宿題は俺達3人と全く同じ内容だから、空宮のフォローに着くのは1人とします。あとの2人は、宿題の量が多くさらに難易度の高い(うつみ)のフォローに着いてね」


 そう言った後にわざとらしくけぷこんと咳きこむと、


「まぁ、実際ここで決めるのは誰が空宮のフォローに着くかだし、1人決まったら自然と残りは(うつみ)に着くわけだ」


 俺がそう言うとかやと凛の両方が首を縦に振る。


「私はどちらでもいいですけど、凛さんと鏡坂くんはどちらの方がいいとかありますか?」

「そうだな、俺も正直どちらでも。実際(うつみ)の宿題を少しだけ手伝ったけど、難易度が高いには高いが解けないって程でもなかったしな」

「そうですか」


 俺がそう言うと華山は少し悩んだ面持ちになる。

 実際ここにいる俺を含めた3人は成績は別に悪くないし、どちらのフォローにもつけるだろう。だけど、だからこそ、その中でもまだ簡単な空宮の方を譲ろうとする精神が働いてしまうのだ。

 その典型が華山「どちらでもいいですよ」というもの。まあ、悪くはないのだが。

 俺が1人そう思っていると、凛がピンッ指を天井の方に向けて指し何か思いついたような素振りを見せる。


「じゃあさ、刻くんを蒼ちゃんのサポート係にしようよ!」

「その心は?」


 俺は凛にそう聞き返す。


「ほら、この3人の中じゃ上から華山さん、僕、刻くんの成績順でしょ?それなら、一番簡単な方を刻くんに任せるのが懸命かなーって」

「なるほどな」


 俺は理解すると同時に、少しショックを受けてしまう。


(確かにさ、この3人人じゃ俺が一番下の成績だけど、それは、君たちが想像以上に頭いいからなんだよ!?)


 心の中で1人そう言い訳しながら平常心とプライドを保つ。


「じゃあまあ、組み合わせはそういうことで」

「オッケー」

「分かりました」


 俺達はそうとだけ言うと、自分がサポートに着くべき相手の元に行く。


「さぁ空宮、今から地獄の宿題タイムだぞ」

「お、お手柔らかに……」


第81話終わりましたね。皆さん、世間は夏休みというよりもう春休みですけど、宿題やテスト勉強はしっかりとやっていますか?作者はこれが投稿された日のテストをほとんど諦めながらこの執筆に勤しんでおりました。なんで家庭科ってテストあるんでしょう・・・

さてと、次回は4日です。お楽しみに!

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